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11話 ローションは飲み物です
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「……ただいま」
かたつむりのように殻を背に背負っているような倦怠感を抱えながら家路につくと、ぱたぱたと走ってナナオが俺に、
「おかえりなさいっ」
抱き着いてきた。え、可愛い。
「遅かったね、大丈夫?顔色悪いけど」
「今元気になった、なにしてたの?」
「お部屋をお掃除したよ、あとお昼ご飯遅くなっちゃったけど作るね」
「……」
部屋を見ると、見違えるように綺麗になっていた。キッチンも、脱ぎっぱなしの服たちも、風呂もトイレも、窓も、廊下も。
「え、凄いな、え、一人でやったの?」
「うん、勝手に色々かまってごめんなさい」
「いや、全然いいよ、むしろありがとう」
なんということでしょう、1kの汚い独身男性の部屋が、きちんと片付けられて足の踏み場もあるし、キッチンの焦げや汚れも綺麗になっている。水場も綺麗になっているし、服は洗濯され、ベランダに干されている。
「ありがとう、ナナオ」
「幸彦くん、泣いているの?」
「いや……」
人間らしい部屋だと思った。今まで、家というのは帰ってきて寝るための場所だと思っていたから。そんな部屋にしてくれたのは、ナナオだ。愛おしい、俺ができなかったことを、こんな短時間でやってくれた。
「ありがとう、ナナオ」
俺は、またナナオを抱きしめた。
「手は洗ったし、幸彦くんが帰ってくると思って勝手に着替えちゃったから、よかったんだけど、ごめんね」
「え?」
ナナオは、抱きしめた俺を気遣ってくれたが、6月の暑さの中、外で汗だくで帰ってきた俺より掃除した自分が汚いんじゃないかと感じて謝ってくれていることに苦笑した。
「ご飯食べる?」
「うん!」
俺は、ナナオのお陰で清潔な部屋で、美味しいご飯を食べることができるようになった。夕方一緒に散歩をするようになって、ずっとバイト先と家の往復だった灰色の日々が少しずつ茜色に色づいているのを感じた。
外出する時には、ナナオには帽子とマスクをしてもらっているけれど。それは、ナナオがロボットだからではなく、近所で拾ってきたことがバレると色々厄介だと思ったからだ。
「就職決まったからさ、お金貯めたらいつかここを引っ越して、ここから離れたところで2人で暮らそう」
「……ありがとう、幸彦くん」
ナナオは、俺と繋いでる手に少し力を込めた。
「僕との未来を当たり前に、描いてくれてありがとう」
あまりにも、人間らしい言葉だった。当然だ、当たり前だ、俺の方こそ。色々な言葉が夕焼けのように浮かんではシャボン玉のように消えて、なんとか口を開いて言葉を紡いだ。
「こちらこそ」
俺は、ナナオのことをロボットとして扱うことをしない。ナナオは、恋人であり、家族だ。まあ、当然恋人なので夜はセックスをする。夕方の散歩から帰ってきて、夕飯を食べて、風呂に入って、その後は布団の上でいちゃいちゃして、なんとなくそういう雰囲気になる。
「ローションを買ってきてくれて、ありがとう幸彦くん」
「なにに使うの?」
「飲むんだ」
「え?」
ナナオは、ローションを赤ちゃんが哺乳瓶でミルクを飲むようにごきゅごきゅと飲み始めた。衝撃を受けている俺に対して、ナナオは真剣だった。
「え、ローションそうやって、飲む?え?」
「僕、おちんちんを口に含むと唾液のような液体が出る機能がついているんだけど、最近その機能もちょっと衰えてきて、ローションを飲むのが一番効率よく口の中で幸彦くんのおちんちんを気持ちよくできる気がする」
たまに、ナナオが自分で自分をロボットだというとき、俺は複雑な気持ちになる。言わないでというのも違うし、でも自分のことを説明している時のナナオは少し饒舌で可愛らしい。
「いいかな、幸彦くん」
「う、うん……」
ナナオは、立っている俺のズボンのチャックをおろして、ズボンを脱がすと、すでにテントをはっている俺のパンツを脱がした。
かたつむりのように殻を背に背負っているような倦怠感を抱えながら家路につくと、ぱたぱたと走ってナナオが俺に、
「おかえりなさいっ」
抱き着いてきた。え、可愛い。
「遅かったね、大丈夫?顔色悪いけど」
「今元気になった、なにしてたの?」
「お部屋をお掃除したよ、あとお昼ご飯遅くなっちゃったけど作るね」
「……」
部屋を見ると、見違えるように綺麗になっていた。キッチンも、脱ぎっぱなしの服たちも、風呂もトイレも、窓も、廊下も。
「え、凄いな、え、一人でやったの?」
「うん、勝手に色々かまってごめんなさい」
「いや、全然いいよ、むしろありがとう」
なんということでしょう、1kの汚い独身男性の部屋が、きちんと片付けられて足の踏み場もあるし、キッチンの焦げや汚れも綺麗になっている。水場も綺麗になっているし、服は洗濯され、ベランダに干されている。
「ありがとう、ナナオ」
「幸彦くん、泣いているの?」
「いや……」
人間らしい部屋だと思った。今まで、家というのは帰ってきて寝るための場所だと思っていたから。そんな部屋にしてくれたのは、ナナオだ。愛おしい、俺ができなかったことを、こんな短時間でやってくれた。
「ありがとう、ナナオ」
俺は、またナナオを抱きしめた。
「手は洗ったし、幸彦くんが帰ってくると思って勝手に着替えちゃったから、よかったんだけど、ごめんね」
「え?」
ナナオは、抱きしめた俺を気遣ってくれたが、6月の暑さの中、外で汗だくで帰ってきた俺より掃除した自分が汚いんじゃないかと感じて謝ってくれていることに苦笑した。
「ご飯食べる?」
「うん!」
俺は、ナナオのお陰で清潔な部屋で、美味しいご飯を食べることができるようになった。夕方一緒に散歩をするようになって、ずっとバイト先と家の往復だった灰色の日々が少しずつ茜色に色づいているのを感じた。
外出する時には、ナナオには帽子とマスクをしてもらっているけれど。それは、ナナオがロボットだからではなく、近所で拾ってきたことがバレると色々厄介だと思ったからだ。
「就職決まったからさ、お金貯めたらいつかここを引っ越して、ここから離れたところで2人で暮らそう」
「……ありがとう、幸彦くん」
ナナオは、俺と繋いでる手に少し力を込めた。
「僕との未来を当たり前に、描いてくれてありがとう」
あまりにも、人間らしい言葉だった。当然だ、当たり前だ、俺の方こそ。色々な言葉が夕焼けのように浮かんではシャボン玉のように消えて、なんとか口を開いて言葉を紡いだ。
「こちらこそ」
俺は、ナナオのことをロボットとして扱うことをしない。ナナオは、恋人であり、家族だ。まあ、当然恋人なので夜はセックスをする。夕方の散歩から帰ってきて、夕飯を食べて、風呂に入って、その後は布団の上でいちゃいちゃして、なんとなくそういう雰囲気になる。
「ローションを買ってきてくれて、ありがとう幸彦くん」
「なにに使うの?」
「飲むんだ」
「え?」
ナナオは、ローションを赤ちゃんが哺乳瓶でミルクを飲むようにごきゅごきゅと飲み始めた。衝撃を受けている俺に対して、ナナオは真剣だった。
「え、ローションそうやって、飲む?え?」
「僕、おちんちんを口に含むと唾液のような液体が出る機能がついているんだけど、最近その機能もちょっと衰えてきて、ローションを飲むのが一番効率よく口の中で幸彦くんのおちんちんを気持ちよくできる気がする」
たまに、ナナオが自分で自分をロボットだというとき、俺は複雑な気持ちになる。言わないでというのも違うし、でも自分のことを説明している時のナナオは少し饒舌で可愛らしい。
「いいかな、幸彦くん」
「う、うん……」
ナナオは、立っている俺のズボンのチャックをおろして、ズボンを脱がすと、すでにテントをはっている俺のパンツを脱がした。
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