悪役令嬢にはブラック企業で働いてもらいます。

ガイア

文字の大きさ
上 下
29 / 48

言い返してもらいます。

しおりを挟む
「理沙!!」

私は、理沙を追いかけ店を出た。
理沙は、トイレの前で蹲っていた。

「理沙...?」

「ごめんね...灰子ちゃん」

「どうしたのよ」

肩に触れると理沙は、震えていた。

「なんなのよあいつらは」

「高校の時の...クラスメイトだよ」

「ふーん」

「あの人達は...私を...」

「あーいたいた。理沙ー」

さっきの女達二人こっちにやってきた。

「ひっ...」

理沙は私の後ろに反射的に隠れた。

「何よーひっ!って、ウチら友達じゃん?酷くない?」

「ご...ごめんなさい」

「ごめんなさいごめんなさいって、相変わらず変わってないよね。あのさ、そういうのが人をイライラさせるって前に教えてあげたじゃん」

「ご...ごめんなさい」

「だーかーらー」

「行くわよ、理沙」

私は、勝手に話しかけてきた知らない女達を無視して、理沙の手を引き店へと戻ろうとする。

「ちょっとおねーさんさ」

「何?」

私はそのよくわからない二人組みの女の一人に話しかけられた。

「今その子どんな感じなんですか?会社で。高校の時と違って明るかったり頑張って友達作ったりしてるんですか?」

「ちょっと...やめなよー」

やめなよといいながらもう一人は楽しそうだった。

「どんな感じって、頑張って仕事してるし、友達もいるわよ」

私という友達が。

「えー!」
「嘘ー!頑張ったね!」

二人は理沙を見て馬鹿にしたように笑った。

「頑張ったねって何よ。あんたらさっきから何様なの?」

「いきなりマジになってどうしたんですか。」
「友達思いだわー」

「はぁ、こんな奴等に従ってたのあんた。本当くだらないわね。何も怖くないじゃないこんな奴等」

理沙は、私の後ろに隠れたまま目を見開いた。

「友達思いだねーお姉さん」
「やさしーねー、でも丸聞こえなんですけどー」

「理沙に最初出会った時、ずっと謝ってて、おどおどしてる、一緒にいるだけでイライラするような人だったわ。笑った顔も引きつってたし」

腕を組みながら、微笑んで理沙を見る。
理沙は、しゅんと俯いた。

「でも今はどうなのよ。一緒に服買いに行こうとか、お弁当作ってきたりとか、よく笑うようになったし、私は理沙といて楽しいわよ。もっと自信持ちなさいよ。こんな人を見下して笑ってるような奴等に尻込みしててどうするの?」

「私と...いて、楽しい...?」

そう言って、私の背筋にぞくりと寒気が走った。

***

私は、前世で令嬢をやっていた時、貧しい町民を見下して笑っていた。

私には関係ないからって。

「貧しい人達は、私と違って苦労してるのね。可哀想ねぇ」

「マスカレイド様...町人にそのような事を言うのは」

「なんでよ、私には関係のない事じゃない」

私は、他人だから関係ないから、身分が私より下だから。
町の人を見下していて笑っていた。
こいつ等も、きっと理沙が自分より下だと思ってるから、こんな風に見下して笑っているんでしょうね。

***

「いや、お姉さん喧嘩売ってる?さっきから聞いてたらさ。初対面だよね」
「理沙の友達って性格悪いんだねー?」

二人が私の前に立って私を睨んでいる。私は、反射的に後ずさってしまった。

「...わ、私は」

「やめて」

理沙が私の前に庇うようにぐんっと出た。

「私は何言われてもいいけど、灰子ちゃんにひどい事言わないで。それだけは絶対に許せない」

理沙は、ギンと二人を睨みつけていた。

「理沙どうしたの?」
「何?私達に逆らうの?」

「いい加減私に絡んでこないで。折角灰子ちゃんとのショッピングだっていうのに、あなたたちのせいで台無しにされたらたまったもんじゃない!」

「理沙のくせに...」
「何こいつ...」

「あれー?何してるの?」

後ろから、聞き覚えのある声がした。
総司と、八木杉がこちらを見てキョトンとしていた。

「お友達?」

八木杉が首をかしげると、二人は私達を睨みつけた後去っていった。

「二人は買い物?オレ達もなんだよー」

八木杉と総司も買い物みたいで、買い物袋を持っていた。

「総司君が、服全然持ってなくてね!買いに来たんだよ」

「俺の事はいいでしょう、八木杉さん」

「私達も...服を見に」

「そうなんだ!一緒にまわる?」

八木杉は、何も考えずかフランクに自然にそういったけれど、理沙は私の手を取って、

「いえ、今日は灰子ちゃんと二人でまわりたいので!」


八木杉の誘いを断った後、理沙は私の手を引いてさっきいた服売り場へと向かう。

「理沙...」

「ありがとう。灰子ちゃん。不思議なの。私、灰子ちゃんといると自然と勇気が湧いてくるみたい。私を庇ってくれてありがとう、灰子ちゃん。一緒にいて楽しいっていってくれて、ありがとう」

理沙は、私を振り返って泣きそうな顔で微笑んだ。
いつも俯いて謝っていた理沙は、笑顔でお礼を言うようになったみたい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろうにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

恋人契約

詩織
恋愛
美鈴には大きな秘密がある。 その秘密を隠し、叶えなかった夢を実現しようとする

処理中です...