悪役令嬢にはブラック企業で働いてもらいます。

ガイア

文字の大きさ
上 下
19 / 48

写真を撮ってもらいます

しおりを挟む
「ありがとうございました!」

「気をつけてな」

お爺さんは、にっこり微笑んで手を振っていた。時刻は朝の6時。
早朝だというのにお爺さんは朝ごはんを作ってくれた。
ご飯に味噌汁に漬物に焼き魚にサラダ。
久々に食パンとヨーグルト以外の朝ごはんを食べたわ。このお爺さん料理もできるのね。昨日の夕飯も美味しかったけど。

昨日深夜の3時くらいに山を降りようかと相談したりもしたけれど、疲れと睡魔で限界だったので気づいたら寝てしまった。
朝6時に総司に叩き起こされ、山を降りることになった。

外はピリつく寒さ。
4月の終わりっていうのに寒いわね。
朝日が顔を出しかけている。

「山登りは登ってから帰るまでが山登りだからね!張り切って降りよう!おー!」

八木杉が元気よく拳を振り上げたけど、私達は眠気とこんな早朝からそんなテンションで来られてもノれる程元気じゃなかった。

「そうだ!そうだ!」

お爺さんが血相変えて出てきたので、首を傾げる。何か忘れ物でもあったのかしら。

「せっかく頂上まで登ったんだ。写真を撮ってやろう」

「しゃしんー?」

お爺さんは、目をキラキラさせてカメラを構えている。

「ほら、そこに並んで!」

「これから出発...」

私がそう言いかけたのを、八木杉が笑顔で止めた。

「ありがとうございます!」

お爺さんに言われた通り、朝日が昇りかけ光が後光のように山から差し込む絶景の場所をバックに私達は写真を撮ることになった。

「ほら、皆もっと寄って寄って」

私と理沙、総司と八木杉の並び。
私は今まで写真というものを撮ったことがなかったので、こういう時どうしたらいいのかわからない。

「こ、こういう時どうすれば、私クラス写真でも端っこであんまり目立たないようにしてたから...」

わたわたする理沙に、いつもなら何か言葉をかけてあげるのだろうけど、今の私は理沙と同じ。写真を撮る時ってどうすればいいのかしら。

「女性二人とも!表情がかたいぞ!ピースしてチーズ!」

お爺さんがニィッと笑ったが、

「何言ってんの?」

ふざけている場合じゃないのよお爺さん。私は真剣にどうしたらいいかわからなくて困ってるの。

総司と八木杉は、指を二本立てて微笑んでいた。
理沙も控えめに指を二本立てて顔を引きつらせて笑っている。
写真撮るときは二本指を立てないといけないのね。私は見よう見まねでポーズをとった。

「いくぞー!ハイチーズ!」

写真は、八木杉の所に送ってくれるらしい。

「ありがとうございました!」

「いいんだよ。気をつけて下山してな」

大きく手を振って今度こそバイバイね。
私達はこれからこの山を下山しないといけないんだから...。

***

7:00なら、上司は起きているだろうと八木杉が、今山を降りている旨を伝える電話をかけた。

私と理沙は、その様子を震えながら見守っていた。

「大変申し訳ございません.....」

電話なのにお辞儀までしている八木杉をみて、理沙もつられてお辞儀をしていた。

「え...?本当に山の頂上まで登ったの?って?え?そんな新入社員は何十年ぶりだって?え?」

八木杉の表情に焦りが見られる。
どういうこと?私と理沙は顔を見合わせた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

古屋さんバイト辞めるって

四宮 あか
ライト文芸
ライト文芸大賞で奨励賞いただきました~。 読んでくださりありがとうございました。 「古屋さんバイト辞めるって」  おしゃれで、明るくて、話しも面白くて、仕事もすぐに覚えた。これからバイトの中心人物にだんだんなっていくのかな? と思った古屋さんはバイトをやめるらしい。  学部は違うけれど同じ大学に通っているからって理由で、石井ミクは古屋さんにバイトを辞めないように説得してと店長に頼まれてしまった。  バイト先でちょろっとしか話したことがないのに、辞めないように説得を頼まれたことで困ってしまった私は……  こういう嫌なタイプが貴方の職場にもいることがあるのではないでしょうか? 表紙の画像はフリー素材サイトの https://activephotostyle.biz/さまからお借りしました。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

処理中です...