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二章 強さの道筋
四十一話 噂の真実
しおりを挟む俺達は武器を構えて全力で身体強化をする。本気を出さなければ相手にすらされないだろう。
「「行きます!」」
「どうぞ」
レイは槍で突きを放ち、俺はライアが避ける場所を予測して切りかかる。
しかしライアはそこから一歩も動かずに槍を弾き剣で俺の刀を受けた。
俺達は本来なら退避すべきだがこれはあくまで訓練。反撃を恐れずすぐさま次の攻撃に転ずる。
レイは突きが効かないと判断し槍を振り払うが上に弾かれる。その隙を突いて死角から狙うが即座に弾かれる。
どうやら完全に動きは読まれているようだ。
一瞬のアイコンタクトでレイと先手を変わり正面から斬り掛かる。
俺は一撃一撃よりも隙を作る為に自分の速さを活かしてとにかく連続で斬るが、それよりも早い剣さばきで全て弾かれる。
「『揺一』!」
レイは俺が左に飛んだタイミングで突きを放つ。
『揺一』。レイが使う槍術の一つだ。
喰らえばわかるがその槍はまるで揺れているかのように見え、威力も相まって受けが困難な技だ。
「フッ!」
「ぐっ!?まだまだ!『旋天』!」
しかしそんな不意打ちもさらに速度をました剣さばきに弾かれるが、その勢いのまま槍を回転させて連撃を与える『旋天』を放つがそれを全て受け流された。
「すぅ……」
俺はそんな二人の攻撃を見ながら、目を細め息を吐き木刀を腰に戻して抜刀の構えを取る。そして一瞬で深められる限界まで集中力を高める。
「……シッ!」
「『水影』!」
俺の全力の抜刀とレイの下からの払い斬りの二方向からの攻撃をライアぶつけた。
「『刻波払い』」
「いや~、やっぱり高ランク冒険者って強いね!世界は広いや」
「だな。俺ら二人の攻撃がたった一撃で相殺されるどころかそのまま吹き飛ばされるとは」
俺達は案の定歯が立たず、最後の一撃で吹き飛ばされた。
その後は一緒の班の人達が次々にライアに襲いかかり、全員返り討ちにされていた。
今は全員の戦い終わったので休憩時間。他の人たちの訓練をぼんやりと見たり自分の課題を考えたりしながら休憩していた。
「はっはっは!それでも善戦とは言えなくても瞬殺はされなかったじゃないか。それだけでも俺はすげぇと思うぜ?」
「ん?あなたは?」
「あんた達と一緒の班の一人で瞬殺されちまった一人さ。こちらを全く見ずに防御された挙句、一、二度剣を交えた後は気がつけば吹き飛ばされてたのさ」
男ははっはっはと自虐的に笑う。大抵の人は全員そんな感じで吹き飛ばされて終わっていた。
「世の中には上には上がいるもんだな。これでも少しは地震あったんだけどな一瞬で崩されちまったよ。俺も我流じゃなくて彼女みたいに『王国剣術』とか習うべきかね?」
「あ、やっぱりあれって王国剣術だったんたね」
「ああ、一度見たことあるが殆ど動きが一緒だった。何よりあんたらに使った『刻波払い』は王国剣術の基本技の一つだからな」
『王国剣術』。それは人族の使う代表的な剣術の一つだ。
人族が使う剣術は代表的な物が三つ存在し、一つは『王国剣術』。次は『帝国剣術』。そしてもう一つが『剣神剣術』が存在する。
『王国剣術』は文字通り王国発祥の剣術で、どちらかと言うと防御に繋がる技が多い剣術だ。先程の『刻波払い』もそうで、相手の技を相殺する為の技と言われている。
そして何より、この剣術を誰よりも極めると国から『剣豪』の称号が貰え、王国剣術を習うものは誰もが憧れる称号だ。
因みにこの国のは『スタルフィール王国』。つまりこの国発症というわけだ。
次に『帝国剣術』。これも先程と同じように帝国発祥の剣術だ。
これは王国剣術とは逆でとにかく攻撃的な剣術で、防御を捨てるというより相手に攻撃に転ずるという選択肢を与えず攻撃すると言った感じの剣術だ。
こちらは極めると『剣帝』の称号を貰えるが、帝国は良くも悪くも実力主義なので基本的にその称号を持っているのは帝国の王である皇帝陛下だったりする。
そして最後に『神聖剣術』。これは神聖教国発祥の剣術であり、神に仇なす者を倒す事を主とした技術と言われる剣術だ。
『王国剣術』と『帝国剣術』とは違い、秘匿されている部分が多いのが特徴だ。
ある一定の技量を持つと『聖騎士』という称号を貰え、極めると『聖騎士団長』になれるらしい。
「ん~、術ってのは一石一致で身につく物じゃ無いからね。それに冒険者として求める力と既存の剣術が君とあってるかも分からない。強くなる方法において誰かから教わる事は最も効率的だ。だけど、実践を踏んで自分だけで得た力も馬鹿には出来ないんだ」
「確かに、結局のところ剣術と言っても大抵は対人を想定したものも多いし、魔物を倒すことだけを考えれば剣術を学ぶことが正しいとは限らないな」
「なるほどなぁ。こりゃ勉強になる。噂を聞いてここに参加してよかったぜ」
男は感心したようにしみじみと言う。
きっと彼も自分の力に伸び悩んでいたのだろう。
「噂って?」
「ん?ああ、あれだよ。この国では有名な冒険者が訓練をしてくれるって噂だ」
「有名な冒険者……グランか」
「そうそう、彼がこの訓練に参加するって噂だよ。その噂を言ってたヤツは嘘だと思ってたが俺はその噂を信じでやってきたら噂はマジだったって訳だ」
「なるほど。噂ってのは馬鹿にできないみたいだな」
「冒険者やってるとそれがよくわかるね」
「ま、俺達は訓練して貰えないみたいだが有名人を見れただけで土産話になるから満足だ」
はっはっはと、男は笑う。
訓練が終わったらもう会うことは無いかもしれないが、彼とも良い友に慣れそうだ。
「そうだ、噂と言えばこの街で流行ってるあの話、知ってるか?」
「ん~、ごめん。僕はこの街に来たばっかりで知らないんだ」
「俺は聞いたことがあると思う。あれだろ?この街で謎の犯罪が多発してる奴」
「そうそう、それだ」
実はこと街で約一ヶ月前から謎の殺人事件が多発していた。
犯人は見つかっておらず、領主があらゆる手を尽くして犯罪を止めようとしているが頻度が下がっただけで収まらず、今では合計二十人の人が犠牲になっているらしい。
「ん?それは事件が起きたって話ではなく?」
「ああ、噂の本題はここからで、その事件を起こしたのは全て同一人物で、その犯人ってのが約三十年前に存在した悪逆非道を尽くし、姿をくらませた大犯罪者なんじゃないか?って話だ」
「へぇ?確証はあるのかい?」
「いや、所詮噂だからそこら辺は聞いたことは無いな。だが、噂だとその姿を見た人が居るらしくてな」
「ほほう!どんな姿なんだい?」
レイが興味津々で男の話に聞き入る。
もしかしたらそういう伝説の人、みたいな噂が好きなのかもしれない。
「まずはそこまで身長が高くなかったらしい」
「ほうほう」
「次に一瞬で屋根まで飛び上がったから身体能力も高くて」
「ふむふむ」
「変な笑い方もするらしい」
「なるほど……「ん?」」
「しかも大きめの武器も背負ってたらしくてな」
「う、うん……」
「そして最後に」
「さ、最後に?」
「……少し声は高めだったらしい」
「「……はぁ」」
良かった。一人だけ思い当たる人物がいたので驚いたが声は高くないので安心だろう。寧ろあいつは低い。
「そろそろ休憩は終わりだ。再開するぞ」
「お、もう時間か。残りも頑張ろうな」
「あ、ああ。君もね」
「……変な偶然もあるもんだな」
ライアが休憩の終了を知らせを聞き、俺達は立ち上がりって微妙な気分になりつつ訓練を再開するのだった。
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