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たまには性欲でもいかがです?
44 プッシー・キャット・ドール②
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大きな応接間。
私はソファーに座り込んで、目を伏せています。
自分のしたことが信じられなかったのです。
私…あの子に何をした…?
よく考えれば、あの子の部屋に入ったところからおかしかった。
確かに可愛い子だったけれど、私が…あんなことを…
「かなちゃん、平気?」
「はい…ごめんなさい…麻衣さん、ピースさん…」
「あんたが謝ることじゃない。そういう能力なんだよ、あの子は」
島崎さんの凛とした声に、私は背筋が伸びます。
そういう能力…
「人間には欲求というものがあるね。睡眠欲、食欲、排泄欲、性欲…あの子の目をみると、それらの内ひとつが爆発して理性を吹き飛ばす」
「…」
性欲…
たしかに、私があの時インナちゃんに抱いた感情はそれだ。
興奮していた…自分が抑えられなくなるほど。
私を助けようとしてくれたスーツの女性は、まだソファーで横になって、大きないびきをかいている。
あの人は睡眠欲が爆発した…ということなのでしょう。
麻衣さんが状況を把握するため、島崎さんに聞きます。
「インナちゃん、どこの出身ですか?日本語は?」
「話せないよ。出身はロシアらしい…ロシア語と広東語を少し話せるが、文字はかけない。」
「広東語…?」
「あの子は、中国の娼館に売られたんだ。あの能力のせいで客がとれなくなり、アジア中のロストマン施設をたらい回しにされててね。」
「それで、島崎さんが預かることに…?」
「そうさ。被害が出ないように、ウチにもともといた子供たちは別の施設に預けてる。」
「それで子供達がいないんですね…」
人身売買…
売られた…少女…
あんな小さい子が…
「男性がいないのもそのためですか?」
「あぁ…かなでさえ、あの子の前では自分の性欲に勝てなくなったんだ。男なんかあの子に会わせられないよ」
「そうえばラブもいないわね?」
「今は駅前のホテルにいるわ」
島崎さん、麻衣さん、ピースさんの話を聞きながら、なんとなく情報が整理されてきました。
女性すら惑わす美少女、インナ・アンドレーエヴナ・エフシェンコ。
こんなに優秀なロストマン専門家が3人集まっても解決できていない…
「インナの『プッシー・キャット・ドール』は、まだまだ謎の多い能力だ。
自発的なものなのか…それとも自動で無作為に発動されるのか…人間以外の動物にも効くのか…
睡眠欲や性欲のような生理的欲求だけでなく、心理的欲求や社会的欲求にも対応しているのかどうか…」
「人間の欲求が広すぎるのよ…」
「いずれにしても、調べる術はない…方法が人体実験くらいしかないからね…」
「…あの」
話が専門的な方向に向かっていましたが…
私はもっと単純なことが気になっていました。
「インナちゃんは…何か言っていないんですか?」
「…」
「現状を見てわかるとおり…話すことはおろか、近づく事も出来ないのよ」
「ここに連れてくる時も、目隠しをした状態で連れてくるしかなかった…可哀そうだけれど、それしか方法はなくて…」
まるで…囚人のように。
あの子はあの部屋に閉じ込められているんだ…
あの子の想いを…まだ誰も知らない。
「あの…島崎さん、私、インナちゃんとお話してみたいんですけど…」
「かな…気持ちはわかるが、あんたロシア語か広東語は話せるのかい?」
「いえ…でも、話してみたいんです…彼女の目を見なければいいんですよね?」
「それに関してはまだわからないんだよ…ウチの人間はみんな注意しているのにあのザマだ。
こちらが見ていなくてもインナの視界に入った時点で能力の対象になる可能性も捨てきれない。」
視界に入っただけで…
「もう残された手は、イノの能力だけかもね…」
「…だめです!」
ピースさんの言葉に、私はとっさに大きな声を出しました。
「イノさんの能力を使えば…インナちゃんは何かを失うんですよ!?あんな小さい子から、これ以上何も奪っちゃダメです!」
「かなちゃん…」
「島崎さんお願いします…鎖でもなんでも、私を縛ってください。あの子と話がしたいんです…」
「…」
「お願いします…」
「…。…時間はどれくらい必要だい?」
「3日…いや、2日ください!」
「じゃあ一週間やる。それでダメなら…どうやってイノの能力を使うかの話し合いを始めるよ。」
「…はいッ!」
私はすぐに立ち上がります。
まずは、私の身体を縛るものが必要だ…
インナちゃんとしっかり話す事が必要だ…
言葉が通じなくても…きっと何か伝わるはずなんだ…
バタン…
「行っちゃった…」
「麻衣、ずいぶんと強情な子を助手にしたもんだね…」
「はは…」
「でも気にいったよ。根性がある…」
「そうですね…」
「ああいう子が…ロストマンには一番必要な存在なのさ…もしかしたらイノやアンタ達以上に、この仕事に向いてるのかもね。」
…
本当は使いたくないけれど…
お香『ピケ』もこれだけあれば十分だ。
私は研究室に戻り、いっぱいご飯を食べます。
炭水化物だって甘いものだって…カロリーなんて気にしません。
好きなものだけをたくさん食べて…もうお腹一杯です。
食欲には負けません。
「うぷ…終わったら、地獄のダイエット生活だ…」
目覚まし時計は6つ用意しました。
麻衣さん用のとても大きな音がなるやつです。
絶対に寝たりしません。
「これでいつも起きない麻衣さんを見てるからか…これだけあっても不安になってくるな…」
ホームセンターで鎖と犬用の首輪を買いました。
私の腕と足に鎖を…首に首輪を…
性欲に負けるなんて変態みたいで想像するのもイヤですが…
これだけあれば平気でしょう。
「…よし!」
島崎さんも、麻衣さんも、ピースさんも…とっても優秀なロストマンの専門家です。
でも、あの人達は大切なことを忘れています。
『ロストマンの能力は、自分の望みを叶えるためのものがほとんどだ。』
あんな小さい子が…
自分を襲わせるような能力を開花させた理由。
自分を襲わせるようなことを望む理由。
正直まったくわからない。
もしかしたら今回の件、そこはずっと謎のままなのかもしれない。
だけど、私は知る努力をしたい。
話す努力をしたい。
インナちゃんと、仲良くなりたい。
私もロストマンなんだよ…
あなたと一緒なんだよ…
私たちなら、きっと友達になれるよ。
私はソファーに座り込んで、目を伏せています。
自分のしたことが信じられなかったのです。
私…あの子に何をした…?
よく考えれば、あの子の部屋に入ったところからおかしかった。
確かに可愛い子だったけれど、私が…あんなことを…
「かなちゃん、平気?」
「はい…ごめんなさい…麻衣さん、ピースさん…」
「あんたが謝ることじゃない。そういう能力なんだよ、あの子は」
島崎さんの凛とした声に、私は背筋が伸びます。
そういう能力…
「人間には欲求というものがあるね。睡眠欲、食欲、排泄欲、性欲…あの子の目をみると、それらの内ひとつが爆発して理性を吹き飛ばす」
「…」
性欲…
たしかに、私があの時インナちゃんに抱いた感情はそれだ。
興奮していた…自分が抑えられなくなるほど。
私を助けようとしてくれたスーツの女性は、まだソファーで横になって、大きないびきをかいている。
あの人は睡眠欲が爆発した…ということなのでしょう。
麻衣さんが状況を把握するため、島崎さんに聞きます。
「インナちゃん、どこの出身ですか?日本語は?」
「話せないよ。出身はロシアらしい…ロシア語と広東語を少し話せるが、文字はかけない。」
「広東語…?」
「あの子は、中国の娼館に売られたんだ。あの能力のせいで客がとれなくなり、アジア中のロストマン施設をたらい回しにされててね。」
「それで、島崎さんが預かることに…?」
「そうさ。被害が出ないように、ウチにもともといた子供たちは別の施設に預けてる。」
「それで子供達がいないんですね…」
人身売買…
売られた…少女…
あんな小さい子が…
「男性がいないのもそのためですか?」
「あぁ…かなでさえ、あの子の前では自分の性欲に勝てなくなったんだ。男なんかあの子に会わせられないよ」
「そうえばラブもいないわね?」
「今は駅前のホテルにいるわ」
島崎さん、麻衣さん、ピースさんの話を聞きながら、なんとなく情報が整理されてきました。
女性すら惑わす美少女、インナ・アンドレーエヴナ・エフシェンコ。
こんなに優秀なロストマン専門家が3人集まっても解決できていない…
「インナの『プッシー・キャット・ドール』は、まだまだ謎の多い能力だ。
自発的なものなのか…それとも自動で無作為に発動されるのか…人間以外の動物にも効くのか…
睡眠欲や性欲のような生理的欲求だけでなく、心理的欲求や社会的欲求にも対応しているのかどうか…」
「人間の欲求が広すぎるのよ…」
「いずれにしても、調べる術はない…方法が人体実験くらいしかないからね…」
「…あの」
話が専門的な方向に向かっていましたが…
私はもっと単純なことが気になっていました。
「インナちゃんは…何か言っていないんですか?」
「…」
「現状を見てわかるとおり…話すことはおろか、近づく事も出来ないのよ」
「ここに連れてくる時も、目隠しをした状態で連れてくるしかなかった…可哀そうだけれど、それしか方法はなくて…」
まるで…囚人のように。
あの子はあの部屋に閉じ込められているんだ…
あの子の想いを…まだ誰も知らない。
「あの…島崎さん、私、インナちゃんとお話してみたいんですけど…」
「かな…気持ちはわかるが、あんたロシア語か広東語は話せるのかい?」
「いえ…でも、話してみたいんです…彼女の目を見なければいいんですよね?」
「それに関してはまだわからないんだよ…ウチの人間はみんな注意しているのにあのザマだ。
こちらが見ていなくてもインナの視界に入った時点で能力の対象になる可能性も捨てきれない。」
視界に入っただけで…
「もう残された手は、イノの能力だけかもね…」
「…だめです!」
ピースさんの言葉に、私はとっさに大きな声を出しました。
「イノさんの能力を使えば…インナちゃんは何かを失うんですよ!?あんな小さい子から、これ以上何も奪っちゃダメです!」
「かなちゃん…」
「島崎さんお願いします…鎖でもなんでも、私を縛ってください。あの子と話がしたいんです…」
「…」
「お願いします…」
「…。…時間はどれくらい必要だい?」
「3日…いや、2日ください!」
「じゃあ一週間やる。それでダメなら…どうやってイノの能力を使うかの話し合いを始めるよ。」
「…はいッ!」
私はすぐに立ち上がります。
まずは、私の身体を縛るものが必要だ…
インナちゃんとしっかり話す事が必要だ…
言葉が通じなくても…きっと何か伝わるはずなんだ…
バタン…
「行っちゃった…」
「麻衣、ずいぶんと強情な子を助手にしたもんだね…」
「はは…」
「でも気にいったよ。根性がある…」
「そうですね…」
「ああいう子が…ロストマンには一番必要な存在なのさ…もしかしたらイノやアンタ達以上に、この仕事に向いてるのかもね。」
…
本当は使いたくないけれど…
お香『ピケ』もこれだけあれば十分だ。
私は研究室に戻り、いっぱいご飯を食べます。
炭水化物だって甘いものだって…カロリーなんて気にしません。
好きなものだけをたくさん食べて…もうお腹一杯です。
食欲には負けません。
「うぷ…終わったら、地獄のダイエット生活だ…」
目覚まし時計は6つ用意しました。
麻衣さん用のとても大きな音がなるやつです。
絶対に寝たりしません。
「これでいつも起きない麻衣さんを見てるからか…これだけあっても不安になってくるな…」
ホームセンターで鎖と犬用の首輪を買いました。
私の腕と足に鎖を…首に首輪を…
性欲に負けるなんて変態みたいで想像するのもイヤですが…
これだけあれば平気でしょう。
「…よし!」
島崎さんも、麻衣さんも、ピースさんも…とっても優秀なロストマンの専門家です。
でも、あの人達は大切なことを忘れています。
『ロストマンの能力は、自分の望みを叶えるためのものがほとんどだ。』
あんな小さい子が…
自分を襲わせるような能力を開花させた理由。
自分を襲わせるようなことを望む理由。
正直まったくわからない。
もしかしたら今回の件、そこはずっと謎のままなのかもしれない。
だけど、私は知る努力をしたい。
話す努力をしたい。
インナちゃんと、仲良くなりたい。
私もロストマンなんだよ…
あなたと一緒なんだよ…
私たちなら、きっと友達になれるよ。
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