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救ってもらいました

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「ハッ!!!」

目がさめると泣いている理沙、私の顔を安心しているように覗き込んでいる八木杉と、あ、生きてたんだ。って顔で私を見下ろしている総司がいた。

「ここは...」

「灰子ちゃんは...溺れた男の子を助けたんだよ!」

「私が...」

理沙が、私の手を握って泣いている。
助けた...あぁ、あのガキを。助かったの。

「そう...」

「ありがとうございます!ありがとうございます!」

迷子の子供を探して欲しいと言っていた見知らぬ母親は私に頭を下げてお礼を言っていた。
助かったガキも、私の顔を見て微笑んだ。

「ありがとう...お姉ちゃん」

「...あぁ」

私は、溺れているガキを助けて、そのガキが、迷子だったガキだったのね。
私が人助け、なんてね。
本当に、私どうしちゃったのかしら。
しかも、知らない人よ。
全く知らないガキを、命がけで助けるなんて。
前の私だったら考えられないわね。

「灰子ちゃんが、無事でよかったよ」
「うん、本当に良かった」
「しぶといですね」

一緒に海に来た理沙、八木杉、総司もいて、私はなんだか安心した。
ゆっくり起き上がると、あの親子がまだ頭を下げてお礼を言っている。

「もういいわよ」

起き上がると、知らない人達が私達を囲んでいた。

「すごいわ。命がけで男の子を助けるなんて」
「なかなかできることじゃないよ」
「嫉妬で酷いこと言っちゃってごめんなさい...」

「...」

そんな風に言われてもね。
体が勝手に動いてしまっただけだもの。

***

「本当にありがとうございました!お気をつけて!」
「お姉さん、ありがとう!」

二人に見送られた後、八木杉の車で帰る帰り道。
理沙は私の肩で寝てしまっていて、私は車の窓から移り変わる景色を眺めていた。

「溝沼さんって、前から思っていたけど凄い人だったんだね」

八木杉が運転しながら突然、感心するように言った。

「そんなことないわよ」

「いや、前だったらそうでしょう!私はすごいのよ!って言いそうだけどな」

「私をなんだと思ってんのよ」

「あはは」

総司も寝ているらしい。返事がない。

「なんていうか、お嬢様気質な人だと思っていたんだよね」

まぁ、実質、お嬢様だったし。

「でも、松下さんだって、相澤さんだって、オレだって救ってくれたし」

「え?」

「そうだよ。松下さんは、灰子ちゃんに助けてもらいましたって最初に言っていたし、相澤さんは、自分の悩みや愚痴を初めて溝沼さんが共有して共感してくれたから、なんだか救われたって言ってた。オレ、溝沼さんの自分の為に第二の人生を生きなさいって言葉を聞いて、スッキリできたんだ」

「そう...」

こういう時なんて返したらわからなくて私は俯いた。
普段の私なら、何かしら返事ができたかしら...。

***

「私のいう事聞いていればいいのよ。使用人の分際で口答えしてんじゃないわよ!あんた達は私のいう事聞いていればいいのよ」

「申し訳ございません!マスカレイド様...」

「助けてください...お金がないんです...」

「知らないわよそんな事。私のような人生の勝者と、貧乏人みたいな敗者は生まれた時から歩む運命が違ってるのよ」

「本当に使えないわね。あんたは今日からクビよクビ。必要ないわ」

「そんな...!マスカレイド様...たった一度の失敗ではないですか」

「あいつは悪だ。お金持ちという自分の身分にあぐらをかいて我儘放題。無実の罪を着せて公開処刑させよう」

「あんな奴死んでしまえばいいんだ!!」
「地獄に落ちろ」
「殺してやりたい」

***

「私なんか、どれだけ人を助けても足りないわよ」

なんだか、涙が出てきた。
どうして、涙が出るのかしら。

「あ、え?泣いてる?あ、ごめん!なんか酷いことを言っちゃったのなら謝るよ!本当にごめん」

八木杉が焦って何回も謝ってきた。

「いいのよ」

フゥーッと息を吐いて微笑んだ。

***

「あれ、本当に極悪令嬢マスカレイド・ライヴァ?」

「まさか人助けをするくらい変わるとは」

溝沼が助けた親子は、海を見つめながら話していました。

「あぁ、僕を命がけで助けに来たよ。前だったらありえない事だったよね」

「本当にね、ここに来てあの人、変わったんだわ」



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