悪役令嬢を誘拐したら身代金を断られたので大喧嘩しながら同棲中

ガイア

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気持ち悪いおっさんとの出会いそして別れ

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「いらっしゃい、いらっしゃい」

暴れているコイツに頭を殴られ、顔をひっかかれ、すねを蹴られたオレは、ぼろぼろのまま市場に立っていた。
お嬢は、首に犬のように縄をつけて、目と口をふさぎ、椅子に縛り付けている。

「んーーーー!!!んーーーんーーーーーー!!」

のにまだ暴れている。
がたがた暴れるコイツと、傷だらけのオレを見て道行く人たちは、自分には手に負えない猛犬を売る男を見る目で見ていく。

「綺麗な髪と、綺麗な眼をしていますよー」

ぼさぼさに乱れた髪に、目にはぼろ布が巻かれている。
が、コイツを誉めていかないと売れないわけで。

「あとは、えーっと、顔がいいです、それから・・・声も可愛いです!それから・・・」

全部封じ込められているわけだが。
クソッ、いつもガキを誘拐してバイヤーに渡せばよかったから、どうしたらいいのかさっぱりだ。

「おい」

しばらくして、おひげが立派でプライドの高そうな小太りの男が現れ、声をかけてきた。

「はい!!」

「彼女の美しいという目と声を聞かせてほしいのだが」

「あ、え・・・は、はい!!」

男は、下卑た目で令嬢を上から下まで査定するように眺めていた。

男の後ろには、強そうなボディガードが控えており、オレの風貌を見て明らかに怪しんでいた。お嬢も髪は乱れ、ボロボロである。
でも、整えようとすると暴れるのだから無理だった。

「アンドル様」

「はは、大丈夫だ、なぁに、調教甲斐のありそうな娘じゃあないか」

舌なめずりをしながら期待に満ちた目で見ている男に寒気を覚えながらオレはお嬢にゆっくり近づいた。
暴れつかれて肩を落としてぐったりしている令嬢の様子を見て、これなら大丈夫だろうとオレは判断した。

「ちょ~っと待っててくださいね」

オレは、極力お嬢を刺激しないようにそっと目と口の布を外した。
お嬢は、ぐったりと俯いていた。オレは、ライオンを起こさないようにそーっと離れた。

「ほうら、顔を上げて」

オレは、できるだけ優しく彼女に声をかけた。
小太りの男は、悠々とお嬢に近づき、その端正な顔を眺めようとした。

「プッ」

「いやああああああああああああああああああああああ!!」

オレは、思わず叫んだ。
このアマ、お客様に唾を吐きかけたのだ。

「なに、この気持ち悪いおっさん。それより早くあたしを離しなさい」

ヤッチャッタ。
オワッタ。

気持ち悪いおっさんは、俯いて震えていた。
頼む、おっさん調教甲斐というのは「ドS」に調教甲斐がありそうって意味であってくれ。今のもご褒美だっていってくれ。
オレは、心底神に願った。

「ワシは、Sじゃ・・・」

Sだった・・・もうやだ何でSなんだよ、豚みたいな見た目してるくせによオ!!
男は、ぷるぷると震えながら俯いていた。

「おい」

「はい」

ボディガードらしき男がぽきぽき指を鳴らしながら近づいてきた。

「いやあああああああああああああああああ助けて!!」

オレは、お嬢の後ろに隠れた。

「こっちのセリフよ!ふざけんじゃないわよ!!」

「お前みたいなヤツを買ってくれるだけありがたいと思えよ!!」

「なんですって!!」

「覚悟はいいだろうな」

ボディガードはすぐそこまで来ていた。
オレは、咄嗟にお嬢を縛り付けている椅子を持ち上げて盾にした。

「きゃあああああああああああああああ!!な、なにすんのよ。ねえ!!なにすんのよ!!」

令嬢は、椅子に乗ったままだから普通に重いし迷惑だった。でも、これしか今オレが身を守るものはなかった。

「おらあああああああああ!!」

「いやあああああああああああああああああああ!!」

オレは、力を振り絞り精一杯椅子を振り上げた。

「ちょ、ちょちょちょっと!!ちょっと待ちなさいよ!!あんた頭おかしいんじゃないの!?」

オレは、お嬢の乗っかった椅子を威嚇するように振り上げ、2度振り回した。男を庇おうとボデイガードは、前に立つ。
そのままボデイガードと男の横を突っ切ろうとした。ボデイガードがオレを止めようと立ちふさがったが、拳を振り上げるのを躊躇した。

女を殴れないタイプのヤツか。

オレは、椅子の右前足をボデイガードの股間に突き上げそのまま逃走した。

「あんた、最低ね」

路地裏を椅子と共にお嬢を抱えながら走るオレに、酷く冷たい声が返ってきた。

「おいおい、オレはお前を助けてやった命の恩人だっつの」

「人を変態に売り払おうとしていたくせに、何が恩人よ」
目立つので途中お嬢の縄を解いて椅子から解放した。
空はすっかり暗くなっていた。

「いいの?こんなことして、逃げるわよあたし」

「逃げろ逃げろ、だが、こんな夜に逃げてみろ。それこそさっきの男に・・・そうだ!」

今は夜、コイツを売りさえすればいいんだ。
もうオレはコイツを既に手放したくなっていた。コイツといるとろくなことがない。オレは、素早くお嬢を拘束し、また椅子に縛り付けた。

「ねえ!?なんで!?」

「しっ、騒ぐな」

オレは、またお嬢の目と口に布を巻きつけ闇へと落とし込むと、人目につかない裏ルートを使ってまた歩き始めた。
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