本当にある事故物件の話

アカバネ

文字の大きさ
上 下
18 / 24
板橋区にある事故物件の話

憑依 ー あいつら一人ひとりに必ず地獄を見せてやる ー

しおりを挟む
 日笠千鶴ひかさちずるが自殺をほのめかしたところで、画面が消える。

 男の自分には想像する事しかできないが、17歳の女の子が複数人の男に無理やりレイプされる。

 それは死を選ぶのに、十分な理由となり得るだろう。

 …………

 そう考えていると、再び画面が付いた。

 椅子に座った日笠千鶴ひかさちずるの姿が映る。

「死ぬと決めてからは、どうやって死のうかって、ずっと考えていました。心療内科から飲みきれないほどの睡眠導入剤をもらっていましたので、オーバードーズがいいかなと思い至りました」

「ですが……いざ致死量の薬を机の上に並べると……怖くて、怖くて、震えが止まりませんでした」

「ああ……少し前までは、友達と放課後に寄り道して、人気のカフェでスイーツを食べて、気になる男の子の話をして、そんなありふれた、どこにでもいる普通の女子高生だったのに……どこで道を間違えたのでしょう」

「いつも優しいお母さん。泣き虫なお父さん。大好きなみさき

「怖いよ……死ぬのが怖いよ……」

 日笠千鶴ひかさちずるが両手で顔を覆い、嗚咽を漏らして泣きだした。

 「どうしても私は、薬を飲むことが出来ませんでした」

 …………

 「少し眠ろうと目を瞑りました。ですが眠りに落ちようとすると、必ずあの人たちの顔が脳裏に浮かび上がるんです。私をこんな目に合わせたケダモノ。佐藤と松岡と坂口の顔です」

 「今日も眠れない……部屋の天井を見つめながら、あの人たちは、今頃なにをしているのだろう……私はふとそう思いました。あれだけの事をやったのだ、今ごろ逮捕される恐怖に震えて、私と同じように眠れぬ夜を過ごしているかもしれない」

 「きっとそうだ……少しでもこの陰鬱な気持ちを晴らしたい、そんな一心であの人たちの事をSNSで調べることにしました」

 「Twitter。インスタグラム。Facebook。3時間くらいでしょうか、スマホで検索していたら坂口の『ツイート』にヒットしました。アイコンが坂口自身の顔写真でしたので、絶対に間違いありません。そこから色んな事が分かりました」

 「三人とも東京にある『有名私大Y大学の2年生』である事。大学内の『インカレサークル自由の扉』のメンバーである事。『三人とも恋人らしき人』がいる事」

 …………

 「私は怒りで気が触れそうになりました。信じられますか?あいつら私を犯した三日後にサークルのメンバーと海に行ってはしゃいでたんです……海で泳いで……スイカ割りをして……バーベキューをして……それが終わったら花火をして……あいつらの楽しそうな写真を見ていたら、何もかもが馬鹿馬鹿しくなってしまいました」

 「わたしがぁ、わたしがぁぁぁ、どれだけ苦しんだか分かりますかぁぁ」

 「クソがぁぁ、クソッ、クソッ、クソッ、クソッ、クソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 立ち上がり座っていた椅子を蹴り飛ばし、更に何度も何度も上から踏みつけて、怒りを露にする日笠千鶴ひかさちずる

 「死ねない……このままじゃ絶対に死ねない……そう思いました」

 「あいつら一人ひとりに必ず地獄を見せてやる、それまでは絶対に死ねない」

 「私はそう決意しました」

 …………

 僕も日笠千鶴ひかさちずると同じ意見だった。
 
 佐藤と松岡と坂口あいつらは、地獄に落ちるべき人間だと。

 …………
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

郷土伝承伝奇会

阿沙🌷
ホラー
ある男は語る――自分が幼いころに体験したことを。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

実体験したオカルト話する

鳳月 眠人
ホラー
夏なのでちょっとしたオカルト話。 どれも、脚色なしの実話です。 ※期間限定再公開

未明の駅

ゆずさくら
ホラー
Webサイトに記事をアップしている俺は、趣味の小説ばかり書いて仕事が進んでいなかった。サイト主催者から炊きつけられ、ネットで見つけたネタを記事する為、夜中の地下鉄の取材を始めるのだが、そこで思わぬトラブルが発生して、地下の闇を彷徨うことになってしまう。俺は闇の中、先に見えてきた謎のホームへと向かうのだが……

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...