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第3章 ~ジロー、学校へ行く?~
過去の転生者、そして言葉の力。
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「アリス、漢字を知ってるの?」
「漢字を知っておるというか、存在は知っておるというのかの。」
存在を知っている?
「以前、これまでも転生者がおったという話をした時のことを覚えておるか?」
「えーと、二人ぐらい居たんだっけ?すごく強かったとか。」
「そうじゃ。その二人に関しては、もう文献ぐらいしか残っておらぬのじゃがな。一人目の転生者はある不思議な固有魔法を使ったとある。それは漢字という文字を使った文字魔法と呼ばれておったそうじゃ。」
漢字ということはその人も日本人?
中国人という可能性もあるけど漢字というからにはおそらく日本人だろう。
「もしかして漢字はこの世界でも使われているの?」
「使ってはおらんな。そして、伝わってもおらぬ。その転生者は名をキサラギというのじゃが、どういう意図かはわからぬがキサラギは漢字を他の者には教えようとはせんかったようじゃ。じゃから今ではほとんど伝わっておらぬし、ほとんどの者はその存在すら知らぬじゃろう。
じゃが今ですらキサラギの魔法はとても強力じゃったと言われておる。その魔法は炎や水を自在に操り、天候や時間すらも意のままにしたと聞く。」
……キサラギさんスゴすぎ!
何、固有魔法って!
転生した人ってそういうものなの!?
おれには!?
おれには何かなにかないのか!?
……料理スキル?
いるかい!
神様かい?
神様のイタズラなのかい?
だとしたらおれへのイタズラがハード過ぎないかい!?
もう少しぐらい優しくしてもいいと思わないかい!?
「ジロー戻って来るのじゃ。」
「はっ!?」
危ない。久しぶりにトリップしてた。
「ごめんごめん。続けて。」
「うむ。キサラギが存在したという文献は残っておっても漢字を使用したという文献はおそらく公には残っておらぬ。不思議な文字を使用したという程度じゃの。わしもハイエルフの爺様が持っておった手記で見かけたから偶然知っておるだけなんじゃ。」
「どちらにしても、おれにとってもこの世界じゃ意味を成さないってことだよね。固有魔法なんて持ってないし、ただ転生者って気付かれてしまう危険性があるってだけで。」
「ところがどっこいそうでもないんじゃよ。」
そう言うとアリスはピンと人差し指を立てる。
「前も言うたかもしれんが言葉には力がある。それと同じ様に文字にも力が宿る。人間が魔法陣に文字を書き込み、それを自分たちの力にしたように、文字の意味を知る者が文字を記せばその文字には少なからず力が宿るものじゃ。しかし、逆を言えば意味を知らぬ者にはそれはただの飾りにしか過ぎぬ訳じゃな。」
「どういうこと?」
「もしジローが火という字を漢字で書いたとしよう。その字はジローにとってはその文字だけで火を連想できるものじゃろ?じゃがわしがその文字を見よう見まねで書いたとしてもわしにはそこから火を連想することはできぬ。わしから見たらただの模様のようにしか見えぬ。」
おれが韓国語を見ても意味が分からないことと同じことなのかな?確かに他の国の言葉って勉強しないと、ぱっと見ただけじゃ何て書いてあるか分からないもんな。
「つまり、わしにとっては意味を成さぬものでもジローにとってはそれ相応の意味を持つものじゃ。」
「ふんふん。でもやっぱり意味は無くない?人に通じないなら言葉として価値が無いんじゃない?」
「それは会話手段としての言葉じゃろ?ならそれ以外の手段としてはどうじゃ?」
んーそれ以外か。
言葉っていうのは人と意思を交わすためのものじゃないだろうか。それ以外でいうと……何かを残す為の手段?記録を残したりノートに何かを書き込んだり……。
「秘密の記録を残したりとか?それとも暗号に使えるとか?」
「それも有りじゃが、ジローは魔法使いじゃろ?魔法使いとして何か出来るとは思わぬか?」
魔法使いとして……あっ!
「魔法陣か!」
「ふふ、そうじゃ。ジローがこれから魔法の勉強をすればいずれ魔法陣のことを学ぶ機会もあろう。」
「でも魔法陣を使うならこの世界の文字の方が簡単じゃないの?」
「確かにこの世界の魔法陣はすでにそれ自体で存在しておるからの、漢字を使った魔法陣を使用するとなればジローは自分で考える必要がある。
じゃがこの世界には今現在、漢字を知っておる者はほぼおらん。人間は国は違えど共通語を用いるし、エルフはエルフ語、魔族は魔族語を使い、わしらなんぞは文字という概念すらない。漢字を使うということはじゃ、それら全ての言葉を知っている者に対しても魔法陣の効果の秘匿、欺くことができる。それは戦いの中では大きな力となるはずじゃ。
もちろん使うタイミングや場面は限られるし、考えねばならんがな。使うことで利点よりも欠点の方が多いのならば使う価値もないしの。
もし漢字を使った魔道具を作れたならばそれも同様にとても大きな力となるじゃろう。
何よりもじゃ、」
そこで言葉を切るとアリスはにやっとしながら、
「わくわくせぬか?誰も知らぬ魔法使える可能性があるのじゃぞ?
もちろん簡単ではないだろうよ。自分で1から考えねばならんのじゃからな。そして、それを使用したとなればジローの取り巻く環境は大きく変わるじゃろうな。新しい魔法を産み出した者として称賛してくる者もたくさんおるじゃろう。しかしそれと同じくらいに妬む者もたくさんおるじゃろう。悪くすれば命を狙われるやもしれん。
じゃがそれでもわしはわくわくしておるよ。もしかしたらジローが新しいものを見せてくれるのではないかとな。ジローには何かを産み出せる可能性があるんじゃからな。もちろん無理強いはせぬよ。」
アリスがおれの肩をぽんと叩く。
「どうするかはジローにまかせるわい。どちらにせよわしらは協力を惜しまぬし、ジローの味方でいよう。」
ふふと笑うとアリスは呟く。
「羨ましいのう。ジローの未来は可能性で満ち溢れておるようじゃ。」
ユキを見ると、長い話に飽きたのかお腹を出して眠っていた。そのお腹を撫でてやると【キュ?】と声を出すけど起きることはなかった。
漢字か、まだまだやること、やれることがたくさんあるみたいだ。そのためには学ぶべきこともたくさんある。
これからどうするのか真剣に考えなきゃいけないな。
「漢字を知っておるというか、存在は知っておるというのかの。」
存在を知っている?
「以前、これまでも転生者がおったという話をした時のことを覚えておるか?」
「えーと、二人ぐらい居たんだっけ?すごく強かったとか。」
「そうじゃ。その二人に関しては、もう文献ぐらいしか残っておらぬのじゃがな。一人目の転生者はある不思議な固有魔法を使ったとある。それは漢字という文字を使った文字魔法と呼ばれておったそうじゃ。」
漢字ということはその人も日本人?
中国人という可能性もあるけど漢字というからにはおそらく日本人だろう。
「もしかして漢字はこの世界でも使われているの?」
「使ってはおらんな。そして、伝わってもおらぬ。その転生者は名をキサラギというのじゃが、どういう意図かはわからぬがキサラギは漢字を他の者には教えようとはせんかったようじゃ。じゃから今ではほとんど伝わっておらぬし、ほとんどの者はその存在すら知らぬじゃろう。
じゃが今ですらキサラギの魔法はとても強力じゃったと言われておる。その魔法は炎や水を自在に操り、天候や時間すらも意のままにしたと聞く。」
……キサラギさんスゴすぎ!
何、固有魔法って!
転生した人ってそういうものなの!?
おれには!?
おれには何かなにかないのか!?
……料理スキル?
いるかい!
神様かい?
神様のイタズラなのかい?
だとしたらおれへのイタズラがハード過ぎないかい!?
もう少しぐらい優しくしてもいいと思わないかい!?
「ジロー戻って来るのじゃ。」
「はっ!?」
危ない。久しぶりにトリップしてた。
「ごめんごめん。続けて。」
「うむ。キサラギが存在したという文献は残っておっても漢字を使用したという文献はおそらく公には残っておらぬ。不思議な文字を使用したという程度じゃの。わしもハイエルフの爺様が持っておった手記で見かけたから偶然知っておるだけなんじゃ。」
「どちらにしても、おれにとってもこの世界じゃ意味を成さないってことだよね。固有魔法なんて持ってないし、ただ転生者って気付かれてしまう危険性があるってだけで。」
「ところがどっこいそうでもないんじゃよ。」
そう言うとアリスはピンと人差し指を立てる。
「前も言うたかもしれんが言葉には力がある。それと同じ様に文字にも力が宿る。人間が魔法陣に文字を書き込み、それを自分たちの力にしたように、文字の意味を知る者が文字を記せばその文字には少なからず力が宿るものじゃ。しかし、逆を言えば意味を知らぬ者にはそれはただの飾りにしか過ぎぬ訳じゃな。」
「どういうこと?」
「もしジローが火という字を漢字で書いたとしよう。その字はジローにとってはその文字だけで火を連想できるものじゃろ?じゃがわしがその文字を見よう見まねで書いたとしてもわしにはそこから火を連想することはできぬ。わしから見たらただの模様のようにしか見えぬ。」
おれが韓国語を見ても意味が分からないことと同じことなのかな?確かに他の国の言葉って勉強しないと、ぱっと見ただけじゃ何て書いてあるか分からないもんな。
「つまり、わしにとっては意味を成さぬものでもジローにとってはそれ相応の意味を持つものじゃ。」
「ふんふん。でもやっぱり意味は無くない?人に通じないなら言葉として価値が無いんじゃない?」
「それは会話手段としての言葉じゃろ?ならそれ以外の手段としてはどうじゃ?」
んーそれ以外か。
言葉っていうのは人と意思を交わすためのものじゃないだろうか。それ以外でいうと……何かを残す為の手段?記録を残したりノートに何かを書き込んだり……。
「秘密の記録を残したりとか?それとも暗号に使えるとか?」
「それも有りじゃが、ジローは魔法使いじゃろ?魔法使いとして何か出来るとは思わぬか?」
魔法使いとして……あっ!
「魔法陣か!」
「ふふ、そうじゃ。ジローがこれから魔法の勉強をすればいずれ魔法陣のことを学ぶ機会もあろう。」
「でも魔法陣を使うならこの世界の文字の方が簡単じゃないの?」
「確かにこの世界の魔法陣はすでにそれ自体で存在しておるからの、漢字を使った魔法陣を使用するとなればジローは自分で考える必要がある。
じゃがこの世界には今現在、漢字を知っておる者はほぼおらん。人間は国は違えど共通語を用いるし、エルフはエルフ語、魔族は魔族語を使い、わしらなんぞは文字という概念すらない。漢字を使うということはじゃ、それら全ての言葉を知っている者に対しても魔法陣の効果の秘匿、欺くことができる。それは戦いの中では大きな力となるはずじゃ。
もちろん使うタイミングや場面は限られるし、考えねばならんがな。使うことで利点よりも欠点の方が多いのならば使う価値もないしの。
もし漢字を使った魔道具を作れたならばそれも同様にとても大きな力となるじゃろう。
何よりもじゃ、」
そこで言葉を切るとアリスはにやっとしながら、
「わくわくせぬか?誰も知らぬ魔法使える可能性があるのじゃぞ?
もちろん簡単ではないだろうよ。自分で1から考えねばならんのじゃからな。そして、それを使用したとなればジローの取り巻く環境は大きく変わるじゃろうな。新しい魔法を産み出した者として称賛してくる者もたくさんおるじゃろう。しかしそれと同じくらいに妬む者もたくさんおるじゃろう。悪くすれば命を狙われるやもしれん。
じゃがそれでもわしはわくわくしておるよ。もしかしたらジローが新しいものを見せてくれるのではないかとな。ジローには何かを産み出せる可能性があるんじゃからな。もちろん無理強いはせぬよ。」
アリスがおれの肩をぽんと叩く。
「どうするかはジローにまかせるわい。どちらにせよわしらは協力を惜しまぬし、ジローの味方でいよう。」
ふふと笑うとアリスは呟く。
「羨ましいのう。ジローの未来は可能性で満ち溢れておるようじゃ。」
ユキを見ると、長い話に飽きたのかお腹を出して眠っていた。そのお腹を撫でてやると【キュ?】と声を出すけど起きることはなかった。
漢字か、まだまだやること、やれることがたくさんあるみたいだ。そのためには学ぶべきこともたくさんある。
これからどうするのか真剣に考えなきゃいけないな。
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