30代限界サラリーマンのおじさんは地下アイドル♂に❤︎される

ねむ太郎ネムの介

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限界サラリーマンのおじさんは女装した銀髪の歳下に❤︎される

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「ここが俺のマンション」

 レジ袋を持ちながらオートロックを解除する冬街に俺は嫉妬していた。

「なんで俺より立派なところに住んでるんだよ」
「………地下アイドルで稼いでるから、それに太郎さんと違ってちゃんと貯金もしているし」

 紀元前ソフィーに貢いでいる俺とは違うってことだ。

「……悔しい」
「まあまあ、そう怒らずに」

 エレベーターに乗り込むと、冬街は俺を宥めるように背中を摩ってきた。

「そんなに拗ねなくてもいいじゃん」
「別に拗ねてないし」
「そういうことにしといてあげる」
「おい」
「あはは、ごめんごめん」

 肩を抱いてきた冬街の手に力が込められ、彼の体温が伝わってくる。

「部屋に着いたらたくさん可愛がってあげる」

 耳元で囁かれた甘い声に身体が熱くなる。

「……お前、そういうのやめろよ」
「そういうのって?」
「だから、そういうのだよ」
「そういうのって?」
「……もういい」

 ニヤリと笑う冬街の横顔に腹が立ち、俺は彼の脇腹を小突いた。









「お邪魔します」
「どうぞ」

 玄関に入ると、俺は靴を脱ぎ、揃えた。後ろから律儀な人だと笑いながら、冬街が入ってくる。そして、彼はそのまま鍵をかけた。

 リビングは広いし、立派なソファーもある。テレビも大きい。洒落たカウンターキッチンも付いている。
 羨ましい限りである。

「なんか飲む?」
「じゃあ、酒を……」
「家で酒は飲まないんだよね」
「……水で頼む」
「はいよ」

 冬街は冷蔵庫を開け、ペットボトルを取り出すと、コップに注いだ。
 俺はコンビニで買ったおにぎりを袋から取り出す。他の袋には何が入っているのだろうと冬街の目を盗んでちらりと中身を見る。袋の中には菓子袋にコンドームにローションに……と、色々入っていた。
 下心丸出しのレジ袋からおにぎりを取り出すと、冬街がこちらを見ていた。

「なんだよ」
「それ、食べさせてあげようか?」
「は?何言ってんのか分かってんの?」
「うん」

 真顔で返事をする冬街に呆れつつも、俺も真顔を貫いていた。

「食い辛くなるから嫌だね」
「大丈夫。俺が全部食べさせるからさ」
「……」

 こいつは馬鹿か?と内心思っていると手に持っていたおにぎりを奪われた。

「ほら、口開けて」
「ちょ、待っ……んぐ」

 無理矢理口に突っ込まれたおにぎりを咀噛すると、冬街は嬉しそうな表情を浮かべていた。

「美味しい?」

 具材が溢れないように気をつけながらも、俺はこくりと首を縦に振った。

「もっと食べる?ほら、もう一個あるから」
「自分で食える」
「遠慮しないでよ」
「してない」
「はい、あーん」

 みな忘れているかもしれないが、今冬街は女装をしているのだ。つまり、俺の目の前にいるのは女性なのだ。
 女性に「はい、あ~ん」をされているこの状況は、男なら誰しも興奮してしまうことだろう。現に俺も少しだけドキドキしている。断りきれない自分が情けない。

「……ん」
「ふはっ、かわいい」

 冬街はクスッと笑みをこぼすと、おにぎりを俺の唇に押し当ててきた。

「はい、あーん」
「あーん!!!!!!!!!」

 恥ずかしさを誤魔化すために大声でおにぎりを頬張ると、「よくできました~」と言いながら頭を撫でられた。

「よく頑張った太郎さんにはご褒美をあげないとだねぇ……」
「いらん」
「えぇ?そんなこと言わずにさぁ」

 冬街の指先が俺の顎をなぞり、首筋へと降りていく。

「……お前、ほんとに女みたい」
「………そりゃあ女装して地下アイドルしてるからね」

 そうだった。冬街は俺の推しアイドルである紀元前ソフィーちゃんなのであった。俺は今までこいつに貢いで金を溶かし続けてきたんだ。

 俺のおかげで立派な生活ができている。という、浅ましく卑しい考えは思い浮かばず、推しが幸せな生活をしているならそれで良いという考えが頭を支配していた。だからか、一瞬冬街の顔が歪んでいることに気がつくことができなかった。

「何考えてるの?太郎さん?」

 意識が現実に引き戻されると同時に首筋に痛みを感じた。

「っ……!!」

 ちゅっと音を立てながら首筋へ吸い付いてくる冬街の肩を掴み、引き離そうとした。しかし、俺の抵抗など物ともせず、冬街の舌が俺の首筋を這っていく。
 女装した冬街に犯されそうになっているこの現状に、俺は頭がおかしくなりそうだ。

「と、冬街……」
「なあに?」
「やめろって」
「どうして?」
「だって……」
「俺たちはアイドルとファンの関係だから?もうそういうのいいって」

 冬街は少し棘のある口調でそう言う。不機嫌そうに眉をひそめるその顔に、俺は何も言えなかった。

「……俺のこと嫌いになった?」
「な、なってない」
「じゃあ、なんで?」
「それは……」
「俺とこういうことしてもいいって思ってくれるぐらい、俺のことす……信頼してくれてるんじゃなかったの?」
「……」
「それとも、俺とはしたくないってことかな」

 悲しそうに目を伏せた冬街に胸が締め付けられる。

「そんなわけじゃない……」
「じゃあ、なんで?」

 それを言わせるのか。口にしたくないが、俺は意を決して言葉を発した。

「は、恥ずかしいんだよ」

 羞恥心で死にそうである。こんなことを言っている自分を殴りたい。

「……ぷっ」
「おい、笑うなよ」
「くっく……ごめん、ちょっと面白くて」
「お前、ふざけんなよ」
「ごめんね、許してよ」

 冬街は笑いを堪えながら、謝罪の言葉を口にする。

「でも、安心したよ。セックスするのは嫌じゃないんだね」
「セッ……!?ちげぇ!そういう意味じゃなくて!」
「はいはい。分かってますよ」

 冬街は笑いながら、桃色の紅がついた唇を俺の唇に重ねた。

「そんなに負担はかけないからさ」

 指を絡めとられる。

「泊まっていきなよ」

 まぁ、元々帰すつもりなんて無かったんだけど。

 と、付け足しながら冬街は微笑んだ。
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