22 / 29
勘弁してよお父さま
しおりを挟む
あたしのこの恰好を見ても、笑顔だわ。
「よく帰ってきてくれたな」
お父様は、にっこりと微笑んだ。
「ええ、帰ってきたというか拉致誘拐されたようなお迎えだったけど」
皮肉をいってもお父様は、笑顔のままだった。
さっきあたしを連れてきていた男はいなくなっているわ。
あたしとお父様の二人きり。でも、なんなのこの胸騒ぎ。とても親子で会話をする雰囲気ではないわ。
「誘拐されてから心配していたんだよ、アリス」
「本当?」
「本当さ、そんな恰好になって、余程酷い扱いを受けてきたんだろう」
「別に、そうでもないわ」
顔を背けると、お父様はソファから腰をあげてゆっくりあたしに近づいてきた。
あたしは、なんだかお父様のことが怖くて後ずさった。
「そうだ、貞操は奪われていないかい?」
「ひっ!?」
なんてことを実の娘に聞くのだろう。保健体育の授業で習ったことがある。
「そ、そんなわけないでしょ!」
「そうか、そうか、それはよかった」
お父様は、うんうんと頷いて腕を組んだ。
「傷物にされていたらどうしようと思ったんだ」
お父様は、あたしのことを真剣に心配してくださっている?だから直球でこんなことを聞いてきたってこと?
「髪はなんとか整えればいいとして、ドレスも。そうだね、後はその品のない喋り方をなんとかしなくては」
お父様は、あたしをまじまじ見ながら一人でぶつぶつ話し始めた。
「どういうこと?何をいっているの?」
「何って、アリス。君は来週誕生日を迎えるだろう。だから、グランデイ家のアンデイ氏と結婚するんだよ」
「結婚!?」
あたしは突然のことで頭が真っ白になった。あたしまだ16よ?17の誕生日を迎えたと同時に結婚ですって!?しかも顔も知らない男と!?そんなの急に言われても困るに決まってるわ!
「そんなの、無理に決まってるでしょ!?冗談やめてよ、お父さま」
あたしは、必死に笑顔を作ってお父様に呼び掛けた。
でも、お父様は真剣な表情であたしを見つめていた。
「冗談なわけないだろう?その為にアリスを連れ戻させたのだから」
「どういうことよ!いやよ!そんなの!ねえ、お父さま」
「アリスは知らなくていいことだよ、まあ何をいっても、誕生日には結婚するように手数は済ませ中なんだけれどね、明日相手方との顔合わせがある。阻喪することのないようにね」
お父様は、机の上の銅鐘をちりんと鳴らした。
すると、さっきの男が入ってきてあたしの腕を掴んだ。
「部屋に連れて行ってくれ」
「承知いたしました」
「ちょっと!離しなさい!まだお父さまとの話が終わっていないのよ!」
あたしが暴れるからか、男はあたしを持ち上げ肩に担ぎ上げて部屋を後にした。
その後もじたばた暴れたけど、男の力は強くて逃げられない。
「ねえ、どういうこと!?あたしはどうしていきなり結婚しないといけないわけ!?」
男に聞いても男は答えない。
それどころか無視、あたしは肩をぽかぽか蹴ったけどそれも無視。
「説明してよ!こんなの納得いかないわよ!」
前方、廊下を、見覚えのある人が歩いてくる。
そう叫んだあたしと、廊下を歩いているお母様との目が合った。
お母様は、あたしと目が合ったのに見て見ぬふりをするように俯いてしまった。
「お母さま!ねえ!これはどういうことなの!?」
あたしが叫んだけど、お母さまは俯いたままだった。
「ねえ!お母さま!」
「仕方ないじゃない」
お母様は、ようやく絞り出したみたいに言葉を吐いてあたしを振り返った。
「仕方ないのよ、あなたしか・・・いないんだから」
あたししかいない?どういうこと?
あたしはますます謎が深まり、そしてあたしに背を向けて歩いてしまったお母様の姿をすがるような目で見つめた。でも、母様があたしを振り返ってくれることは、なかった。
「大人しくなったな」
男は、だらんと身を預けているあたしにやっと話しかけてきた。
「・・・・・・・・・」
あたしは、言葉を返す気力がなくてそのまま俯いていた。
「ハーネスは元気だったか?」
「・・・どうして」
あたしは、その名前がどこか懐かしい気さえして涙が出そうになった。
「ちょっとした仕事仲間だったからな、あんたがこうなったのは1割くらい俺の責任でもある。可哀想だから、話してやるよ」
「・・・え?」
「どうしてこんなことになったのか、どうして俺がハーネスのことを知っているのか」
男は、あたしを部屋へと連れてきてどすんとベットに落とすと、あたしの頭がおかしくなるような衝撃の事実を語りだした。
「そもそも、君を誘拐したのは、俺とハーネスの2人なんだ」
「よく帰ってきてくれたな」
お父様は、にっこりと微笑んだ。
「ええ、帰ってきたというか拉致誘拐されたようなお迎えだったけど」
皮肉をいってもお父様は、笑顔のままだった。
さっきあたしを連れてきていた男はいなくなっているわ。
あたしとお父様の二人きり。でも、なんなのこの胸騒ぎ。とても親子で会話をする雰囲気ではないわ。
「誘拐されてから心配していたんだよ、アリス」
「本当?」
「本当さ、そんな恰好になって、余程酷い扱いを受けてきたんだろう」
「別に、そうでもないわ」
顔を背けると、お父様はソファから腰をあげてゆっくりあたしに近づいてきた。
あたしは、なんだかお父様のことが怖くて後ずさった。
「そうだ、貞操は奪われていないかい?」
「ひっ!?」
なんてことを実の娘に聞くのだろう。保健体育の授業で習ったことがある。
「そ、そんなわけないでしょ!」
「そうか、そうか、それはよかった」
お父様は、うんうんと頷いて腕を組んだ。
「傷物にされていたらどうしようと思ったんだ」
お父様は、あたしのことを真剣に心配してくださっている?だから直球でこんなことを聞いてきたってこと?
「髪はなんとか整えればいいとして、ドレスも。そうだね、後はその品のない喋り方をなんとかしなくては」
お父様は、あたしをまじまじ見ながら一人でぶつぶつ話し始めた。
「どういうこと?何をいっているの?」
「何って、アリス。君は来週誕生日を迎えるだろう。だから、グランデイ家のアンデイ氏と結婚するんだよ」
「結婚!?」
あたしは突然のことで頭が真っ白になった。あたしまだ16よ?17の誕生日を迎えたと同時に結婚ですって!?しかも顔も知らない男と!?そんなの急に言われても困るに決まってるわ!
「そんなの、無理に決まってるでしょ!?冗談やめてよ、お父さま」
あたしは、必死に笑顔を作ってお父様に呼び掛けた。
でも、お父様は真剣な表情であたしを見つめていた。
「冗談なわけないだろう?その為にアリスを連れ戻させたのだから」
「どういうことよ!いやよ!そんなの!ねえ、お父さま」
「アリスは知らなくていいことだよ、まあ何をいっても、誕生日には結婚するように手数は済ませ中なんだけれどね、明日相手方との顔合わせがある。阻喪することのないようにね」
お父様は、机の上の銅鐘をちりんと鳴らした。
すると、さっきの男が入ってきてあたしの腕を掴んだ。
「部屋に連れて行ってくれ」
「承知いたしました」
「ちょっと!離しなさい!まだお父さまとの話が終わっていないのよ!」
あたしが暴れるからか、男はあたしを持ち上げ肩に担ぎ上げて部屋を後にした。
その後もじたばた暴れたけど、男の力は強くて逃げられない。
「ねえ、どういうこと!?あたしはどうしていきなり結婚しないといけないわけ!?」
男に聞いても男は答えない。
それどころか無視、あたしは肩をぽかぽか蹴ったけどそれも無視。
「説明してよ!こんなの納得いかないわよ!」
前方、廊下を、見覚えのある人が歩いてくる。
そう叫んだあたしと、廊下を歩いているお母様との目が合った。
お母様は、あたしと目が合ったのに見て見ぬふりをするように俯いてしまった。
「お母さま!ねえ!これはどういうことなの!?」
あたしが叫んだけど、お母さまは俯いたままだった。
「ねえ!お母さま!」
「仕方ないじゃない」
お母様は、ようやく絞り出したみたいに言葉を吐いてあたしを振り返った。
「仕方ないのよ、あなたしか・・・いないんだから」
あたししかいない?どういうこと?
あたしはますます謎が深まり、そしてあたしに背を向けて歩いてしまったお母様の姿をすがるような目で見つめた。でも、母様があたしを振り返ってくれることは、なかった。
「大人しくなったな」
男は、だらんと身を預けているあたしにやっと話しかけてきた。
「・・・・・・・・・」
あたしは、言葉を返す気力がなくてそのまま俯いていた。
「ハーネスは元気だったか?」
「・・・どうして」
あたしは、その名前がどこか懐かしい気さえして涙が出そうになった。
「ちょっとした仕事仲間だったからな、あんたがこうなったのは1割くらい俺の責任でもある。可哀想だから、話してやるよ」
「・・・え?」
「どうしてこんなことになったのか、どうして俺がハーネスのことを知っているのか」
男は、あたしを部屋へと連れてきてどすんとベットに落とすと、あたしの頭がおかしくなるような衝撃の事実を語りだした。
「そもそも、君を誘拐したのは、俺とハーネスの2人なんだ」
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない
おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。
どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに!
あれ、でも意外と悪くないかも!
断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。
※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……
希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。
幼馴染に婚約者を奪われたのだ。
レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。
「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」
「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」
誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。
けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。
レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。
心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。
強く気高く冷酷に。
裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。
☆完結しました。ありがとうございました!☆
(ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在))
(ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9))
(ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在))
(ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
私はただ一度の暴言が許せない
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
厳かな結婚式だった。
花婿が花嫁のベールを上げるまでは。
ベールを上げ、その日初めて花嫁の顔を見た花婿マティアスは暴言を吐いた。
「私の花嫁は花のようなスカーレットだ!お前ではない!」と。
そして花嫁の父に向かって怒鳴った。
「騙したな!スカーレットではなく別人をよこすとは!
この婚姻はなしだ!訴えてやるから覚悟しろ!」と。
そこから始まる物語。
作者独自の世界観です。
短編予定。
のちのち、ちょこちょこ続編を書くかもしれません。
話が進むにつれ、ヒロイン・スカーレットの印象が変わっていくと思いますが。
楽しんでいただけると嬉しいです。
※9/10 13話公開後、ミスに気づいて何度か文を訂正、追加しました。申し訳ありません。
※9/20 最終回予定でしたが、訂正終わりませんでした!すみません!明日最終です!
※9/21 本編完結いたしました。ヒロインの夢がどうなったか、のところまでです。
ヒロインが誰を選んだのか?は読者の皆様に想像していただく終わり方となっております。
今後、番外編として別視点から見た物語など数話ののち、
ヒロインが誰と、どうしているかまでを書いたエピローグを公開する予定です。
よろしくお願いします。
※9/27 番外編を公開させていただきました。
※10/3 お話の一部(暴言部分1話、4話、6話)を訂正させていただきました。
※10/23 お話の一部(14話、番外編11ー1話)を訂正させていただきました。
※10/25 完結しました。
ここまでお読みくださった皆様。導いてくださった皆様にお礼申し上げます。
たくさんの方から感想をいただきました。
ありがとうございます。
様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、
今後はいただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。
申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。
もちろん、私は全て読ませていただきます。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます
おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。
if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります)
※こちらの作品カクヨムにも掲載します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる