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一章 始まりの旅
二十二話 炎の拳
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シエを押さえていた男二人は状況を理解するとシエから離れ、紋章から片方はナイフを、もう片方は片手剣を取り出す。
「ケラヒ!大丈夫か?!」
「ケヒ~……」
「クソ、邪魔しやがって!」
この三人はそこまで強くはない。だが……
「てめぇ……、いつ入ってきた」
明らかに一人だけ格上の存在がいる。ゼロスだ。
「あんたが扉を開けた時だ。先輩ずらしてる割に俺に気づけない程度なんだな」
「てめえ!」
ゼロスは俺に向かって殴りかかってくる。
あの時と違う明らかに殺す気の攻撃をわざわざ受けるつもりは無い。怒りに任せた攻撃なら簡単によけることが出来た。
「死ねぇ!」
(『印切り』!)
「ちっ!痛ぇな!」
俺がゼロスの攻撃をよけると同時に片手剣の男が斬りかかってくる。
すぐにそちらも対処し、言葉で能力がバレない様に心の中で能力を発動。腕を斬ることはかなわなかったがそれでもギリギリ紋章に刃が届く。
「……!?な、なんだ?!力が……」
「なに?能力か?なら俺も使うぜえ!!『俊足』!」
ナイフの男がそういうと、先程の後退速度より速い動きで走ってくる。
想像以上の速度にとりあえずゼロスから離れる為にもそこから飛び込むように回避する。
「ふん!避けてもすぐ追いつくぜえ!」
男は壁を蹴る様に体の向きを変えてこっちに向かってくる。
「おらあ!」
「くっ……!」
その速度のままナイフを突きつけられるが何とか弾く。
……待てよ、今の感じ。
「もういっちょ!」
「……」
間髪入れずに男が走ってくるが、俺は冷静に攻撃タイミングを見計らい……ここだ!
「ぐああ!?」
「やっぱりな。足が速くなっただけでそれ以外は速くなっていない。しかも加速は即座に変更不可。分かれば対処は簡単だ」
工夫すれば強くなるかもしれない能力だが……。こいつはそれをせずにここに落ちたのだろう。
「スピン!?てめぇ……許さねえ……!くそっ!どうなってんだこれ!」
「……もういい、お前らは下がってろ。あの雑魚は俺が本気で殺る」
「わ、わかった」
「シエ。隅に寄ってろ」
「う、うん」
先程とは違い。冷静に起こった様子のゼロスがこちらに歩いてくる。
俺はシエに下がらせ、いつ襲い掛かられてもいいように構える。
「よくもやってくれたなぁ。チッ!ここにいるってことはお前を見てたやつも殺したのか?」
「ああ、殺らなきゃ殺られるのを先輩達から学んだからな」
「はっ、いい先輩だな。せいぜいその先輩に感謝しとけ」
「ああ、先にあの世に招待することでな」
先に仕掛けるのは俺。素手なら紋章を切れやすい。俺はゼロスは拳か腕で防ぐと思いそれ前提で動く。
「わかりやす過ぎだぜ!」
「ぐふっ!」
ゼロスは俺の攻撃をやすやすと避け、俺の腹に蹴りを入れる。
何とか受け身を取ってゼロスを見ると目の前まで近づいていていた。
「オラァ!」
「グッ……!」
そのまま蹴りを入れられるのを何とか鞘を挟むことで直撃は避けたが、それでも腕は痛むし蹴られた腹は痛い。
やはり俺とゼロスの間にある圧倒的な身体能力の差はそう簡単に覆せなかった。
「どんな能力か知らねえが、デバフ系なんだろ?見た感じ攻撃を当てたら弱体化か?まあいい。お前程度の攻撃、当たるわけねえからな。室内じゃなきゃ大剣使うんだが、お前程度にはちょうどいいハンデだろう」
「……ハンデ?余裕だな」
「当たり前だろ?さっきの身体強化も本気じゃねえ」
ゼロスは拳を構え、いつでも殴かかれるように全身に魔力を込める。
その圧倒的な魔力に冷たい汗が流れる。どうやら嘘じゃなさそうだ。
「まあ武器なんざなくても能力は使える。ランク『青』の能力。見せてやろうじゃねえか」
「青……!?」
やばい。俺の能力じゃ何もできなければ加護の差で確実に負けている。
「行くぜぇ!『覇纏の炎』!」
その瞬間ゼロスの腕が燃える。だが、奴が身に着けている服は燃えず文字通り炎を纏っているようだ。
「ぼ、ボスが能力を使った!逃げろ!」
「ケ、ケヒィィィ!」
男二人がドアを開けて逃げ出す。正直俺も逃げたいが、逃げれないし逃げられない。
「くらいやがれ!」
「やばい!!」
一撃でも食らえば重症どころか全身丸焼きになるであろう一撃。
俺は攻撃を受け止めるや流すなんてことを考えるよりも先に回避を選択。シエを抱えて逃げるために横に飛び込む。
すると空を切ったゼロスの拳から炎が飛び出し前方が焼焦げる。もし受け止めようとしていたら俺は死んでいただろう。
「逃がすかあ!」
「シエ!」
「ひっ!?」
ゼロスが俺の顔面を狙ってきているのを感じてシエの頭を押さえると同時に俺もしゃがむ。
するとゼロスの拳は壁に当たるとそのまま壁をぶち壊し、俺たちはその衝撃で外に放り出される。
「あ?そういえばその女も居たなあ。くそ、こんだけ魔力を放出したから奴は絶対気づいたはずだ。お前ら両方さっさと殺して逃げ刺してもらうぜ!」
「シエ!逃げるぞ!」
「わ、わかった!」
「逃がさねぇっつってんだろ!」
俺たちは路地裏に入ろうとする。
そしてゼロスが地面を叩いた気配に嫌な予感を感じ、走るシエの肩をつかんで後ろに下げる。
「待て!ダメだ!」
「え?!」
その瞬間、俺たちの目の前に地面から炎が飛び出る。
どうやらゼロスは地面を通して遠隔攻撃までできるようだ。
「俺も時間がねえんだ。鬼ごっこは無しだぜ」
「冗談きついぜ……」
攻撃も当たらなければ、当たったとしても圧倒的身体能力差でろくにダメージは入らない。
俺の能力も意味も無さず、逃げもできない。
ほぼ完全な詰み。どうやら現実はそう簡単にはいかないようだ。
♦♦♦♦♦
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「ケラヒ!大丈夫か?!」
「ケヒ~……」
「クソ、邪魔しやがって!」
この三人はそこまで強くはない。だが……
「てめぇ……、いつ入ってきた」
明らかに一人だけ格上の存在がいる。ゼロスだ。
「あんたが扉を開けた時だ。先輩ずらしてる割に俺に気づけない程度なんだな」
「てめえ!」
ゼロスは俺に向かって殴りかかってくる。
あの時と違う明らかに殺す気の攻撃をわざわざ受けるつもりは無い。怒りに任せた攻撃なら簡単によけることが出来た。
「死ねぇ!」
(『印切り』!)
「ちっ!痛ぇな!」
俺がゼロスの攻撃をよけると同時に片手剣の男が斬りかかってくる。
すぐにそちらも対処し、言葉で能力がバレない様に心の中で能力を発動。腕を斬ることはかなわなかったがそれでもギリギリ紋章に刃が届く。
「……!?な、なんだ?!力が……」
「なに?能力か?なら俺も使うぜえ!!『俊足』!」
ナイフの男がそういうと、先程の後退速度より速い動きで走ってくる。
想像以上の速度にとりあえずゼロスから離れる為にもそこから飛び込むように回避する。
「ふん!避けてもすぐ追いつくぜえ!」
男は壁を蹴る様に体の向きを変えてこっちに向かってくる。
「おらあ!」
「くっ……!」
その速度のままナイフを突きつけられるが何とか弾く。
……待てよ、今の感じ。
「もういっちょ!」
「……」
間髪入れずに男が走ってくるが、俺は冷静に攻撃タイミングを見計らい……ここだ!
「ぐああ!?」
「やっぱりな。足が速くなっただけでそれ以外は速くなっていない。しかも加速は即座に変更不可。分かれば対処は簡単だ」
工夫すれば強くなるかもしれない能力だが……。こいつはそれをせずにここに落ちたのだろう。
「スピン!?てめぇ……許さねえ……!くそっ!どうなってんだこれ!」
「……もういい、お前らは下がってろ。あの雑魚は俺が本気で殺る」
「わ、わかった」
「シエ。隅に寄ってろ」
「う、うん」
先程とは違い。冷静に起こった様子のゼロスがこちらに歩いてくる。
俺はシエに下がらせ、いつ襲い掛かられてもいいように構える。
「よくもやってくれたなぁ。チッ!ここにいるってことはお前を見てたやつも殺したのか?」
「ああ、殺らなきゃ殺られるのを先輩達から学んだからな」
「はっ、いい先輩だな。せいぜいその先輩に感謝しとけ」
「ああ、先にあの世に招待することでな」
先に仕掛けるのは俺。素手なら紋章を切れやすい。俺はゼロスは拳か腕で防ぐと思いそれ前提で動く。
「わかりやす過ぎだぜ!」
「ぐふっ!」
ゼロスは俺の攻撃をやすやすと避け、俺の腹に蹴りを入れる。
何とか受け身を取ってゼロスを見ると目の前まで近づいていていた。
「オラァ!」
「グッ……!」
そのまま蹴りを入れられるのを何とか鞘を挟むことで直撃は避けたが、それでも腕は痛むし蹴られた腹は痛い。
やはり俺とゼロスの間にある圧倒的な身体能力の差はそう簡単に覆せなかった。
「どんな能力か知らねえが、デバフ系なんだろ?見た感じ攻撃を当てたら弱体化か?まあいい。お前程度の攻撃、当たるわけねえからな。室内じゃなきゃ大剣使うんだが、お前程度にはちょうどいいハンデだろう」
「……ハンデ?余裕だな」
「当たり前だろ?さっきの身体強化も本気じゃねえ」
ゼロスは拳を構え、いつでも殴かかれるように全身に魔力を込める。
その圧倒的な魔力に冷たい汗が流れる。どうやら嘘じゃなさそうだ。
「まあ武器なんざなくても能力は使える。ランク『青』の能力。見せてやろうじゃねえか」
「青……!?」
やばい。俺の能力じゃ何もできなければ加護の差で確実に負けている。
「行くぜぇ!『覇纏の炎』!」
その瞬間ゼロスの腕が燃える。だが、奴が身に着けている服は燃えず文字通り炎を纏っているようだ。
「ぼ、ボスが能力を使った!逃げろ!」
「ケ、ケヒィィィ!」
男二人がドアを開けて逃げ出す。正直俺も逃げたいが、逃げれないし逃げられない。
「くらいやがれ!」
「やばい!!」
一撃でも食らえば重症どころか全身丸焼きになるであろう一撃。
俺は攻撃を受け止めるや流すなんてことを考えるよりも先に回避を選択。シエを抱えて逃げるために横に飛び込む。
すると空を切ったゼロスの拳から炎が飛び出し前方が焼焦げる。もし受け止めようとしていたら俺は死んでいただろう。
「逃がすかあ!」
「シエ!」
「ひっ!?」
ゼロスが俺の顔面を狙ってきているのを感じてシエの頭を押さえると同時に俺もしゃがむ。
するとゼロスの拳は壁に当たるとそのまま壁をぶち壊し、俺たちはその衝撃で外に放り出される。
「あ?そういえばその女も居たなあ。くそ、こんだけ魔力を放出したから奴は絶対気づいたはずだ。お前ら両方さっさと殺して逃げ刺してもらうぜ!」
「シエ!逃げるぞ!」
「わ、わかった!」
「逃がさねぇっつってんだろ!」
俺たちは路地裏に入ろうとする。
そしてゼロスが地面を叩いた気配に嫌な予感を感じ、走るシエの肩をつかんで後ろに下げる。
「待て!ダメだ!」
「え?!」
その瞬間、俺たちの目の前に地面から炎が飛び出る。
どうやらゼロスは地面を通して遠隔攻撃までできるようだ。
「俺も時間がねえんだ。鬼ごっこは無しだぜ」
「冗談きついぜ……」
攻撃も当たらなければ、当たったとしても圧倒的身体能力差でろくにダメージは入らない。
俺の能力も意味も無さず、逃げもできない。
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