不死身探偵不ニ三士郎

ガイア

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次にノックと共に現れたのは、若くて笑顔の爽やかな好青年だった。都市は20代くらいだろうか。

「失礼します、照道誠也(あきみちせいや)と申します。厨房で、4年目の22歳です」

 先ほどの伊藤の後の昭道だったので、雪知はほっとした様子でまた椅子を指した。
 若いのに礼儀正しく、常に笑顔だ。昭道という苗字から、番頭の樫杉がいっていたフロントの昭道の弟は彼のことなのだろう。

「話を伺いたいのは、最近この旅館で噂されている幽霊のお話と、8年前に行方不明になった柊さんについてです、昭道さんは、幽霊を見たというお話を伺っておりますが」

「はい、見ました……けど」

 入ってきたときのはきはきした印象から、急に歯切れが悪くなり雪知は首を傾けた。そもそも、8年前に行方不明になっている柊ゆらぎのことを、何故昭道弟は、柊だとわかったのだろうか。

「幽霊というのは、柊ゆらぎさんの幽霊でしたか?」

「さあ、僕は8年前の柊ゆらぎさんがどういう方ということは知りませんので」
「では、何故彼女の幽霊だと思ったんですか?」

「柴咲さんが、えっと柴咲さんというのは、ここでお掃除とか色々してくださっている80歳のおじいちゃんなんですけど……柊さんだと」

「……」

 樫杉の話によると、幽霊をみたのはレストランの近藤と、立川、そして昭道だけだと言っていた。あの樫杉が嘘をつくとは考えにくい。自分から依頼しておいて、言わなかった?雪知が考えを巡らせていると、不二三はまたがりがりメモを書きだした。

「柴咲さんは、柊さんを見た時なんて?」
「謝ってましたよ」
「謝る?」

「行方不明になった柊さんを見つけられなかったからなのかわからないですけど、謝ってました。でも、柴咲のおじいちゃん、結構ボケてきていてその日のこと話かけたんですけど、覚えていなかったんですよ」
「覚えていなかった?」

「はい、結構物忘れもひどくなってきて」

 だから、樫杉も見た人に入れなかった可能性はあるか?でも、どちらにしろ話を聞く必要があると雪知は、柴咲という名前をメモした。

「ありがとうございます」
「柊さんの事件については何も知りません、僕はまだ8年前だと高校生?とかだと思うので」

「そうですね、ありがとうございました」

 昭道はかなり有益な情報を話してくれたようだ。次にやってきたのは、近藤さんだった。
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