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三章 再開の灯火
八十六話 未知の契約
しおりを挟む「処分……使える能力?確かユーミーの能力は追跡する能力だろ?」
「ええ。ですが、それはあくまで本来の能力の副次効果にすぎません」
正確な発動条件と効果範囲と維持時間は分からないが、恐らくユーミーの能力は対象への接触により相手に印をつけることができると思われる。
そして俺が主な効果だと思っていた追跡効果範囲あくまで副次効果だとリュオデスは言う。副次効果とは俺が紋章だけでなく能力の効果を切れるのと一緒だ。
「それをユーミーは知っているのか?」
「さぁ?鑑定書を使えばわかるはずなのですが、報告によると追跡効果しか使う様子が見られないそうです」
本来の効果を使わない……。もしくは知らない?
そもそもそれを使う機会がなかっただけの可能性もあるが……。自分の能力を知らないよりもその可能性の方が高い筈だ。
「で?その能力ってのは……?」
「ふっ、流石にそれを教える義理はありませんね。そもそも、あなたはここで消えて……いえ、そう言えば『契約』がありましたね」
「……『契約』?」
リュオデスから殺気がまた膨れ上がった……かと思えば、直ぐに殺気は収まって何かを考えるように口走る。
『契約』。それは先程ユーミーについて話す時にも出た単語。実は、それには二つの意味が存在する。
一つはお互いに同意の元、書類を通し法律に則って契約するということだ。
そしてもう一つ、それも同意の元なのは変わらないが最も重要なのは使うのが書類と法律ではなく、魔道具の魔道契約書を使って契約する事だ。
通常の契約だとその契約を破った場合、法律に則って罰則を下される。
それに対して魔道契約書を使った契約の場合、法律的な処置はされないが契約を破ったその瞬間に激痛という罰則を食らう。
その罰則のキツさは四段階に分かれており、最も効力の強い罰則では死ぬほど辛いと言われるほど。
それほどならショック死してしまいそうなものだが、どうやらそうならないようになっているらしい。だが、辛すぎて自死を選ぶ者も少なくないんだとか。
そんなものを忘れるとは思えない。恐らくただの書類上の契約だろう。
教会の政治的影響力はかなり強い。もし目の前の男が捕まっても直ぐに釈放させる程度できるのではないだろうか。
「実は私、個人的にとある貴族様と契約していましてね。貴方を直接関節問わず殺すことが出来ないんですよ。ですので、貴方を気絶させて逃げた彼女等を追わさせてもらいます!」
「気絶か……舐められたものだな!」
リュオデスがメイスを振るう。そこに武を得意とする迫力はあるが、殺意は中途半端なものだった。
相手を無力化とは単純に殺すよりも難しい。殺すためなら全力で力を振り回せばいいが、相手が死なないそれ相応の威力の調整が要求される。
それはつまり、手加減して相手をしなければならないということ。
リュオデスのメイスが迫る。リュオデスが武器を構え直す時に俺は事前に刀を鞘にしまっていた。
「『深刃』!」
「くっ!?なんて威力!」
そこから放つ俺の最大威力。俺の刀がリュオデスの体を斬ることはなかったが、そのまま吹き飛ばした。
俺とリュオデスの実力はほとんど均衡している。そんな相手の中途半端な殺気の攻撃をそのまま返すなんて動作もない事だった。
そこから相手が息を着くまもなく俺は攻める。飛びかかって切りかかるようにフェイントをかけながら足元を狙いつつ、そのまま背後に回って刀を振るう。
リュオデスは俺のフェイントに引っかかりつつも障壁でカバー。背後に回った俺を何とか首だけ回して見つめメイスでギリギリ防いだ。
「私も本気の武術を見せましょう!天回撃』!」
「遅い!」
防御をするために背に置いたメイスを体の前に勢いよく戻すと同時に全身を回転させるようにメイスを振り抜く。
技と言うだけあってその速度はただの武器を振り回す速度は早く、重いのがわかる。
しかし、武器がメイスで体を半回転させるほどの時間があればその次の攻撃場所を予測して事前に避けることなら俺の速度なら可能。
俺はそのままメイスが右から左にかけて振り抜かれると予測してリュオデスを飛び越えるようにジャンプして避ける。
しかし、リュオデスの目は俺を完全に捉えていた。
「一度避けた方法が、また通用するとお思いですか!」
「だろうな」
俺がこの回避から繋げてカウンターを入れることも予測しているのだろう。俺の目には何時でも使えるように且つ、行動の邪魔にならない位置に障壁が合った。
そしてメイスの振り抜きを中断して下からの突き上げを繰り出す。
カウンターを障壁で防いでそのままとどめを刺すつもりだろう。だが……その武器は俺には届かない。
「『祭て……なっ!?」
「はぁぁ!」
俺はリュオデスをただ飛び越えるだけでなく、リュオデス二人分程の高さまで飛び上がった。
そこまで行けばメイスを腕いっぱいまで伸ばしても届くことは無いだろう。
「何を……!」
「『印切り』!」
俺は刀に能力の魔力を纏わせる。狙うは……障壁とリュオデスを繋ぐ魔力の管。
敢えて同じような回避をしたのはこれを悟らせないため。それと同時に妨害をさせない為だ!
俺は刀を振り抜く。魔力を切り裂く音は俺にしか聞こえないが、確実にリュオデスと障壁の繋がりを断つ。
リュオデスの能力効果は完全に崩壊した。
そして俺はそのままの勢いで崩壊する直前の障壁を蹴りあげ、加速した勢いでリュオデスに斬りかかった。
「はぁ!!」
「グハッ!?」
呆然としていたリュオデスは俺の攻撃に反応出来ず、左肩から腰に掛けて切りつける事に成功した。
だが、これだけでは油断しない。重症を与えた手応えはあったが……まだ、確実に仕留めただけの確信は得られなかったのだ。
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