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気になってしまいます

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「誠にご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした!」

八木杉は何度もへこへこ頭を下げて驚くことに会社中の人達に謝りに行っていた。
昨日は上司に謝ってたのに。

「えっ...体調不良で休み?へ、へぇ...もらえたんだ...よかったね。新入社員には甘いのかな」

なんか今凄く恐ろしい事が聞こえた気がしたわ。
地獄の入り口を跨いでしまったようね八木杉、覚悟しなさい。

「負のオーラが出てるよ溝沼さん」

総司が若干引きながら話しかけてきた。

「八木杉さんをじっと見ていたけど気になるのかな?」

「別に」

「オレに何か用かな?」

背後からニョキッと現れた八木杉に、私も総司も驚いて振り返る。 

「ヒッ!いたの?」

「溝沼さんが八木杉さんの事が気になるみたいで」

「ちょっと、何言ってんのよ」

肘で総司をこづくと、八木杉は困ったように頭をかきながら、

「オレに何かついてた?変だった?」

「いや、何でもないわよ。気にしないで仕事に戻って大丈夫よ」

「う、うん?」

八木杉は大人しく総司の隣のデスクに戻っていった。
新入社員は、指導しやすいように固まってデスクを持つようになったみたい。
左から八木杉、総司、私、理沙の順番で机を並べている。
総司の向こう側の八木杉の仕事ぶりを見てみようと総司の間から見てみると、とんでもないスピードでカタカタカタカタパソコンを動かし、コピーを取る間に先輩社員にアドバイスを求め、女性社員が重いものを持っていたら手伝い扉を開け積極的に先輩にも声をかけつつ、自分の仕事も完璧にこなしていた。
まるで八木杉が2人も3人もいるみたいな働きぶり。

何者なのよあいつ...人造人間か何かなの。

「働き者ですね彼。早速先輩方から仕事を頼まれていますよ」

「うぇー、私だったら絶対断るわ。自分の事で精一杯よ」

「八木杉さんは、私と違って断れなくてやっているって感じじゃなくて、なんだか、できるからやってるって感じだよね...」

理沙まで話に入ってきた。
私達新入社員組は、テキパキと仕事をこなす八木杉を眺めていた。

「いやー八木杉君は優秀だね」
「しかも東大出てるんだって」
「えー?すごいじゃん愛想もいいしカッコいいよね」

体調不良から職場復帰した八木杉の噂は瞬く間に社会に広がり優秀な新入社員として褒められていた。

でも、帰り道。

「灰子ちゃん...八木杉さんの事気になってるの?」

理沙にまで聞かれてしまった。

「気になってるっていうか、飲み会の事でちょっと...ね」

「私も飲み会での事、八木杉さんの事、気になってたの」

「え!?理沙もなの?やっぱりおかしいわよね」

「おかしい...か。灰子ちゃんにとってはそうなのかもね」

はぁとため息をつく灰子。
東大出ているのに自慢もせず話題にあまりあげたがらない八木杉は確かにおかしいと思うけど、灰子にとっては違うのかしら。 

「どういうことよ」

「灰子ちゃんも気になってるんでしょ...八木杉さん...と総司さんの関係性」

「は?」

「八木杉さん、お酒強そうなのに総司さんとベタベタしてたよね。あれって絶対総司さんの事気になってるよ。総司さんもまんざらでもなさそうだったし、あの2人...新入社員男2人はできてるんだと思う。席だって隣だしお互い高め合い協力し合う同僚同士。でもいつしかそれは友情から愛情へと変わっていく...」

「何を言っているの理沙」

「私寝ているふりしてずっと2人のこと見てたのよ。八木杉さんはあぁみえてちょっと自分にコンプレックス抱えてそうだし闇深そうだから受けかな。総司さんはちょっとSっ気がありそうだから攻めかも」

ちょっとどころじゃないわよ。

「でも、理沙も八木杉の事見てたんでしょう?東大の話しした時、なんかおかしくなかった?」

「...まぁ、確かになんだか違和感あったけど...」

「よね!よね!」

「でも、悩みや触れられたくない事なんて誰にでもある事じゃない。詮索するのは野暮だよ」

「...野暮..か」

「うん。でもあんな優秀な人がなんでこんなところに就職しているのかっていうのは気になるけどね。もし八木杉さんが、助けを求めてきたら、できる限り手を貸すようにしよう。同じ同期で、仲間なんだから」

同期なんだから、と微笑む理沙を見て私はなんだかくすぐったい気持ちになった。

理沙、同期で仲間って八木杉の影響受けすぎよ。
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