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三章 再開の灯火
百二話 俺の戦い方
しおりを挟む俺の挑発でキレたリシュアは顔に青筋を立てて刀を持って襲いかかってくる。
身体能力は圧倒的にリシュアの方が上だが、そう来るとわかっている動きを何とか捉える程度のことは出来る。
俺はその様子に取り乱しそうになる感情をどうにか落ち着かせる。
こんな時こそ、恐怖や殺気に呑まれてはダメだ。今はとにかく冷静になり、限りなく限界まで集中力を高めろ!
今の俺にはリシュアの動きを見てそれに合わせて動くなんて事は出来ない。なら、俺がリシュアの攻撃を防ぐ方法はリシュアの動きを全て先読むしかない!
「死ねや!」
「死ねるか!」
「遅せぇ!」
遂に刀を両腕に持ったリシュアの一撃は鋭く重いが、怒りに任せて振るうだけの刀を避けるのは簡単。
しかし、そこから繰り出させる追撃。これを完璧に防ぐか避けなければ次にくるであろう連撃には耐えられない。
振り下ろした直後なのにも関わらず跳ね返るように下から迫り来る刀。だが、俺が見ているのは迫り来る刀ではなく、リシュアの視線とその手の位置であった。
「はぁ!!」
「なっ!?」
「お前の相手は……この世の誰よりもやって来た!」
まだ屋敷に居た時、俺は暇さえあればリシュアのサンドバッグとして訓練に付き合わされた。
変に避けたり逃げたりすれば更に辛い思いをする事は身に染みてわかっていたから、俺に出来ることは必死に防御に徹することと、どうしても体に当たる攻撃はできるだけ急所を外すことであった。
打ち所が悪ければ死にかねないような技を使ってくるリシュアの攻撃から身を守るために、例え才能が無いと言われても俺は死に物狂いで剣術を俺は身に付けたんだ。
そのせいで俺は戦いや剣術という物を心底嫌いにはなれなかった。それに関しては、ある意味感謝してるかもしれない。
そして、長年訓練というサンドバッグにするだけのただ虐めに耐え続けた結果、俺はリシュアの攻撃タイミングや狙う位置等の癖をわかるようになっていた。
「絶対に負けるか!!!」
「くっ……無能の癖に生意気なんだよぉぉ!!」
視線が俺の首を狙っていても、それは首を狙っていると思わせる罠であり、本当に狙っている場所は胴の辺りだとわかったが、あまりに早く受けの位置に刀を置いてもフェイントを入れずにそのまま首を狙われる可能性がある。
俺は即座に会えてその罠に引っかかったように首を守るように見せかけ、リシュアの刀が攻撃の切り替えが不可能だと思われるタイミングを勘で予測し、そのまま刀を振り下ろすことで攻撃を受け流す。
そこからの反撃でリシュアの首を狙うが、首を逸らすことで避けられる。そう簡単に殺れる程リシュアは甘くない。
それと同時にリシュアの全身から少し魔力が溢れる。能力発動の前兆だ。
リシュアの能力は先程俺を襲った大量の刀で分かるように、刀を自由自在に生み出しては操作することが出来る能力だ。
流石に俺をサンドバッグにする時は能力を使わなかった為、詳しいことは分からないが能力についてわかっていることは二つだけある。
一つは一度に生み出せる刀の本数は少なくとも二十本以上である事。流石に全てを線密に操作することは出来ないだろうが、それだけの刀を適当に振り回されるだけでもかなり危険だ。
二つ目は、能力で生み出した刀の強度は市販で売っている物と同程度の耐久度でどれだけ魔力を込めても変わりないということ。
少なくとも、サンガシ家長男はリシュアが生み出した剣を大した苦もなく切り飛ばしていた。
正確な本数は分からないが、少なくとも十本以上の刀を生み出したリシュアは無理に全ての刀を別々の動きをさせるのではなく、自信が手に持つ刀の動きを真似させてた。
単純な使い方だが、それだけで攻撃範囲は数倍に広がるだけでなく、リシュアの周りを囲むように浮いているために防御にもなっていた。
だが、俺とてそういった状況に対処する為の作戦も考えてきていた。
俺の武器は、何も刀だけでは無いのだ。
「これでも食らってろ!」
「あ?魔石?……魔道具か!」
俺は紋章の中にしまっていた魔道具を取りだし、リシュアに向けて投げつける。勿論この程度の投擲攻撃が通るとは思っていないが、これは俺が思いついたリシュアの能力対策だ。
リシュアは俺が何をしようとしているのかを正確にはわかってはいないだろうが、この魔道具が爆発系であることを察したようだが、リシュアが避ける間も無く魔道具が発動して爆発するように風が吹き荒れた。
これは近距離なら人を吹き飛ばせるほどの風を発生させる魔道具で、この効果でリシュアを囲う剣を一時的に吹き飛ばす。
この風を起こす魔道具を使う戦法は対人戦ではかなり使われている。戦闘中、突然投げつけられた物が魔道具だと認識した瞬間に大抵の人は殺傷能力の高いものを想定すると思う。
魔道具の中にはちゃんと爆発するタイプもあるので、その魔道具を想定してそれに対応する行動を起こすだろう。
しかし、実際に起きる現象は爆発ではなく強い風が吹くだけ。それに一定数は思考が停止するし、拍子抜けして隙を晒す者も居る。その隙を突いた攻撃こそ、この戦術仕組みであった。
今回はその戦術を含め、刀を吹き飛ばすのも含めた作戦だ。
「隙あり!」
「調子に乗んじゃねぇぞ!」
俺は剣を吹き飛ばしたことで空いた空間からリシュアに接近し、隙を狙って刀を大きく振りかぶる。
リしかし、シュアは例え魔道具が爆発物であったとしても無傷でいられる自信があったのだろう。一切俺が魔道具を投げる体勢から動かず、俺の攻撃を見切ってそのまま刀を弾き飛ばされてしまう。
「はっ、いくら作戦を考えても所詮は無能!抵抗も出来ずに死にやがれ!」
「……」
刀は弾かれて手から離れ、器である刀がないから収納も使えない。
リシュアは刀を手放してしまった俺をニヤつきながら罵倒し、首を狙って刀を振るう。
完全に丸腰状態で俺は、防御も何も出来ずにそのまま首が飛び、意識が途絶えて行った。
……なんてな。
「シッ!」
「っ!?短剣だと!?」
俺は腰の付近にできる限り隠していたナイフを取り出し、明らかに油断している俺の首を狙う一撃を逸らす。
まさか俺が短剣を持っているなんて思っていなかったリシュアは動揺して隙を晒す。俺はその隙を狙って首を狙うが……一瞬で気を取り戻したリシュアは背を反らし避けた。
だが、完全には避けきれすに頬に切り傷を付けることに成功した。
よし、まずはこれで一撃だな。
リシュアが魔道具から一切逃げず無計画に斬りかかっても攻撃を防がれること。痛ぶる事が好きなリシュアならその流れで殺すのではなく、あえて刀を弾いて来ること。
リシュアの性格を考えれば、それぐらいなら簡単に予想出来た。
そして、リシュアが俺が短剣を持っていることを予想出来なかった理由。それは、サンガシ家には暗黙の了解に近い形で『刀以外の武器は弱く、持つべきではない』という考えがあるからだ。
……俺はリシュア含めた元兄弟達のように剣術の天才では無い。どれだけ剣術を学んだとて、それは天才には及ばないのはどう頑張っても変わらない事実。
だから俺は剣術以外にも使える全てを自分の戦い方に組み込む。それこそが、俺が……凡人が天才のお前達に追いつく唯一の方法だから。
「無能の癖に刀以外を持ち、更には俺に傷をつけただと……?……ふざけやがって。絶対に殺す!」
「やれるもんならやってみろ!」
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