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第四章 青年編

第六十三話 世界の全容

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 俺の目の前には、あの時死んだと聞かされたオリドさんがいた。

 「.....どうしてこんな所にいるんですか?」

 この人は死んだ筈だ。

 「そうじゃな。何処から話せばいいんじゃろうな。まずはここが何処かからかの。ここは冥界。死んだ者が来る場所じゃ」

 ......はい?

 俺って死んだのか?

 俺は戸惑いながらも聞いた。

 「......あの、俺って死んだんですか?」

 「死んだが一時的にじゃがな」

 さっぱり意味が分からない。

 何で俺が死んでるんだ?そんな疑問しか湧かない。

 俺の表情で分かったのか、オリドさんは話してくれた。

 案外難しい話だったので簡単にまとめるとこんな感じだ。

 俺が死んだのは獣人の森に行ったかららしい。

 それでは、なんで俺が死んだのか。

 その理由は、獣人の猫神、狼神、犬神との契約だったらしい。

 昔、獣人での縄張り争いが絶えなかったらしい。

 そこで、それを冥界から見ていたオリドさんは獣人同士で戦わせるのを見ていられなかった。

 それは獣人の神達も同じだった。

 なので冥界から抜けだし、獣人の神達と盟約を結んだらしい。

 一つ。獣人同士で争わない事。

 二つ。獣人同士で争った場合結界は解除するとの事。

 三つ。それを守れば、獣人を人族から守る。

 この三つだったらしい。

 それで獣人同士で争っていたその神達から同盟を結び互いに争わない事を誓った。

 皆には結界は獣人同士で争った場合に解けるということになったらしい。

 結界とは獣人に触り、その獣人と仲が良くなければ、普通に結界を素通り出来るが、獣人と触れていなかった者や、そのまま入ろうとした者は一度死んでしまい、ここで冥王の判決で入れるか決まるらしい。

 簡単に言うと、今の俺の状態は臨死のようなものだ。

 そして、冥王の判決で獣人に手を出さないと分かるものはそのまま通れるが、駄目だった場合、そのまま殺されるか、一生消えないようなトラウマを植え付けられるらしい。

 そのトラウマを植え付けた奴が、冥王と名付けて、いつの間にか三大最強になったらしい。

 なので、俺は獣人に触れていなかった為、ここに来てしまったらしい。

 「それで、俺は合格何ですか?」

 ちょっと緊張してしまう。

 これで駄目だった場合、俺そのまま殺されてしまうんだよな。

 「もちろん合格じゃが、リリアと付き合っておいて、他の女にも手を出しとるからの」

 オリドさんは俺をジト目で見ながら言った。

 俺は何も言い返せなかった。

 「冗談じゃよ。だがの、少し話をせんか」

 「俺も聞きたいことが山ほどあります」

 まず俺から聞いた。

 何で冥王であるあなたがあの村にいたのか。

 その他にも聞きたいことを聴くと、オリドさんはこれまでの事を全て話してくれた。

 冥王であるオリドさんは、今の世の中を見ることが出来るらしい。

 そして、オリドさんは戦争のない幸せな世の中を見てみたかった。

 だけど、それはいつまで経っても叶わなかった。

 そこで思い付いたらしい。

 自分自身が、平和な世界を作ればいいと。

 そう思ったオリドさんは自分の半身を冥王に置いて、この世に来たらしい。

 だけど、そこでオリドさんは実感する。

 今の自分自身の力では、どうすることも出来ないと。そう思ったオリドさんはお酒に憑りつかれたように飲みまくっていたらしい。

 そんな自分を助けてくれたのが、その飲み屋であった一人の女性だった。

 その女性と恋に落ち、そこで決めたらしい。

 この女性とだけでもいいから平和な暮らしをしたいと。

 オリドさんはそれから冥王の力を使って、森の中で村を作って、色んな人を紹介して皆で幸せに暮らし、娘も生まれた。

 だが、平和な生活は崩れ去った。

 オリドさんは、自分の嫁が死んでも何とか孫であるリリアがいたからこそ、頑張ろうと思えたらしい。

 だけど、平和で危ない事が近づいてくるのが分からなかった。

 そして、村は襲われオリドさんは、冥王の力を使う前に命を落としたというものだった。

 「あの時の自分をぶん殴ってやりたいよ」

 オリドさんは自嘲気味に笑いばがら言った。

 「あれは仕方が無かったと思います」

 あれを予測出来る人間なんていない筈だ。

 「今度はワシの話を聞いてくれ」

 「昔、巫女という女が二人おった。その二人は世界を変える力をも持っておった。その巫女は死ぬと同時に、その世界で見てきたものを全て、新しい巫女に移すという。その巫女である存在が一人、最近死んだんじゃ」

 「その巫女が死んだから何か起きるんですか?」

 オリドさんがわざわざ話すということは何かあるのだろう。

 「ああ。これから世界が滅びるかもしれん。滅びるというか誰かの手に渡ってしまうということじゃな」

 何か一気に話が急展開になった気はるが気にしている場合ではない。

 「どういうことですか?」

 「今世界が急激に変わろうとしているんじゃ。だからこそレイロード君にはお願いがある」

 「俺にお願いですか?」

 冥王直々にお願いなんて何だろう。

 「この世界を救ってくれ」

 話が飛躍しすぎて分かりません。

 「具体的にどうしたらいいんですか?」

 俺は具体的に聞かないと、どうしたらいいか分からない。

 「邪神を倒せば世界は平和に戻る。君は具体的に聞くのは嫌じゃろ?」

 何だ。簡単な事じゃないか。

 確かにその通りだ。

 それを聞けば、それは俺の力で見つけた物じゃない。

 「ええ。邪神を倒せばいいんでしょ?」

 俺は確認の為に聞いた。

 それにオリドさんは頷いた。

 「俺の目標はこの世界で最強になる事なんで、それは元から倒すべき存在ですから大丈夫ですよ」

 「やはり君ならそう言ってくれると信じていたよ」

 オリドさんは頷きながら笑顔で言う。

 俺達は、それから他愛もないリリアの事なので、話で盛り上がった。

 「そろそろ戻らんといけんの」

 「戻らなかったら、どうなるんですか?」

 「そのまま死ぬに決まっておるだろう」

 ですよね。

 「まあ、リリアもお前さんとお母さんがいるから多分大丈夫であろう」

 この人本当にリリアが好きだな。

 .......待て。

 俺は今聞き捨てならない事を聞いた気がする。

 「......ちょっと待ってください。リリアのお母さんってどういうことですか?」

 「どういうこととは?」

 逆に質問で返されてしまった。

 「リリアのお母さんがいるってどういうことですか?」

 「お前さん。聞いてないのか?」

 なんの事かさっぱり分からない。

 だけど、これは絶対に聞かなければならない気がする。

 「聞いていません。教えてください」

 俺は、リリアのお母さんは死んだとしか聞いていない。

 「リリアのお母さんであり、私の娘は生きておるぞ。しかも君の近くにな」

 俺が聞いたのは、以前盗賊に殺されたという話なんだが。

 「俺の近くって誰ですか?」

 「それは」

 そこで言われた名前に俺はこれまでにないぐらい驚いてしまった。

 「本当ですか?」

 「嘘を言ってどうすんじゃ」

 確かにその通りだ。

 それが本当ならば、どういうことなんだ。

 「そろそろ本当にやばそうだから君を返すぞ」

 「ああ。はい。分かりました」

 俺は、一応その事は後で考えることにした。

 今は明日の本選が大事だ。

 俺は改めて気を引き締め、元の世界に戻った。

 そうして目を覚ますと、俺の目の前にタマとミラさんがいた。

 「大丈夫ですか!?」

 ミラさんがそう言うが、身体の方はなんともない。

 「ごめんなさいニャ。言い忘れていたニャ」

 タマがそう謝ってくる。

 「大丈夫だ。次からは忘れるなよ」

 俺はタマにそう言って、タマの体を触って改めて、獣人の森に入った。

 だが、俺の頭の中では気を取り直した筈なのに、ずっとリリアのお母さんについて頭がいっぱいだった。

 だってあの時オリドさんは、アネットがリリアのお母さんと言ったのだから。
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