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第二章 旅立ち、それは出会いと目的
五十八話 ゴブリン
しおりを挟む「で、どうですか?私、役に立てるでしょう?」
「まぁ……一応、な」
「……無くても別にいい」
こればっかりは仕方ない。ゴブリン五匹程度なら俺たち二人どころかレンゲ一人で十分だろう。
わざわざ魔術を使うのは正直魔力の無駄というものだ。
「そ、そんな~……」
「障壁魔法が活躍するのは野宿の時や相手が強敵の時だからな。少なくとも今回のような小遣い稼ぎのような比較的簡単な依頼には向かないな」
「……ん、魔力の無駄」
「うう……それならあの力を……いや、爺やがダメって……」
サーナは項垂れてるか何かブツブツ言い出す。
そんなサーナを無視してレンゲが魔物の解体を始めたので俺も解体を始める。
「あ、解体ですか?それなら手伝えます!」
「そうか、ならそっちのゴブリンを頼む」
「了解です!」
「……魔石と耳だっけ?」
「ああ、左耳だ」
ゴブリンには殆ど解体して買い取って貰える部位はない。
オーク等はその肉が豚肉のようで美味しいと定評があるが、ゴブリンはどれだけ料理しても美味しくならず、唯一買い取って貰える魔石も屑魔石と呼ばれるぐらい小さくあまり需要がない。
耳は討伐確認の為に持って帰ることになっている。
それなら何故討伐依頼があるかと言うと、ゴブリンの繁殖能力にある。
前にも言ったがゴブリンはオークと並ぶ女の敵だ。
種族問わず女性を捕まえて巣に持ち帰り子供を産ませる。無理やりされた後から、生まれてゴブリンが成人かするまでが1ヶ月もかからない。
しかも同時に複数産まれることから、戦う力の無い小さな村が襲われ、数ヵ月後には百体以上のゴブリンの群れが出来上がっているなんて事例は以外に多く、どれだけ弱いとされていてもバカには出来ないのだ。
国は国を経営するので精一杯。それこそゴブリンが数百体の群れを成したり上位種の存在により国家の危機に陥らなければ本格的に対処はしない。
だからこそ俺たち冒険者が存在するのだ。
俺達は解体を終え、次のゴブリンを探す。
依頼の討伐数は十体。そしてもう一つ討伐依頼を受けているが、これはもう少し奥に行かなければ居ないだろう。
「う~ん、居ませんね」
「そうだな。さっきのギルドの状況を見てわかると思うが明らかにこの街にいる冒険者の人数が多い。浅い層の森では殆ど駆逐されてるかもな」
「……どの道行く」
「そうだな。確か『ホブゴブリン』だっけか……」
『ホブゴブリン』とはゴブリンの上位陣であり、ゴブリンより一回り大きく、魔力も身体能力も高いゴブリンだ。
稀にゴブリンの中に生まれ、その強さでゴブリンをまとめあげて群れを作る。
唯一ゴブリンより劣っているのは繁殖能力だけらしい。
因みに脳内異世界常識ブックはゴブリンの上位種ってことしか教えてくれない。
やはり常識だけのようだ。
ギルドにはそこら辺の事を調べることが出来る本が置かれており、それによるとゴブリンの上位種として『ナイトゴブリン』や『マジシャンゴブリン』『ゴブリンロード』などが存在する。
まぁ、『ロード種』と呼ばれる王の名を冠する魔物は数十年に一体生まれるかどうかなので出会うことは無いだろう。
魔物の気配はあまりしないが、一応警戒しながら俺達は森の奥に進むのだった。
「ひえっ!?なんだか急に森の感じが変わりました!」
「確かに、明らかに魔力の濃さが変わったな」
「……魔物の気配」
森の奥に進むにつれ、強い魔物の気配がどんどんするようになった。
今まで以上に警戒が必要だろう。
「この辺りから気配を消す魔物も出てくるらしい。油断するなよ」
「は、はい!」
「……大丈夫。……居た」
レンゲはそう言うと気配がしたであろう方向に指を指す。
俺達はレンゲの案内通りに気配を消しながら進むと、明らかにデカいゴブリンを発見する。
周りには十体ほど普通のゴブリンもおり、数匹で何か食事をしているようなので小さな群れなのだろう。
(情報によるとホブゴブリンがいる群れには石を投げたりする遠距離型も居るらしい。サーナ、一応自分の周りに障壁を貼っておいてくれ。レンゲはいつも通りで)
(了解です!)
(……ん)
そうして俺が合図するとレンゲは茂みから飛び出し、一番近くのゴブリンを切り飛ばす。
「……シッ!」
「「「グギャ?!」」」
「ギュガァァ!!」
やはり一番最初に気づき対応してきたのはホブゴブリン。
俺はホブゴブリンをレンゲに任せ、そのほかのゴブリンを対処することにする。
「はぁ!」
「グキャァ!?」
「ギャッ!ギャッ!」
突然現れた俺達を敵と認識し、キレた複数のゴブリンが飛びかかってくるが今更ゴブリン程度にはビビらない。
「斬鬼!!」
「はぁっ!」
「ギュガァァ!!」
飛びかかってくる二匹を俺とレンゲは倒す。
すると同時に飛んでくる石と近づいてきたホブゴブリンの攻撃の対処をしようとした時。
「……光の防壁よ、重なりて護をなし、迎え撃つは一撃『重覆障壁』!」
その瞬間、俺達と魔物の間に半透明の壁が現れる。
「「グギャ?!」」
「ギュガァァ!」
ホブゴブリンは知ったことでは無いと障壁を殴り付ける。
するとバリン!という音が成るが、よく見ると何枚にも重なった薄い障壁がホブゴブリンの攻撃の衝撃を打ち消し、飛んでくる石を防ぐ。
「今です!」
「!『魔力衝撃波』!!」
「……『鬼牙』!」
「「ギャギャ?!」」
「ギュガァァ!?」
近くにいたゴブリンを俺が『魔力衝撃波』で怯ませ、レンゲがホブゴブリンを斬る。
「……六式、『鬼進』!」
「「「ギャギャ?!」」」
レンゲが全力で身体強化したかと思うと、ほんの数秒で周りのゴブリンを切り飛ばしながら殲滅する。
「……『鬼瞬』!!」
そしてホブゴブリンの前に立つと一瞬の間を置いて目にも止まらぬ速さでホブゴブリンの首を飛ばす。
まさにレンゲの本気の動きだ。
「……ハァ、ハァ……ありがと」
「え!?ど、どういたしまして!」
どうやら、レンゲもサーナのことを少しは認めたようだ。
え?レンゲ強すぎじゃね?
♦♦♦♦♦
『紋章斬りの刀伐者~ボロ刀を授かり無能として追放されたけど刀が覚醒したので好き勝手に生きます!~』という作品も投稿しています!ぜひ読んでみてください!
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