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バケツと寝てる誘拐犯

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「・・・?」

私は、高く汚い窓から指すこむ朝日で目を覚ました。

「いた・・・」

背中が痛かった。
ボロソファに寝かせられていたらしい。最悪の目覚めね。
額が少し重かったので額に手を当てたら、少し濡れた布が乗っかっていた。

「なによこの汚い布は」

今まで生きてきた中で一番の目覚めだわ。

「そういえばあたし・・・」

誘拐されたんだったわ!!
そして、ここは誘拐犯の家。ボロ家、汚いボロ家!!
体の上に乗っかっているボロ布をはがして起き上がる。
ったく、アイツはどこに。

いた。ソファの下、汚い床に座ってソファにもたれかかって寝ている男。
コイツ、コイツよ。めちゃくちゃなヤツ。あたしを誘拐して、夜の町に売り払おうとしたサイテーな男。
隣には銀色のバケツ。何でコイツ水の入ったバケツと一緒に寝てるわけ?

「何でコイツ、床で寝てるの?っていうか、あれ?私昨日帰ってきてからどうしたんだっけ」

頭を押さえてゆっくり思い出そうとする。

「確か・・・あたし、昨日は疲れて、帰ってきて床でそのまま寝ちゃって」

『おい、おい、大丈夫か』
あれ・・・何。コイツ、何でそんなに必死に私に呼び掛けて・・・。
あたし、そういえば昨日は、確か帰ってきたら急に意識がなくなって。少しずつ思い出してきた。

「んあー」

「ひっ!」

あくびをして大きくのびをする男は、おしりをさすりながらゆっくりこっちを見た。

「あっ、起きたか?」

男は、朝日を浴びながらあたしに眠そうに笑いかけた。

「熱はもう下がったのか」

「熱?」

「覚えてないのか、あのなあ、お前昨日帰ってきて早々倒れたんだぞ。オレがどれだけ苦労したと思っているんだよ」

男は、眉をひそめて私の顔を覗き込んだ。

「あんた、あたしを看病してくれたっていうの?」

「ああ、当たり前だろ」

男は、ゆっくり立ち上がった。

「全く、心配かけさせるなよな」

男は、そういって立ち上がった。

「そう・・・、ね、ねえ」

「あ?」

振り返った男に、あたしは精一杯の笑顔で微笑んだ。

「あなた、名前は?」

「オレ?オレは、ハーネスだけど、いきなりなんだよ」

「そう、私はアリス。アリス・フォーデンイド」

私は、精一杯の笑顔で微笑んだ。

「ハーネス」

「あんだよ、礼はいらないぞ」

「礼なんていうわけないでしょ?バカなの?誰のせいでこんなことになってると思ってんのよ、ねえ、何でそんな上からなわけ?あたしを看病したのだって私を売るためでしょうが!!」

『おい、おい、大丈夫か』
あれ・・・何。コイツ、何でそんなに必死にあたしに呼び掛けて・・・。
あたし、そういえば昨日は、確か帰ってきたら急に意識がなくなって。少しずつ思い出してきた。
『おい、おい、大丈夫か、なんてこった、大事な商品だってのに』
朦朧とした意識の中、コイツはバタバタと部屋をうるさく走り回り、あたしを看病していたっけ。
あたしは商品だから。

「そうだが」

さらりと答えたハーネスに、あたしは歯をぎりぎり噛み締めて睨みつけた。

「さあ、元気になったなら今日も町へ出るぞ」

ハーネスは、病み上がりのあたしに笑顔で縄を持ってきた。

「いやよ!!もう売りに行かれるのは嫌!!他の人を誘拐してきて売ればいいでしょ!お金が欲しいならあたしじゃなくてもいいじゃない!!」

「お前、他の人を誘拐してこいなんてよく言えるな、性格悪すぎだろ」

ハーネスは、誘拐犯のくせにドン引きしていた。

「誘拐するのだって大変なんだからな、お前みたいな上玉はまたどこで見つかるかもわからないし、お金も準備もかかるんだ。簡単に誘拐してこいなんて言うな!!」

何であたしが怒られてんのよ!!

「我儘言うな、大人しく来い」

「いーーーやーーーーー」

あたしは、ハーネスから逃れるために部屋をじたばた走り周り、泣きわめいていたけど、ここでふと気が付いた。
出入り口には、外には出られないように無駄にこの家にそぐわない立派なダイヤル式南京錠がかかっていてここからは出られない。
そうだわ。あたしは、自分の立場を利用してハーネスから逃げる方法を思いついた。

「?どうした、いきなり立ち止まって」

「行きましょう、外に」

「情緒不安定か、お前は」
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