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三章 再開の灯火

七十六話 対策のイメージ

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「はぁはぁ……、ゼェゼェ……、み、見つけましたァ……!」
「う、嘘だろ……!?」
「偶然にしては出来すぎ~……」
 
 確実に撒いた筈なのに目の前に立ちはだかるユーミー。
 かなり息を切らせているのを見るに物凄く急いでいるのだろう。

「はぁ、はぁ……。え、えへへ!お二人を見つけられたのは記者魂ですよ!では、取材の続きを……」
「逃げろ!」
「了解~!」
「あっ!に、逃がしませんよぉ……!」

 そこから始まるユーミーとの追いかけっこ。

 俺達はとにかく無我夢中で王都を逃げ回り、時に物陰に隠れたり、時に人混みに紛れたり、時に店に入って隠れたりしたが……。

「ここですね!」
「逃げろ!」
「取材を!」
「えぐすぎ~!」
「どこ!」
「店の中まで!?」
「までも!」
「水の中から!?」
「追いますよ!!」
「どこからその意欲と体力は湧いてくるんだ……」
「き、記者ってこんなに凄いんだな~……」

 どこまで逃げてもどうやって隠れてもユーミーは俺達を追いかけてきて見つけ出す。

 これは偶然とか奇跡とかと考えるより、何かしらの能力だと言われた方がしっくり来た。

 体力がそろそろヤバいとなったその時、俺は自分の能力を思い出した。そういえば俺って紋章見えたな。

 能力と一言で言っても色々と使い方は沢山ある。

 あまり思い出したくないが、ゼロスを思い出してみればわかりやすい。

 あいつの能力は体に炎を纏わせる能力。
 その説明を見ただけでは、本当に体に炎を纏わせて終わりだ。

 しかしやつは炎の火力を直接打撃の威力に変えたり、地面にたたきつけて遠隔で地面から炎柱を作り出したりしていた。

 つまり、能力には一つの使い道ではなく、使用者のイメージや発想で色々なことが出来るのだ。

 まぁ、能力によっては単純すぎたり逆に俺の能力のように元の能力が強すぎて応用もクソもできない可能性もあるが……。

 しかし、俺の場合紋章を切る能力だけでなく、紋章を見る能力も備わっている。
 こっちの方なら俺のイメージで違う効果を作り出すことが可能であった。

 ユーミーにはその実験台になってもらうとしよう。

「シエ、次またユーミーが目の前に出てきてもそのまま通り過ぎろ」
「え、ぶつかるよ~?」
「そこは回避してくれ……。俺が先行するから、少し離れて後ろから来てくれ」
「わかった~♪」

 シエも俺が何かをしようとしているのがわかったようで、何も聞かずそのまま少し速度を落として着いてきた。
 相変わらず察しが良くて助かる。

 そう言って路地裏を走っていると……案の定、俺達の目の前にユーミーが現れる。

「はぁ……はぁ……こ、今度こそしゅざ……って、止まってくだ……!?」
「……『結目《むすびめ》の瞳』、『印切り』」
「ひぇっ!?」

 俺はユーミーの隣を通り過ぎる直前、能力を発動してユーミーの能力が発動したを切り裂いた。

 俺が新たに手に入れた能力は相手の紋章を見ることが出来るの能力だったが、これを何かしら違う用途がないかと模索していた。

 勿論、紋章の位置を障害物を関係なく見つけることが出来るのは俺にとってはかなり強力だが、紋章を切る必要がない。もしくは、紋章を切ることができない状況の時は意味をなさない。

 その弱点をどうにか克服しようと思った時、『印切り』の追加効果である能力効果を切る。
 わかりやすく言えば、能力で生み出した炎や強化そのもの等の本来切る事の出来ない物すらも切る事ができるという効果であった。

 そこからイメージできるようになったのがこれ。紋章を見ることはできないが、能力で生み出した物を可視不可視の関係がなく、障害物すらも関係なく見ることが出来る効果だ。

 技名は『結目の瞳』。これもまたシエが名付けた名前だ。

 この眼で見ることが出来たのは、ユーミーが俺に対して付けていた印のような物だ。確実にそんなものは見えなかったので、魔力でできた不可視の印だ。
 これによって俺達の位置を常に把握していたのだろう。

 俺が切ったのは俺に付いた印とユーミーが繋がっている紐のようなものと、俺自身についてる印。

 一応シエも見てみたが、シエには着いていないようだ。

「あうっ!び、びっくりしたぁ……。あ、帽子が!」
「すまない。だが、これで追ってこれは……っ!?」
「どうしたのテル君?早く逃げよ~♪」
「そ、そうだな」
 
 俺が武器を抜いて振り抜いた事に驚いたユーミーは、シエが横を通り過ぎた衝撃でかバランスを崩し尻もちを着く。

 その気配を感じた俺は謝罪を口にしながら後ろを振り向くと……、帽子が取れたユーミーのそのに目を奪われて一瞬足が止まってしまった。

 それは正しく『エルフ』が持つ最も特徴的なそれ。整った顔だなとは思っていたが、まさかエルフだとは……。

エルフに着いて少し聞きたい気持ちはあったが、そんな事を聞けば確実に取材の続きを要求してくるだろう。


 減速した俺を見てシエが俺を急かす。さっさとユーミーから離れたいのだろう。

 俺もさっさと彼女の事は忘れて休憩したいので何も言わずに俺達が借りている宿に向かって走る。
 流石にもう追っては来れない筈なので拠点の場所に行ってももういいだろう。

 それにこの宿は今日で終わりだしな。明日からは野営場での寝泊まりだ。

 

 それから二十分ほど人混みに紛れているが……、ユーミーは一切出てこないし気配も見つからない。完全に撒いたようだ。

「……来ないね~。これは……解放されたってこと~?」
「だな。はぁ、やっと静かに休めるぞ」
「やった~!今日は走り回ったから、お店でゆっくりしたいな~♪」
「ああ、そうするか」
 
 まさか、一日がこんな潰れ方するとは……。
 予想外で狂気的な出会いと体験をした俺達は疲れた体を食事で癒す為に近くのレストランに向かうのであった。

「まさか、エルフと会えるとはな」
「えっっ!?」

おっと、口が滑った。


 ♦♦♦♦♦


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