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花見が終わりました
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花見が終わって、上司達や先輩達は帰り、新入社員である私達は片付けをしていた。
隣のブルーシートの相澤も一緒だ。
「すいません、こちらも手伝ってもらっちゃって」
「一人でこれ片付けるの大変すぎよ」
相澤が申し訳なさそうにボソッと言ったけど、私は笑顔で答える。
「ありがとうございます...」
「今日はどうだった?相澤」
「思った通りのクソイベでした」
「そっ」
「溝沼さんは、楽しかったみたいですね」
「楽しかないわよ。場所取りから何から大変だったんだから」
「いや...なんかそう見えて」
「そっ...まっ二度と参加したくはないけど...そんなに悪くないと思えたこともあったわ」
私は新入社員の皆でオードブルを食べながら見た桜を思い出した。
「溝沼さんの所には新入社員が、いますもんね...ボクコミュ障なんで、新入社員がボクより優秀だったらどうしようとか、リア充パリピだったらやだなって思ってたんですけど、入社したら一人で...。その時ボク、ラッキーって思ったんですよ」
日も暮れかけ、橙色の空に浮かぶ桜を見上げながら相澤は思い出すように話した。
「誰もボクと新入社員を比べないだろうし、新入社員同士のコミュニケーションもないから楽だと思ってたんですけどね。なんか、隣の芝生は青いといいますか、そちらさんで楽しそうにオードブル食べてたのを見てこっちの孤独感が半端なかったです」
「そう...相澤もこっちに来ればいいじゃない」
「新入社員ボク一人なんで怖くて辞められないです」
想像したのか相澤は震えていた。
「そう。まぁ、本当にしんどくなったら逃げなさいよ。あんたは私と違って逃げられるわ」
「...逃げられたらいいんですけどねぇ」
片付けも終わって日も暮れかけていた。
「じゃ、相澤頑張るのよ!明日から」
「はい...溝沼さんも」
元気に手を振り相澤の丸まった背中を見送った。
新入社員四人で帰る帰り道。もう暗くなって薄暗い街灯の道を寮へと戻るべく歩いていく。
「すごいね灰子ちゃん別の会社のしかも異性と仲良くなっちゃうなんて」
「たまたまよ。すごく気があったのよ」
「今日の花見は皆色々ありがとう。山田さんの機嫌も良かったし大成功だったね」
八木杉はニコニコしているのに対して、総司は相変わらず機嫌が悪そうだった。おばさんに囲まれたのが相当キているのかしら。
「早く帰って寝ましょう...」
あくびをしながらげっそりしている総司を見て八木杉が心配そうに顔を覗き込む。
「総司君大丈夫かい?」
「え...はい」
「いい...!!」
理沙はぼそっと呟いた。
「私も早く帰って寝たいわ」
私もあくびを一つして、少し早足になる。
「灰子ちゃんは、外で寝てたんだもんね。早く帰って寝たほうがいいよ」
「そうだね、総司君も疲れて眠そうだし」
...ん?なにこの共通点。
総司昨日あんまり寝られなかったの?
***
「おはようございます」
次の日、元気よく私に挨拶してきた総司。いつも通りだった。
「ちょっと総司、なんで昨日機嫌悪かったのよ」
そっと耳打ちすると、総司はあー、と思い出したように、
「そういえば逃げられても困ると思って、花見の場所取りの場所まで監視しにいってたんですよ」
「え?」
「監視役ですから」
「それで寝不足だったの?」
「いや...いたのはそんなに長くないですけど」
なに、総司ったら。一人で花見の場所取りに来ていた私を見に来ていたの?監視役だからって?
「...あんたって真面目ね!あははっ!!」
「何笑ってるんですか。溝沼さんの分際で」
「分際でってなによ!」
最悪だと思った花見。いいこともちょっとあったり、新しい理解者ができたり、総司の意外な一面が見えたり、大変だったけどまぁまぁ悪くは、なかったかもね。
隣のブルーシートの相澤も一緒だ。
「すいません、こちらも手伝ってもらっちゃって」
「一人でこれ片付けるの大変すぎよ」
相澤が申し訳なさそうにボソッと言ったけど、私は笑顔で答える。
「ありがとうございます...」
「今日はどうだった?相澤」
「思った通りのクソイベでした」
「そっ」
「溝沼さんは、楽しかったみたいですね」
「楽しかないわよ。場所取りから何から大変だったんだから」
「いや...なんかそう見えて」
「そっ...まっ二度と参加したくはないけど...そんなに悪くないと思えたこともあったわ」
私は新入社員の皆でオードブルを食べながら見た桜を思い出した。
「溝沼さんの所には新入社員が、いますもんね...ボクコミュ障なんで、新入社員がボクより優秀だったらどうしようとか、リア充パリピだったらやだなって思ってたんですけど、入社したら一人で...。その時ボク、ラッキーって思ったんですよ」
日も暮れかけ、橙色の空に浮かぶ桜を見上げながら相澤は思い出すように話した。
「誰もボクと新入社員を比べないだろうし、新入社員同士のコミュニケーションもないから楽だと思ってたんですけどね。なんか、隣の芝生は青いといいますか、そちらさんで楽しそうにオードブル食べてたのを見てこっちの孤独感が半端なかったです」
「そう...相澤もこっちに来ればいいじゃない」
「新入社員ボク一人なんで怖くて辞められないです」
想像したのか相澤は震えていた。
「そう。まぁ、本当にしんどくなったら逃げなさいよ。あんたは私と違って逃げられるわ」
「...逃げられたらいいんですけどねぇ」
片付けも終わって日も暮れかけていた。
「じゃ、相澤頑張るのよ!明日から」
「はい...溝沼さんも」
元気に手を振り相澤の丸まった背中を見送った。
新入社員四人で帰る帰り道。もう暗くなって薄暗い街灯の道を寮へと戻るべく歩いていく。
「すごいね灰子ちゃん別の会社のしかも異性と仲良くなっちゃうなんて」
「たまたまよ。すごく気があったのよ」
「今日の花見は皆色々ありがとう。山田さんの機嫌も良かったし大成功だったね」
八木杉はニコニコしているのに対して、総司は相変わらず機嫌が悪そうだった。おばさんに囲まれたのが相当キているのかしら。
「早く帰って寝ましょう...」
あくびをしながらげっそりしている総司を見て八木杉が心配そうに顔を覗き込む。
「総司君大丈夫かい?」
「え...はい」
「いい...!!」
理沙はぼそっと呟いた。
「私も早く帰って寝たいわ」
私もあくびを一つして、少し早足になる。
「灰子ちゃんは、外で寝てたんだもんね。早く帰って寝たほうがいいよ」
「そうだね、総司君も疲れて眠そうだし」
...ん?なにこの共通点。
総司昨日あんまり寝られなかったの?
***
「おはようございます」
次の日、元気よく私に挨拶してきた総司。いつも通りだった。
「ちょっと総司、なんで昨日機嫌悪かったのよ」
そっと耳打ちすると、総司はあー、と思い出したように、
「そういえば逃げられても困ると思って、花見の場所取りの場所まで監視しにいってたんですよ」
「え?」
「監視役ですから」
「それで寝不足だったの?」
「いや...いたのはそんなに長くないですけど」
なに、総司ったら。一人で花見の場所取りに来ていた私を見に来ていたの?監視役だからって?
「...あんたって真面目ね!あははっ!!」
「何笑ってるんですか。溝沼さんの分際で」
「分際でってなによ!」
最悪だと思った花見。いいこともちょっとあったり、新しい理解者ができたり、総司の意外な一面が見えたり、大変だったけどまぁまぁ悪くは、なかったかもね。
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