本当にある事故物件の話

アカバネ

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板橋区にある事故物件の話

憑依 ー ビデオテープ ー

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 板橋区にあるマンモス団地。

 1969年(昭和44)に着工され3年間かけて落成、1972年(昭和47)に初の住民が入居した。

 都心に近いという立地条件から、当時は入居応募が殺到したというが、現在は老朽化が進み。

 空室ばかりだ。
 
 …………

「アカバネ、404号室の現地調査を頼む」車の中、コーヒーを飲みながら週刊誌を読んでいる親方。

「親方は来ないんですか?」と尋ねる。

「これも経験だアカバネ、一人で何でも出来るようにならないと、これからは大変だぞ」

「……分かりました」

 もっともらしい事をいっているが、この人はただサボりたいだけなのだ。

 うちの会社では、二人一組で現地調査をする事になっているが、最近ではほとんどの現地調査を僕一人で行っていた。

 まぁ僕も一人のほうが気楽だし、winwinってやつだな。

 「じゃあ行ってきます、何かあったら携帯に電話ください」

 「おう」と週刊誌から目を離さず、返事をする親方。

 僕は目的の404号室に向かう。

 …………

 最後に入居していたのは80過ぎのおじいさんで、その人が死んでから2年以上空室のまま。

 それに頭を抱えた依頼元とオーナー。

 仕方がないのでリフォームをしてから、大々的に入居募集の広告を打つ事にしたらしい。

 404号室に到着、PSパイプスペースを開き、中にあるキーBOXから部屋のカギを取り出す。

 鍵穴にカギを差し込みガチャリとカギを開け、扉を開く。
 
 …………

 若い女性が、首を吊って死んでいた……。

 …………
 
「ああああああ」僕はショックで腰が抜けてしまい、そのままへたり込んでしまった。

 首を吊った女性の足元には、遺書と1本のが置いてあった。

 僕は四つん這いになって、そろそろと女性の遺体に近づく、死後数日経っているのだろう、遺体からは強烈な腐敗の匂いがした。

「おええええ」込み上げる吐き気を堪えきれず、僕は部屋の真ん中で嘔吐した。

 涙目になりながら顔を上げると、遺書とが目に入る。

 遺書は分かる……がビデオテープは一体なんだ?

 見た感じ女性の遺体は17~22歳くらいに見える、その人が死の間際に用意したビデオテープ。

 中を見てみたい、僕はそう思ってしまった。

 間違いなく第一発見者は僕だ、このままビデオテープを持ち去っても、きっと誰も分からない。

 悪魔が僕に囁く、現金を盗るわけじゃない、盗るのはただのビデオテープだ。

 見た感じ女性の遺体は自殺のようだし、事件性も多分ないだろう……。

 「ごめんなさい」

 僕は女性の遺体に謝罪をしてから、ビデオテープをそっと、作業カバンの中にしまいこんだ。
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