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一章 始まりの旅
十八話 実験の衝撃
しおりを挟む俺は先日来た薬草の群生地で薬草取りを済ませる。
シエはここに来て直ぐに見つけていたが、俺はなかなか見つからず苦戦した。
やはり薬草探しにもコツや慣れ、必要な情報がある様で、初心者用の依頼とはいえ簡単ではなかった。
「よし、薬草はこれぐらいでいいか……。よし、すぅ……」
俺はすぐに帰路にはつかず、息を吐きながら目を細め意識を集中して辺りの気配を探る。
集中は戦闘に置いても重要なことで、相手の気配や動きを感知する力や、技のキレや一撃の重さは集中の深さによって変わるらしい。
その事を本で知ってから自分なりに集中する練習を自室でするようになり、コツを掴んでからは集中力だけは誰にも負けない自信があった。
「……居た。気配的にスライムの筈だ」
全身に魔力を巡らせて身体強化をし、いつでも刀を抜いて戦えるようにしながらスライムに近づく。
何故スライムと戦うのかと言うと、自分の能力の限界を知るためだ。
あれから一度も使ってない『印切り』。感覚と文字での説明でどんな能力かはわかっているが、まだまだ未知数なところがあるので実験は必要だ。
「俺が知りたいのは能力を短時間で何回使えるか。制限や代償はあるのか。そもそも俺はどれくらいの強さなのか」
最後のは自分より強い相手と戦わないと分からないかもしれないが、それはいつかするであろうグランとの訓練で分かるはずだ。
今回はとにかくスライムを狩って限界を探すことが目標だ。
気配に近づくにつれ自分も気配を消し、スライムが見える位置で身を隠す。
そしてスライムをよく観察すると、スライムの核である魔石の近くに薄く光る紋章のようなものを見つける。
因みに、スライムの形はゲル状ではなくプルンとした球状だ。
俺は刀を抜いて警戒しながら近づく。
どれだけ最弱と言われる魔物であるスライムでも、新人冒険者が弱いと侮り油断してやられてしまうと言うのは意外に多い。これは同じ最弱と言われるゴブリンも同様だ。
スライムと数メートルまで近づくと流石にスライムもこちらに気づき、俺の事を敵だと認識したのかこちらに飛び跳ねて体当たりしてくる。
この攻撃の仕方はもう経験済みなのでそれを利用して攻撃を当てる。
「シッ!」
「!?」
スライムには基本的に物理攻撃は効かない。
剣で攻撃してもそれなりの技術が無ければ刃が通らず弾き飛ぶだけだ。
剣士はスライムにダメージを与えられるかが強さの最も分かりやすい基準になる。と、本で読んだのを思い出し、『印切り』を使う前に攻撃をしてみる事にした。
そして結果は……どうやら切り裂くことは出来たようだ。しかしまだまだのようで核まで刃は届かず、吹き飛ばしただけという結果になった。
「まだまだだな……『印切り』!」
「!?」
次に飛び跳ねて来たスライムには『印切り』を試す。
すると能力の発動により魔力を纏った刀はスライムを切り裂き、そのままスライムの紋章を切ったのだった。
「なんでスライムごと切れたんだ?さっきは切れなかったのに……まだまだ検証が必要だな」
俺がスライムを見た瞬間残りのスライムは一際プルプルと震え出したのだった。
それから一週間後。
「おめでとうございます!今日からテルさんは冒険者ランク『緑』です!」
「いえーい!おめでと~!パチパチパチ~♪」
「ああ、ありがとな」
コツコツと毎日薬草取りの依頼や街のお手伝いの依頼などをして遂にランク『緑』に昇格した。
「これでやっと私とお揃いだね~♪」
「そうだな。やっと魔物を堂々狩りに行ける」
「堂々って……喜ぶ理由がある意味冒険者らしいですね……それと、魔物は危険なんですから油断し無いでくださいね!」
「ああ、絶対に油断せず魔物を狩る。安心してくれ」
「安心していいんだかないんだか……」
「まぁそれがテル君だからね!」
冒険者の仕事は魔物を間引いたり素材を取ってきたりする。つまり魔物を倒すのが本来の仕事と言っても過言では無い。
なので魔物退治に意欲的な俺を歓迎するべきなのでは?とも思うが、そんな心配性な所がリーフさんのいい所なのだろう。
「よ~し!今日はランク上がったお祝いしよう!ね?良いでしょ?」
「まぁ今日ぐらいはな」
「やった~♪」
シエはルンルンと歩きながら列から外れていく。
どんだけお祝いしたいんだよと思うが、俺も少し気分が乗ってるので良いだろう。
「ほら早く早く~♪」
「わかったわかった。じゃあリーフさん。お先に失礼します」
「はい。今後も頑張ってくださいね」
俺は挨拶した後、前を行くシエに着いていく。
「どこ行くんだ?」
「ん~?え~と、私のオススメの店~」
シエはこちらを見ずにフラフラとした様子であやふやなことを言う。
少し疑問に思ったが特に気にすること無く着いていく。
「ここを曲がって~」
「ここを?まぁいいか」
もしかしてこの前グランに教えて貰ったジェドの鍛冶屋見たいな隠れ飲食店か?
そう思いながらついて行くと、不意にシエが振り返る。
「ねぇ、テル君」
「ん?どうしたんだ?」
「……ごめんね?」
ゴンッ!
最後に鈍器か何かがぶつかる音と頭に衝撃を感じながら、俺は意識を手放したのだった。
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