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二章 強さの道筋
四十五話 一日の終わり
しおりを挟む「これにて、冒険者強化訓練一日目は終了だ!では……解散!」
「「「「「お疲れ様でしたー!」」」」」
戦士の冒険者の掛け声に俺達は返す。そして殆どの人が疲れ気味になりながらドームから出て行った。
「ふあぁ……二人もおつかれ」
「ああ、お疲れ様」
「おつかれ~♪」
レイは眠そうに欠伸をしながらおつかれを俺達に言う。
そんなレイとは逆にシエは元気そうだった。
「君は元気だね……僕はもうヘトヘトで眠いよ」
「シエが一番魔力使って疲れてそうだと思ったんだけどな」
「多分、テル君達と違って激しい運動はしてないからかな?ずっと座って能力試してたからそんなに疲れてないんだ~♪」
魔力を大量に使っても定期的に休憩すればそこまで疲れることは無い。
それにシエの魔力はそこらの魔術使いの数倍はあったりする。その辺を総合的に計算すれば、シエは普通に俺なんかより強かったりするのだ。
「あ、遠目だけど二人が頑張ってるの見たよ~!偉い偉い♪」
「そういえば、シエはどうだった?何か見つけたか?」
シエは俺達の肩をポンポンしながら褒める。
訓練中、シエにあまり目立った動きを感じられなかったので俺はシエに進捗を尋ねた。
すると俺の問によくぞ聴いてくれたとばかりにシエは笑みを浮かべた。
「フフン!聞いて驚け!なんと新技できちゃったんだよね~♪」
「おお、本当か!」
「ホントホント♪と、言ってもまだ開発段階だから完成はしてないけどねぇ」
「僕達も新技身に付けてる途中なんだ。テル君はもう殆ど完成したようだけどね」
「いや、俺もまだ改善点が……」
「オイ!おめぇら!」
後ろから野太い声が聞こえる。忘れていた、いや、忘れようとしていた声だ。
「「「……はぁ」」」
「全員でため息吐くな!」
ドスドスとわざとらしく足音を立てながら近ずいくる者がいた。例の厄介男だ。
「……今度はなんだ」
「ヒョロがり1!オレ様と戦いやがれ!」
「なんでだ。っていうか俺はヒョロがりじゃない」
「オレ様はやっぱりさっきの班分けが納得いかねぇ!お前をぶっ倒して俺様の方が強い事を証明してやる!」
「無視かよ」
「……これが脳筋って奴かぁ」
「ほんっっと、男って馬鹿。あ、テル君は違うよ?」
「あれ?僕は?」
「レイ君は女子枠」
「何故に?!」
シエの中ではもうレイは女子認定されているという衝撃の事実が判明しつつ、俺はこの決闘モドキを受けるかどうか考える。
正直、そんなのに受ける筋合いはないと適当に払うことも出来るが、これで倒せればこれ以上突っかかって来なくなるかもしれない。
しかしこいつの性格では、負けたら負けたで更に突っかかって来るようになるかもしれない。
だが、新技の練習としてはちょうどいい気もする。
俺はふと、指導者の方に目を向ける。
一瞬、先程も指揮っていた戦士の冒険者と目が合うが特にダメといった様子は見られない。
殺し合いでさえ無ければ大丈夫、と言ったところか。
「わかった」
「えっ!?テル君!?」
「ただし、俺に負けたら次から俺に絡んでくるな」
「成程ね。良い案だ」
「いいぜ!どっちが上かハッキリさせてやる!」
俺達は木製の武器を取り、試合用の台の上に立つ。審判はレイにしてもらうことした。
「じゃあ、確認するね。使用武器は支給された木製の武器のみ。能力の使用不可。勝利条件は相手を降参させるか気絶させるか。大丈夫だね?」
「ああ」
「さっさと始めろ!」
「じゃあ……始め!」
レイが始めの合図を出した瞬間に厄介男は斧を振り上げながら飛び掛ってくる。
明らかに身体強化頼りの攻撃だ。
初手で新技を試すのもアリだが、戦闘への集中力を高める為に攻撃を避けて普通の攻撃をする。
「ゥオラァ!」
「俺よりも技がないな……」
厄介男は力任せに斧を振り回す。あの時のような防御無しの攻撃では無いものの、それでも隙は多かった。
その隙を突けないほどの猛攻と言う訳でもなく、俺を壁際に誘い込もうとしている訳でもない。
攻撃力と体力は多そうではあるのだが……ライアの言う通り能力だよりなのだろう。
俺はそろそろかと思い、全力で隙を突く。
厄介男が振り回している斧を避けがら空きになった胴に刀を入れるが、即座に腕の篭手で防がれる。
俺はその勢いのまま男の後ろ側に周り、男が振り向くのを見越してフェイントを入れつつ、更に回り込んで胴に一撃。
鎧の部分に当てたがそれなりに痛いはずだ。
「ぐっ……!クソぉ!」
「テルく~ん!そろそろ帰ろ~?お腹空いた♪」
「わかった」
「ちょ、調子に乗りやがって!!!」
厄介男はブチ切れて全身に魔力を滾らせる。本気の本気のようだ。
そんな男を見つつ、俺は逆に冷静に深く集中する。
まだまだ意識しないと崩れてしまう構えを整え、自然に反撃の構えを取る。
「ゥオラァァァ!!死ねぇぇ!」
男の斧が俺の木刀に触れた瞬間。俺の全力の反撃が……!
「はい、終了」
「なぁ?!」
「っ?!」
ガァン!!っと音を立てながら、俺と厄介男の武器が片手で持った一本の剣で止められる。いつの間にか近ずいていた戦士の冒険者の剣だ。
「それ以上は大怪我になりかねないからな。ったく、元気なのはいいが加減ってのを……」
「あんたが人の事言えんのかい?」
「ちょっ、ステフ!今カッコつけてんだから入ってくるな!」
戦士と魔術師?の女性の言い合いが始まる。そして俺と厄介男は後ろから来ていた二人の冒険者によって離される。
「さてさて、これ以上の鍛錬は明日の訓練に響くからね~。二人共さっさと宿に帰りなね~」
「ああ、明日相手してやる」
「……くっ、良いか!今回は引き分けだ!次こそ決着をつける!フン!」
そういうと厄介男は肩に乗っている指導者達の手を振り払い、斧を適当に片付けてドームから出ていった。
「あ~、ちゃんと片付けてよね~」
「お主は強い。さっさと一撃で決めることだ」
「ちょいちょい。そこは無益な争いは辞めとけ的なこと言うべきじゃね~?」
「自分はそこまで平和主義ではない」
二人の掛け合いを聞きながら、集中を解き息を吐いて戦闘の余韻を吐き出すのだった。
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