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限界サラリーマンのおじさんは女装した銀髪の歳下に❤︎される
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「お前はもう帰りなさい」
やはり今日も残業になってしまった。時計の針は10を指す寸前だ。
俺以外にも残っている社員はいたが、皆、疲れ切った表情をしていた。これ以上働かせるのは酷だと判断し、俺は部下たちに帰宅を促した。後輩や部下たちは驚いた表情をしながら否定していたが、「明日もあるから早く帰れ」と俺は言葉を返した。
「で、でも町田さんは?まだ帰らないんですか?」
「俺はもう少しだけやってから帰るよ」
「それって課長から押し付けられた仕事ですよね。僕たちのせいで遅くなってるのに、町田さんが残る必要はないじゃないですか」
俺の上司である課長からの仕事を押し付けられていることを察した後輩が心配そうな顔をして俺を見つめていた。他の後輩たちも同じように不安げに俺の顔を見るものだから、俺は苦笑を浮かべながら大丈夫だと告げておいた。
「気にすんな。好きで残ったんだから」
「でも……」
「お前には産まれたばかりの幼い子どもがいるだろう。こんな時間まで付き合わせて悪かったな。ありがとう。ほら、帰った帰った!」
妬みを含みながら無理やり追い出すようにすると、渋々といった様子で彼らはオフィスを出て行った。
一人になった俺は、改めて自分のデスクを見渡す。
山積みになっている書類、ファイル、資料。どれもこれもが期限ギリギリのものばかりだ。
これを1人でするとなると、どれだけ時間がかかるだろうか。考えるだけで頭が痛くなるような量に思わずため息が出る。
だがこれは、俺が選んだ道なのだ。
誰かがやらなければいけない仕事だし、今の状況で仕事を放り投げるなんてことはしたくない。
「……やるしかないな」
骨が折れそうな作業に覚悟を決め、俺は椅子に腰を下ろし、そして再びキーボードを叩き始めた。
カタカタと音を立てて文字を打ち込んでいる最中だった。ふいに視界の端に何かが映った気がしたのだ。
視線を上げるとそこには見覚えのある人物が立っていた。そこには先ほど帰らせたばかりの後輩たちの姿があった。
「お前ら……」
どうして戻ってきたのか、そう聞こうとしたが、俺の言葉は後輩たちの声によって遮られた。
「俺たち、手伝いに来たんですよ」
「手伝う?」
「はい。少しでも力になりたいと思って」
「そっか……。気持ちは嬉しいけど、君たちも疲れているはずだ。無理はしなくていいからな」
「町田さんの彼女さんを待たせてるのにそんなことしてられませんよ」
「……え?」
後輩の言葉に耳を疑う。
俺に彼女なんていないし、女友達もいないのだが。一体何を言っているんだ。
「俺、町田さんにずっと甘えてばかりでしたから。たまには恩返しさせてください」
その言葉を皮切りに次々と声が上がる。その目は真剣そのもので、とても冗談を言っているようには見えなかった。
上司に毎回怒られ、会社に居場所はないと勝手に決めつけていたが、俺が思っているよりもこの会社は温かい場所なのかもしれない。
「ありがとう」
俺は素直に感謝の言葉を告げて、早速、彼らに手伝ってもらうことにした。
「町田さんと彼女さんのために頑張りましょう!」
熱意が籠った後輩の声を聞きながら、俺は書類に手を伸ばすのであった。
(彼女って誰だよ)
やはり今日も残業になってしまった。時計の針は10を指す寸前だ。
俺以外にも残っている社員はいたが、皆、疲れ切った表情をしていた。これ以上働かせるのは酷だと判断し、俺は部下たちに帰宅を促した。後輩や部下たちは驚いた表情をしながら否定していたが、「明日もあるから早く帰れ」と俺は言葉を返した。
「で、でも町田さんは?まだ帰らないんですか?」
「俺はもう少しだけやってから帰るよ」
「それって課長から押し付けられた仕事ですよね。僕たちのせいで遅くなってるのに、町田さんが残る必要はないじゃないですか」
俺の上司である課長からの仕事を押し付けられていることを察した後輩が心配そうな顔をして俺を見つめていた。他の後輩たちも同じように不安げに俺の顔を見るものだから、俺は苦笑を浮かべながら大丈夫だと告げておいた。
「気にすんな。好きで残ったんだから」
「でも……」
「お前には産まれたばかりの幼い子どもがいるだろう。こんな時間まで付き合わせて悪かったな。ありがとう。ほら、帰った帰った!」
妬みを含みながら無理やり追い出すようにすると、渋々といった様子で彼らはオフィスを出て行った。
一人になった俺は、改めて自分のデスクを見渡す。
山積みになっている書類、ファイル、資料。どれもこれもが期限ギリギリのものばかりだ。
これを1人でするとなると、どれだけ時間がかかるだろうか。考えるだけで頭が痛くなるような量に思わずため息が出る。
だがこれは、俺が選んだ道なのだ。
誰かがやらなければいけない仕事だし、今の状況で仕事を放り投げるなんてことはしたくない。
「……やるしかないな」
骨が折れそうな作業に覚悟を決め、俺は椅子に腰を下ろし、そして再びキーボードを叩き始めた。
カタカタと音を立てて文字を打ち込んでいる最中だった。ふいに視界の端に何かが映った気がしたのだ。
視線を上げるとそこには見覚えのある人物が立っていた。そこには先ほど帰らせたばかりの後輩たちの姿があった。
「お前ら……」
どうして戻ってきたのか、そう聞こうとしたが、俺の言葉は後輩たちの声によって遮られた。
「俺たち、手伝いに来たんですよ」
「手伝う?」
「はい。少しでも力になりたいと思って」
「そっか……。気持ちは嬉しいけど、君たちも疲れているはずだ。無理はしなくていいからな」
「町田さんの彼女さんを待たせてるのにそんなことしてられませんよ」
「……え?」
後輩の言葉に耳を疑う。
俺に彼女なんていないし、女友達もいないのだが。一体何を言っているんだ。
「俺、町田さんにずっと甘えてばかりでしたから。たまには恩返しさせてください」
その言葉を皮切りに次々と声が上がる。その目は真剣そのもので、とても冗談を言っているようには見えなかった。
上司に毎回怒られ、会社に居場所はないと勝手に決めつけていたが、俺が思っているよりもこの会社は温かい場所なのかもしれない。
「ありがとう」
俺は素直に感謝の言葉を告げて、早速、彼らに手伝ってもらうことにした。
「町田さんと彼女さんのために頑張りましょう!」
熱意が籠った後輩の声を聞きながら、俺は書類に手を伸ばすのであった。
(彼女って誰だよ)
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