14 / 48
山登りをしてもらいます
しおりを挟む
「八木杉君、これやってくれる?」
「あ、はい」
「八木杉、仕事抱えすぎなんじゃないの?手伝うわよ」
「私も手伝うよ八木杉君」
あれから、八木杉が先輩に頼まれるたびに新入社員の私が出てきて目の前で「沢山仕事抱えてるね!」と言いながら手伝うようにしたら、先輩達も少しずつ仕事を八木杉に振らなくなっていった。
私のアイデアよ。凄いでしょう。
八木杉は最初のうちは、仕事断れずに困っていたから私が助け舟を出してあげたのよ。
理沙も協力してくれる。本当に理沙は変わったわ。
「多分それ、先輩からうざがられてますよ溝沼さん」
「いいわよ。先輩なんて怖くないもの。何歳か違うだけで同じ人でしょう?」
「成る程...上司や先輩への敬いが一切ないのはそういう事だったんですね」
呆れ顔で私を見る総司に、私は平気な顔をしていた。
「新入社員は、随分仲良しのようだね」
先輩に八木杉は声をかけられていた。
「はい!皆いい仲間です」
元気よく答える八木杉に、先輩の顔に影が差す。
「来週の山登りが終わった後でも、その仲の良さが続いてるといいな」
「...え?」
「い、いや、なんでもないよ」
なんなのよ。
なんなのよその気になる感じ!首根っこ引っ掴んで問い詰めたいわよ。
「山登りのイベント、楽しみですね」
総司は一連の様子を見て私に微笑みかけた。なんで今の様子を見てそんな言葉がかけられるのよあんたは。
***
山登り当日。
正式に山登りについて聞かされたのは、先輩が暗い影を顔に宿して意味深なことを言った日。
「新入社員の親睦を深める素敵なイベントだよ」
って、ハゲは言っていたけど、何で山に登ることが親睦を深めるイベントなのよ。
そんなのこっちで勝手にやるわよ。余計なお世話よ!!
しかも最悪なことにこの山登り。
私達の公休を使って行く事になっていた。
その事実を知ったとき、貴重な休みをこんな意味のわからないイベントに消化すると考えたら休みたくて休みたくて仕方なかったし、こんなイベントを考えた奴森の熊さんのエサにしてやりたくなった。
仮病でも使おうかとギリギリまで考えていたけれど、朝は理沙が私の部屋まで迎えに来ていたし、前日の夜に準備していたし、仕方ないので行く事にした。
会社の前集合で、どこの山かはお楽しみに!と黒いカーテンに覆われた大きな車に乗せられた。
まるで誘拐よ。誘拐。
しかも今朝の6時よ。6時。
こんな朝早くから集められてどこに連れて行かれるって山よ山。
公休日だから給料出ないしってもう愚痴しか出てこないわよ。
八木杉は朝だっていうのににこやかに総司に話しかけていた。
「オレ毎日5時に起きてランニングするのが習慣なんだよね!」
貴重な睡眠時間をわざわざ疲れる為に使うなんて訳わからないわね。
理沙は半分寝ていて私にもたれかかっていた。
私も寝ようかしら。昨日は準備で全然寝られなかったし。
大きなあくびをしながら目を閉じた。
「あ、はい」
「八木杉、仕事抱えすぎなんじゃないの?手伝うわよ」
「私も手伝うよ八木杉君」
あれから、八木杉が先輩に頼まれるたびに新入社員の私が出てきて目の前で「沢山仕事抱えてるね!」と言いながら手伝うようにしたら、先輩達も少しずつ仕事を八木杉に振らなくなっていった。
私のアイデアよ。凄いでしょう。
八木杉は最初のうちは、仕事断れずに困っていたから私が助け舟を出してあげたのよ。
理沙も協力してくれる。本当に理沙は変わったわ。
「多分それ、先輩からうざがられてますよ溝沼さん」
「いいわよ。先輩なんて怖くないもの。何歳か違うだけで同じ人でしょう?」
「成る程...上司や先輩への敬いが一切ないのはそういう事だったんですね」
呆れ顔で私を見る総司に、私は平気な顔をしていた。
「新入社員は、随分仲良しのようだね」
先輩に八木杉は声をかけられていた。
「はい!皆いい仲間です」
元気よく答える八木杉に、先輩の顔に影が差す。
「来週の山登りが終わった後でも、その仲の良さが続いてるといいな」
「...え?」
「い、いや、なんでもないよ」
なんなのよ。
なんなのよその気になる感じ!首根っこ引っ掴んで問い詰めたいわよ。
「山登りのイベント、楽しみですね」
総司は一連の様子を見て私に微笑みかけた。なんで今の様子を見てそんな言葉がかけられるのよあんたは。
***
山登り当日。
正式に山登りについて聞かされたのは、先輩が暗い影を顔に宿して意味深なことを言った日。
「新入社員の親睦を深める素敵なイベントだよ」
って、ハゲは言っていたけど、何で山に登ることが親睦を深めるイベントなのよ。
そんなのこっちで勝手にやるわよ。余計なお世話よ!!
しかも最悪なことにこの山登り。
私達の公休を使って行く事になっていた。
その事実を知ったとき、貴重な休みをこんな意味のわからないイベントに消化すると考えたら休みたくて休みたくて仕方なかったし、こんなイベントを考えた奴森の熊さんのエサにしてやりたくなった。
仮病でも使おうかとギリギリまで考えていたけれど、朝は理沙が私の部屋まで迎えに来ていたし、前日の夜に準備していたし、仕方ないので行く事にした。
会社の前集合で、どこの山かはお楽しみに!と黒いカーテンに覆われた大きな車に乗せられた。
まるで誘拐よ。誘拐。
しかも今朝の6時よ。6時。
こんな朝早くから集められてどこに連れて行かれるって山よ山。
公休日だから給料出ないしってもう愚痴しか出てこないわよ。
八木杉は朝だっていうのににこやかに総司に話しかけていた。
「オレ毎日5時に起きてランニングするのが習慣なんだよね!」
貴重な睡眠時間をわざわざ疲れる為に使うなんて訳わからないわね。
理沙は半分寝ていて私にもたれかかっていた。
私も寝ようかしら。昨日は準備で全然寝られなかったし。
大きなあくびをしながら目を閉じた。
0
お気に入りに追加
56
あなたにおすすめの小説
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
婚約者の浮気相手が子を授かったので
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。
ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。
アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。
ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。
自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。
しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。
彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。
ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。
まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。
※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。
※完結しました
夫から国外追放を言い渡されました
杉本凪咲
恋愛
夫は冷淡に私を国外追放に処した。
どうやら、私が使用人をいじめたことが原因らしい。
抵抗虚しく兵士によって連れていかれてしまう私。
そんな私に、被害者である使用人は笑いかけていた……
ままならないのが恋心
桃井すもも
恋愛
ままならないのが恋心。
自分の意志では変えられない。
こんな機会でもなければ。
ある日ミレーユは高熱に見舞われた。
意識が混濁するミレーユに、記憶の喪失と誤解した周囲。
見舞いに訪れた婚約者の表情にミレーユは決意する。
「偶然なんてそんなもの」
「アダムとイヴ」に連なります。
いつまでこの流れ、繋がるのでしょう。
昭和のネタが入るのはご勘弁。
❇相変わらずの100%妄想の産物です。
❇妄想遠泳の果てに波打ち際に打ち上げられた、妄想スイマーによる寝物語です。
疲れたお心とお身体を妄想で癒やして頂けますと泳ぎ甲斐があります。
❇例の如く、鬼の誤字脱字を修復すべく激しい微修正が入ります。
「間を置いて二度美味しい」とご笑覧下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる