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誕生日までに結婚式を阻止?余裕じゃん、で、いつなの?
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次の日、お嬢の屋敷の辺りを通行人のフリをして視察にいった。
懐かしい屋敷は、お嬢がしばらくいなかったからか、少し廃れて見えた。
「何をしてるんだ」
「!!」
背後で声がした。怪しかったか?
「ハーネス」
「・・・ジェイドさん」
かつて同じ職場の先輩だったらしい人であり、お嬢を誘拐するのに協力してもらった人。そして、お嬢の父親の従者だった。
「ジェイドさん、オレジェイドさんに聞きたいことがいっぱいあるんですよ。どこかでお茶でもどうですか」
「勤務時間だ」
オレは、冷静に言い放つジェイドさんと対照的に冷静ではなかった。
「お嬢は元気ですか?」
「勤務時間だっていっただろう。質問には答えられない、だが――」
ジェイドさんは、ため息を一つついて言った。
「仕えている屋敷のご令嬢からお前に伝言だ」
伝言?まさか、アイツ――最期の言葉をこの人に託したんじゃ。
「誕生日までに絶対助けに来なさいこの天才誘拐犯、だそうだ」
天才誘拐犯だなんいぇ絶対思ってないだろ。
それより、誕生日ってなんだ?結構期間ありそうじゃないか。結構余裕なのか?
「誕生日に何があるんですか?そもそも誕生日はいつなんですか」
「来週のアリスお嬢さまの誕生日にアリスお嬢さまは結婚式をあげる」
「来週!?結婚式だあ!?」
「声が大きい」
アリスお嬢さまってだけでも違和感が凄いというのに、お嬢は来週誕生日で、結婚式をあげるってのか。嘘みたいな話だな。
「それで、助けに来なさいってことは何かその結婚式であるんですか」
「旦那さまが、結婚を決めてきたんだ」
旦那さまって、お嬢の父親か。
家のために、ってことだろうか。その為にお嬢を連れ戻そうとしたのか・・・。そして、連れ戻して、お嬢に無理やり結婚させようとしている。
だが、相手がよければお嬢も幸せなんじゃないだろうか。
「相手は、どんな人なんですか」
「ロリコンのおっさんだ」
ロリコンのおっさんと、そりゃ嫌だろうな。唾吐きかけてそうだ。
オレは、最初お嬢を売りに行ったときに出会った小太りでひげのはえた気持ち悪いおっさんを想像していた。
「ジェイドさんはどうしてこんなことをオレに教えてくれたんですか?」
「アリスお嬢さまに言われたんだ」
【あなた、あたしの仲間になりなさい】
【無理ですけど】
衝撃の事実を告げられたアリスは、一度は枕に顔をうずめていたがあの後食事に呼ばれ部屋に戻ると見せかけて主人が風呂に入っている間一人でいるジェイドに声をかけた。
【どうして?ハーネスの仲間になってあたしの仲間にはならないっていうの!?】
【ハーネスと手を組んだのも、旦那さまにアリスお嬢さまを旦那さまの言いつけ通り誘拐してくるためだ】
【あなた、どうしてお父さまなんかの下にいるわけ?】
【そんなこと、関係ないだろう・・・】
【あのクズ男の従者ってことはよっぽどのことをしてもらったんでしょうね?あたしのメイドたちはあたしから離れていったから。あんたのご主人さまの娘がお願いしてるのよ!ちょっとくらい聞いてくれたっていいでしょう?】
【あのねえ・・・】
【大丈夫、ここから出るのに協力しろなんて言わないわ。伝言を頼みたいの】
【ハーネスですか】
【えぇ・・・あたしが頼れるのってもうあの誘拐犯しかいないのよ、勝手に出て行って、連れてこられて、助けてくれなんて虫が良すぎることはわかっているわ。ハーネスだって、もうあたしのことなんて諦めちゃってるかもしれない、あたしがこうして最大のピンチだってことさえ知らないかもしれない、だから、あたしの今の状況を、ハーネスに伝えてきてほしいの。ハーネスに伝えてくれるだけで協力とかはしなくていいわ、お願い。あなたの忠義を尽くしている旦那さまの娘がいってるのよ】
ジェイドは、ハーネスと同様孤児院で生まれ、殺し屋をしていた。ハーネスが抜けたあとも殺し屋を続けていたが、任務に失敗して死んだと思われていた。
そんなところを、拾ってくれたのがフォーデンハイド家の主人、アリスの父親だった。
命の恩人と慕っていたジェイドだったし、子供を本当にかわいがり優しい主人に幸せを感じていたジェイドだったが、アリスの件で疑問が生まれていた。
これが理想の父親像だと思っていた家族に憧れていたジェイドにとって、『もう1人の娘を誘拐してくれ』なんて言葉をききたくなかったのだ。
【あなた、いってたわよね。あたしのこと可哀想って!可哀想なら伝言くらい伝えてくれてもいいでしょう!?本当に助けにくるかは賭けかもしれないけど】
【でも、アリスお嬢さまは必ず助けにくるという確信があるような顔をしていらっしゃいますが】
【そんなわけないでしょ?・・・そうだったらいいなってだけよ。あたしの切り札にして最大の策、ハーネスに助けてもらう作戦!】
ジェイドは、思った。あの孤児院から出てきて死ぬような思いをして殺し屋になって、仲間を殺したハーネスがこのアリスお嬢さまをわざわざ助けになんてくるのだろうか?
椅子と縄を買い、俺が声をかけたときは自殺しようとしていた男だぞ。
だが、目の前のお嬢さまは、お金に困っている、恩返ししたい人がいるからお金がほしいと自分を売り飛ばすために誘拐した誘拐犯が、助けにくると信じているようだ。
【くすっ・・・】
【な、なによ】
なんとおかしな関係性だろう。
ジェイドは口元を押さえて笑うと、言った。
【いいえ、なんでもないです】
「お嬢の誕生日であり、来週にの結婚式までに、いや結婚式中にでも、誘拐しないといけないってことですね」
全然時間がないじゃないか!!
オレは、焦ってポケットに入れた先ほどもらった連絡先を握りしめていた。
懐かしい屋敷は、お嬢がしばらくいなかったからか、少し廃れて見えた。
「何をしてるんだ」
「!!」
背後で声がした。怪しかったか?
「ハーネス」
「・・・ジェイドさん」
かつて同じ職場の先輩だったらしい人であり、お嬢を誘拐するのに協力してもらった人。そして、お嬢の父親の従者だった。
「ジェイドさん、オレジェイドさんに聞きたいことがいっぱいあるんですよ。どこかでお茶でもどうですか」
「勤務時間だ」
オレは、冷静に言い放つジェイドさんと対照的に冷静ではなかった。
「お嬢は元気ですか?」
「勤務時間だっていっただろう。質問には答えられない、だが――」
ジェイドさんは、ため息を一つついて言った。
「仕えている屋敷のご令嬢からお前に伝言だ」
伝言?まさか、アイツ――最期の言葉をこの人に託したんじゃ。
「誕生日までに絶対助けに来なさいこの天才誘拐犯、だそうだ」
天才誘拐犯だなんいぇ絶対思ってないだろ。
それより、誕生日ってなんだ?結構期間ありそうじゃないか。結構余裕なのか?
「誕生日に何があるんですか?そもそも誕生日はいつなんですか」
「来週のアリスお嬢さまの誕生日にアリスお嬢さまは結婚式をあげる」
「来週!?結婚式だあ!?」
「声が大きい」
アリスお嬢さまってだけでも違和感が凄いというのに、お嬢は来週誕生日で、結婚式をあげるってのか。嘘みたいな話だな。
「それで、助けに来なさいってことは何かその結婚式であるんですか」
「旦那さまが、結婚を決めてきたんだ」
旦那さまって、お嬢の父親か。
家のために、ってことだろうか。その為にお嬢を連れ戻そうとしたのか・・・。そして、連れ戻して、お嬢に無理やり結婚させようとしている。
だが、相手がよければお嬢も幸せなんじゃないだろうか。
「相手は、どんな人なんですか」
「ロリコンのおっさんだ」
ロリコンのおっさんと、そりゃ嫌だろうな。唾吐きかけてそうだ。
オレは、最初お嬢を売りに行ったときに出会った小太りでひげのはえた気持ち悪いおっさんを想像していた。
「ジェイドさんはどうしてこんなことをオレに教えてくれたんですか?」
「アリスお嬢さまに言われたんだ」
【あなた、あたしの仲間になりなさい】
【無理ですけど】
衝撃の事実を告げられたアリスは、一度は枕に顔をうずめていたがあの後食事に呼ばれ部屋に戻ると見せかけて主人が風呂に入っている間一人でいるジェイドに声をかけた。
【どうして?ハーネスの仲間になってあたしの仲間にはならないっていうの!?】
【ハーネスと手を組んだのも、旦那さまにアリスお嬢さまを旦那さまの言いつけ通り誘拐してくるためだ】
【あなた、どうしてお父さまなんかの下にいるわけ?】
【そんなこと、関係ないだろう・・・】
【あのクズ男の従者ってことはよっぽどのことをしてもらったんでしょうね?あたしのメイドたちはあたしから離れていったから。あんたのご主人さまの娘がお願いしてるのよ!ちょっとくらい聞いてくれたっていいでしょう?】
【あのねえ・・・】
【大丈夫、ここから出るのに協力しろなんて言わないわ。伝言を頼みたいの】
【ハーネスですか】
【えぇ・・・あたしが頼れるのってもうあの誘拐犯しかいないのよ、勝手に出て行って、連れてこられて、助けてくれなんて虫が良すぎることはわかっているわ。ハーネスだって、もうあたしのことなんて諦めちゃってるかもしれない、あたしがこうして最大のピンチだってことさえ知らないかもしれない、だから、あたしの今の状況を、ハーネスに伝えてきてほしいの。ハーネスに伝えてくれるだけで協力とかはしなくていいわ、お願い。あなたの忠義を尽くしている旦那さまの娘がいってるのよ】
ジェイドは、ハーネスと同様孤児院で生まれ、殺し屋をしていた。ハーネスが抜けたあとも殺し屋を続けていたが、任務に失敗して死んだと思われていた。
そんなところを、拾ってくれたのがフォーデンハイド家の主人、アリスの父親だった。
命の恩人と慕っていたジェイドだったし、子供を本当にかわいがり優しい主人に幸せを感じていたジェイドだったが、アリスの件で疑問が生まれていた。
これが理想の父親像だと思っていた家族に憧れていたジェイドにとって、『もう1人の娘を誘拐してくれ』なんて言葉をききたくなかったのだ。
【あなた、いってたわよね。あたしのこと可哀想って!可哀想なら伝言くらい伝えてくれてもいいでしょう!?本当に助けにくるかは賭けかもしれないけど】
【でも、アリスお嬢さまは必ず助けにくるという確信があるような顔をしていらっしゃいますが】
【そんなわけないでしょ?・・・そうだったらいいなってだけよ。あたしの切り札にして最大の策、ハーネスに助けてもらう作戦!】
ジェイドは、思った。あの孤児院から出てきて死ぬような思いをして殺し屋になって、仲間を殺したハーネスがこのアリスお嬢さまをわざわざ助けになんてくるのだろうか?
椅子と縄を買い、俺が声をかけたときは自殺しようとしていた男だぞ。
だが、目の前のお嬢さまは、お金に困っている、恩返ししたい人がいるからお金がほしいと自分を売り飛ばすために誘拐した誘拐犯が、助けにくると信じているようだ。
【くすっ・・・】
【な、なによ】
なんとおかしな関係性だろう。
ジェイドは口元を押さえて笑うと、言った。
【いいえ、なんでもないです】
「お嬢の誕生日であり、来週にの結婚式までに、いや結婚式中にでも、誘拐しないといけないってことですね」
全然時間がないじゃないか!!
オレは、焦ってポケットに入れた先ほどもらった連絡先を握りしめていた。
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