ごめんね、美子

ガイア

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演幕は、見せ物

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座敷への扉を開けると、既に男女7人全員が集まっていた。

その中には、当然貴子も入っていた。男女7人のうち、私を歓迎しているような眼をしているのは、久々に会って女優のように美しくなっている貴子だけで、他の男女は怪訝な顔をしている男性や、察したというように含み笑いをもらす女性もいた。

 この場の第一印象は最悪だ。

それは、私が悪いのか。元気に挨拶できなかった私の第一印象が悪かったから?しかし驚くべきは、さっき居酒屋の前でうろうろしていた男性もいたことだ。

さっき出会った男性は私を見るなり、少し驚いた顔をして知らない人です、というように目をそらした。

「誰?」
「もしかして貴子のおともだちさん?」
「ええ」

 貴子は、自信満々に頷いて立ち上がり、笑顔で私を自分の隣に導いた。

「義咲美子、私の親友です。美子も彼氏がいないから合コンに呼んだの。私の友達紹介してってみんな言ってたでしょ?あ、美子、前に話したけどこの集まりは大学の同級生のサークル仲間。30手前で独身の悲しい集まりだよ」


 悲しい集まりに参加している私も悲しい人なんだけど。そんな貴子はしばらく会っていない間に本当に美人になっていた。メイクもばっちり完璧で、近くにいるだけで華が咲いているようないい匂いがした。

髪もふわりとした巻髪で、鮮やかな赤みがかった茶髪の髪によく似合っている。

「よろしくお願いします」

 私がそういってお辞儀すると、女性が「貴子やるなあ」と小さく呟いて、それを聞いた正面の男性がくすりと笑った。

やるなあって、聞こえてるんだけど。私が少し顔をしかめたが、そんなことを2人は気づいていない。それどころか、同じところで笑ったことで何か通じ合うところがあったかもしれないとときめきあっているのか、目配せしあっている。

 ああ、そうか。

それはこういう集まりか。というか、人って本来そういうものだよね。

 私は、成る程と暗い瞳で一人心の中で頷いた。貴子の隣に座って他の人が自己紹介をしている中、私は暗い闇の中にいた。居酒屋の照明は、私を悲劇のヒロインにあてるスポットライトのように照らしているように感じた。

 演幕の名前は、「見世物」主役は私。

人間は、そもそも自分より下だと判断した人間には、“そういう風”に扱っていいと思っているんだと思う。

残酷だけれど、笑いものにしてもいいし、強い言葉を使ってもいいし、なんならその人間にそういう態度をとっても、相手は絶対に反抗してこないと思っている。

なぜなら自分より下だし、下の人間は自分に逆らってこないと思っているから。

ここにいる人たちは、さっきの地味めの男性を除いて皆華やかな人たちばかりだ。どうして独身やっているのか、見た目だけではわからない程に。
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