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第二章 旅立ち、それは出会いと目的

六十三話 咆哮

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「……魔術が効かないなら斬る。それだけ」


 レンゲは刀を深く構えて全身を魔力で強化する。本気の構えだ。

 青灰眼は俺より確実にレンゲの方が脅威だと認識し、レンゲを警戒し始める。

 俺はそれを好機だと思い気配を消すが、それがあまり効果の無い事だと理解する。

「ぐるるるる……」
「っ!?そういえば……」

 今も俺たちの周りをゆっくり回りながら囲っているグレーウルフ達がいる。

 逃げるつもりは無いが、逃げようとすれば纏めて襲ってくるだろう。

「……『魔纏い』、『鬼牙』!」
「グルァァ!!」

 レンゲの雷を纏った刀が青灰眼を襲うがその程度では怯むことなく魔力を纏った爪で対抗する。

「……『流鬼』、『突鬼』!」
「ガッ!?」

 レンゲはその爪の勢いを無理やり別方向に向け、青灰眼のバランスを崩しそこに刀で突き刺す。
 が、青灰眼の体は固く、少し血が出た程度で致命傷とは程遠いダメージ。

 そこで俺はその隙を着いて手に魔力を込めた。

「ガァ!!」
「くっ!気付かれた!」
「ワォォォォン!!」
「……あれって」

 その大きな遠吠えで俺達を吹き飛ばすと同時に青灰眼の周りにいくつもの魔法陣が浮かび上がる。

「ワォォォォン!!」
「魔術を消し飛ばすだけじゃなくて魔術も使えるのか!?」

 浮かび上がった魔法陣がさらに活性化し、紫ががった黒い槍が複数俺たちに向かって飛び出る。闇属性魔術だ。

「……ナルミ!」
「任せろ!」

 俺は全部の魔力を使い切るつもりで魔力を解放し、全ての魔術を捕まえる。

「ガゥ!?」
「う、おぁりやぁぁぁ!!」

 同時に五本以上魔術を操作するのは初めてだ。現段階の能力の限界にたってしているから脳がガンガンと痛む。

 自分の魔術が突然停止したことに驚きを隠せず身動きが取れていない青灰眼に魔術を向ける。

「お返しだぁ!!」
「グルァァァ?!?!」

 誰も自分が発動した魔術が突然自分に返ってくるなんて思いもしないだろう。

 反応が遅れ魔術を打ち消すまもなく青灰眼は自分の魔術をもろに受ける。そしてその隙を見逃すレンゲでは無い。

「……『斬鬼』!!」
「キャウン!?」

 レンゲは真横から青灰眼の体に斬り掛かる。魔術の衝撃からまだ立ち直れてない青灰眼はろくに対処も出来ずにそのまま攻撃をくらった。

 しかしそうなっても青灰眼の体は固く、先程よりは深いがそれでもまだ致命傷には至らずレンゲに噛みつきに掛かることでレンゲを離した。

「頑丈過ぎるだろこいつ!」
「……もっと、威力を……」

 レンゲの一撃をもろに食らってもまだ戦えるその様子は強者の威厳を感じた。グレーウルフの群れを主であるプライドだろうか。

 青灰眼は姿勢を低くし、魔力を全身に纏ったかと思うと、手足や口から黒い魔力が溢れ出す。

「ぐるるるる……」
「闇属性魔力が……まさかこれって!」
「……魔纏い」

 今もレンゲが刀に使用している技術。もしかしてレンゲのを見て学習したのか!?

「グルァァァ!!」
「『魔力衝撃波』!!」

 俺はだいぶ減ってしまった魔力で身体強化を強め、青灰眼の攻撃を剣で受け止める。

『魔力衝撃波』を同時に放つことで魔纏いでの威力を下げつつ、魔力的ダメージを喰らわせようと思ったがどうやら相殺されたようだ。

「ガァァ!」
「や、やばっ!?」
「……『鬼牙』!!」
「ガルッ!?」

 俺に噛み付こうとした青灰眼の横からレンゲが斬りかかり何とか回避する。

 俺はもうヤケクソで『魔力衝撃波』を連発する。

「この犬っころめ!!『魔力衝撃波』!『魔力衝撃波』!『魔力衝撃波』ぁ!!!」
「グルァァァ!」
「うおわぁぁ!?!?」
「……『鬼瞬』!」

 青灰眼は雄叫びを上げ相殺するが、勿論そうすれば隙が生まれる。

 そこにレンゲの鋭い一撃が入り大きな傷がつく。俺は吹き飛ばされながら『魔力衝撃波』二回分の魔力を無理やり剣に詰める。『二重・魔力衝撃波』の準備だ。

 もう何度もこいつ魔術を打ち消す咆哮を食らってわかったことがある。
 こいつの遠吠えや咆哮そのものに魔力が乗っているのだ。

 多分だが、遠吠えや咆哮に魔力を乗せることで魔術に直接魔力をぶつける事で魔術を無理やり崩壊させているのだ。

 そんなことが可能なのかと言われると正直分からない。こいつの声の振動が特殊で魔術を崩壊する特殊な振動でも出しているのではないだろうか。

 つまり、こいつの本来の能力は魔術を崩壊させる咆哮を放てることではなく、声等に魔力を載せることが出来るという物のはず!

 その効果は俺の能力にも影響を与えてしまうが、『魔力衝撃波』を食らわせて魔力操作が難しくなった状態なら魔術の崩壊を防げるかもしれない!

「レンゲ!魔術だ!」
「……!?……わかった」

 魔術が効かないとわかっているのにレンゲは俺のことを信じて魔術の準備に取り掛かる。その信頼を裏切る訳には行かない。

「犬っころ!これでもくらぇぇぇ!!『二重・魔力衝撃波』」
「グルル……ワォォォ……!?」

 剣に押しとどめた二倍の威力の『魔力衝撃波』を解放する。
 一度使ったことでそのまま使えば自分の方にも飛んでくるのがわかっていたので、しっかりと衝撃が俺には来ないようにして全ての衝撃を青灰眼に伝える。

 最低限の魔力で対処しようとした青灰眼は『二重・魔力衝撃波』の半分の威力、つまり『魔力衝撃波』一発分をもろに食らう。

「今だレンゲ!」
「……雷鳴よ、雷光は闇を焼き消し、万物の轟を示す」
「グゥ……」
「させるかぁ!」

 俺は残り魔力を全て使用し、青灰眼の顔から喉にかけて全てを『全能操』で包み、魔力の放射を限界まで遮断する。

「ワォォォォン!!」
「……『鬼電刻』!!」
「グルァァァ!?」

 その瞬間、俺達の視界は光に包まれ、轟音が耳を刺す。

 魔術を打ち消せなかった青灰眼の全身を雷が焼き滅ぼす。

「ガ、ガァ……グルァ……」

『レベルが上がりました。』
     :
     :
『『剣術』スキルが1上がりましました。』
『『全能操作』スキルが1上がりました。』
『アクティブスキル『剛腕』を入手しました。』
『アクティブスキル『瞬足』を入手しました。』
『パッシブスキル『危険感知』を入手しました。』
『称号『青灰眼の咆哮を聴きしもの』を手に入れました。』

 ズドンと音を立てて青灰眼は倒れる。確実に倒したことをステータスが教えてくれた。

「「「「グルルル……」」」」
「……消えろ」
「「「「きゅ、きゅ~~ん!?」」」」

 レンゲが最後に周りのグレーウルフを人睨みすると全て逃げざる。主が痛くなっている状態でレンゲに勝てるとは思ってないようだ。

「し、死ぬかと思ったぁ」
「……同じく」

 俺達は俺達は地面に座りみ、勝利を噛み締めるのであった。



 ♦♦♦♦♦

 ボスじゃありません(汗)

 『紋章斬りの刀伐者~ボロ刀を授かり無能として追放されたけど刀が覚醒したので好き勝手に生きます!~』という作品も投稿しています!ぜひ読んでみてください!






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