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第1章 ~転生しました。~
彼女はアリス。
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キョトンの世界に旅立っていたお姉さんがようやく帰って来た。
「お主、本当にこの少年と暮らしておるのか。」
「くどいぞ。そうだと言っているだろう。」
「だがのう。そうは言うがの。お主あれほどに人間を嫌っていたではないか。ほれ。特に昔住んでおった霊峰に人間が攻めて来たときなどひどかったわ。わしが止めねばあの国は滅んでおったぞ。それほどにお主は我をわすれておった。」
「それは人間が攻めいって来たからではないか。あの霊峰は今まで住んできた中で居心地がよかったからな。少々やり過ぎたのは認めるが私の方が一方的に悪いわけではない。それに昔から言っているが私は人間が嫌いな訳ではない。私から干渉しようと思うほど興味がないだけだ。」
「そんなのほぼ一緒ではないか。親しい人間などおったことはないであろう。」
「今まで親しくなかったからと言って嫌いということにはならぬだろう。」
なんか昔話に花を咲かせているな。
おれが入るタイミングなんてなさそうだし、
「アシナ。おれ席をはずしてようか?」
おれが声を掛けるとお姉さんがこちらを向いてまたキョトンとしてしまった。
なんだかこのお姉さん美人だけど残念な感じがプンプンするな。
「今、お主なんと申した?」
「えっと、お邪魔そうだったので席をはずした方がいいかと思いまして。」
「そのあとじゃ。アシナとか申さなかったか?それはもしやこの狼の名だとは言わんじゃろうな?」
「いえ、そのまさかですが。」
するとお姉さんは、真顔になったかと思えば堪えきれずといった風に大きな声を出して急に笑いだした。
「はっはっは!アシナ!アシナとな!この狼が!この数百年名前も持たずにいた狼が!賢狼よ!よい名をもらったではないか!」
「耳元で笑うな。うるさいぞ。」
「これが笑わずしておられるか。こんな人の子と暮らしておるというのも信じられぬのに名までもらっておるとは。人の子よ。すまぬな。お主を信じてやることが出来なかったわしを許しておくれ。それほどまでにこの狼は人と関わってはこなかったのじゃ。」
そんな風に急に謝られた。
このお姉さんは残念な人かも知れないけど、悪い人ではないのかもしれないな。
「いえ。そんな。別に悪いことなんて。えーと、あなたはアシナとは昔からの知り合いなのですか?」
「アリクシル・エクシルじゃ。呼びにくければアリスと呼ぶがよい。親しき者は皆そう呼ぶからの。この者とはそうじゃの。腐れ縁とでも呼ぶかの。度々顔を合わせる仲じゃな。」
「何が腐れ縁だ。お前が暇をもて余した時にふらっと現れるだけではないか。」
「おうおう。そのようなことを言うではないよ。お主もいつも1人では寂しかろうと思うて会いに来てやっておるというに。のうアシナよ。くふふ。」
「腹の立つ呼び方だな。お前は名前で呼ぶな!体がむずむずするわ!」
「くふふ。まぁそう怒るな。お主もアリスと呼んでよいのじゃぞ?ん?」
「誰が呼ぶか!」
なんかこんなに感情を表に出してるアシナって初めて見るから結構新鮮かも。
それだけこの人には心を許してるってことなのかも。
「アリスさんは、」
「アリスでよいぞ。ここには我ら以外誰もおりはせぬ。固い言葉なぞ無用じゃ。」
アシナといい、このアリスさんといいこの世界の人はみんなこんなにフランクなんだろうか。
…多分違うな。アリスさんのことはよくまだわかんないけどどちらも常識とか関係無さそうな感じがプンプンする。
「じゃあアリス。アリスはこの近くに住んでいるの?おれがここに来てから結構立つけど初めて会ったから。」
「近くはないの。ここから北に向かって行くと街があるのじゃ。街というか都市かの。今はそこに身を寄せておる。それよりもお主じゃ。何故このようなところでこのような偏屈狼と暮らすこととなったのじゃ。おっと、それよりもまずは名前か。名は何と申すのじゃ?」
「あっ、ジローと言います。オオガミジローです。」
「ジローと呼べばよいのか?それともオオガミが名か?」
「あっ、ジローが名前。たぶんジロー・オオガミになるのかな。」
「ふむふむ。で、ジローは何故このようなところにおるのじゃ?」
「アシナに危ないところを助けてもらったんだ。それからアシナとここで暮らしてる。」
「何故ここで暮らすのじゃ。家族がおるであろう。何か帰りたくない理由でもあるのか?」
ちらっとアシナを見る。
転生したっていうのは言ってもいいのだろうか。
でも転生者ってあんまりいないって言ってたし、それを言うことで距離を取られるんだったら黙っていた方がいいのかな。
「ジローは転生者なのだ。」
言った!
アシナさん軽く言っちゃった!
「なんと転生者か!」
こっちは喜んでる!
すごい笑ってるよアリスさん!
「なるほどのう。この世界に来たところをアシナに拾われた訳か。」
拾われたって捨て犬じゃないんだから!
「同じ場所にいた者は皆盗賊らしき者に殺されていた。だから転生する前のジローの身元などはわからなかった。」
「何か手がかりになるものはなかったのかの?」
「それらしきものはほとんど残っていなかったな。そういえば家紋のようなものが入った剣が椅子の下に隠してあったな?」
「家紋が入った剣?知っておるものかもしれぬ。どれ。見せてみよ。」
するとアシナは返事もせずに剣を取ってきた。
「この鳥の入った紋章…どこかでみた気が…。むぅ。どこかでみたような気もするが思い出せぬ。すまんな。力になれそうにない。」
「大丈夫だよ。この世界での記憶は今のおれにはないし、それに今はアシナがそばにいてくれるしね。」
「なんと良い子なのじゃ。このこの。」
アリスに頭をわしゃわしゃされた。
「そうじゃ!代わりと言ってはなんじゃが、先ほど魔法の練習をしていたであろう。わしも魔法の世界に身を置く者。少しばかりじゃが助言をしてやろう。」
魔法!?
「ぜひ!」
「お主、本当にこの少年と暮らしておるのか。」
「くどいぞ。そうだと言っているだろう。」
「だがのう。そうは言うがの。お主あれほどに人間を嫌っていたではないか。ほれ。特に昔住んでおった霊峰に人間が攻めて来たときなどひどかったわ。わしが止めねばあの国は滅んでおったぞ。それほどにお主は我をわすれておった。」
「それは人間が攻めいって来たからではないか。あの霊峰は今まで住んできた中で居心地がよかったからな。少々やり過ぎたのは認めるが私の方が一方的に悪いわけではない。それに昔から言っているが私は人間が嫌いな訳ではない。私から干渉しようと思うほど興味がないだけだ。」
「そんなのほぼ一緒ではないか。親しい人間などおったことはないであろう。」
「今まで親しくなかったからと言って嫌いということにはならぬだろう。」
なんか昔話に花を咲かせているな。
おれが入るタイミングなんてなさそうだし、
「アシナ。おれ席をはずしてようか?」
おれが声を掛けるとお姉さんがこちらを向いてまたキョトンとしてしまった。
なんだかこのお姉さん美人だけど残念な感じがプンプンするな。
「今、お主なんと申した?」
「えっと、お邪魔そうだったので席をはずした方がいいかと思いまして。」
「そのあとじゃ。アシナとか申さなかったか?それはもしやこの狼の名だとは言わんじゃろうな?」
「いえ、そのまさかですが。」
するとお姉さんは、真顔になったかと思えば堪えきれずといった風に大きな声を出して急に笑いだした。
「はっはっは!アシナ!アシナとな!この狼が!この数百年名前も持たずにいた狼が!賢狼よ!よい名をもらったではないか!」
「耳元で笑うな。うるさいぞ。」
「これが笑わずしておられるか。こんな人の子と暮らしておるというのも信じられぬのに名までもらっておるとは。人の子よ。すまぬな。お主を信じてやることが出来なかったわしを許しておくれ。それほどまでにこの狼は人と関わってはこなかったのじゃ。」
そんな風に急に謝られた。
このお姉さんは残念な人かも知れないけど、悪い人ではないのかもしれないな。
「いえ。そんな。別に悪いことなんて。えーと、あなたはアシナとは昔からの知り合いなのですか?」
「アリクシル・エクシルじゃ。呼びにくければアリスと呼ぶがよい。親しき者は皆そう呼ぶからの。この者とはそうじゃの。腐れ縁とでも呼ぶかの。度々顔を合わせる仲じゃな。」
「何が腐れ縁だ。お前が暇をもて余した時にふらっと現れるだけではないか。」
「おうおう。そのようなことを言うではないよ。お主もいつも1人では寂しかろうと思うて会いに来てやっておるというに。のうアシナよ。くふふ。」
「腹の立つ呼び方だな。お前は名前で呼ぶな!体がむずむずするわ!」
「くふふ。まぁそう怒るな。お主もアリスと呼んでよいのじゃぞ?ん?」
「誰が呼ぶか!」
なんかこんなに感情を表に出してるアシナって初めて見るから結構新鮮かも。
それだけこの人には心を許してるってことなのかも。
「アリスさんは、」
「アリスでよいぞ。ここには我ら以外誰もおりはせぬ。固い言葉なぞ無用じゃ。」
アシナといい、このアリスさんといいこの世界の人はみんなこんなにフランクなんだろうか。
…多分違うな。アリスさんのことはよくまだわかんないけどどちらも常識とか関係無さそうな感じがプンプンする。
「じゃあアリス。アリスはこの近くに住んでいるの?おれがここに来てから結構立つけど初めて会ったから。」
「近くはないの。ここから北に向かって行くと街があるのじゃ。街というか都市かの。今はそこに身を寄せておる。それよりもお主じゃ。何故このようなところでこのような偏屈狼と暮らすこととなったのじゃ。おっと、それよりもまずは名前か。名は何と申すのじゃ?」
「あっ、ジローと言います。オオガミジローです。」
「ジローと呼べばよいのか?それともオオガミが名か?」
「あっ、ジローが名前。たぶんジロー・オオガミになるのかな。」
「ふむふむ。で、ジローは何故このようなところにおるのじゃ?」
「アシナに危ないところを助けてもらったんだ。それからアシナとここで暮らしてる。」
「何故ここで暮らすのじゃ。家族がおるであろう。何か帰りたくない理由でもあるのか?」
ちらっとアシナを見る。
転生したっていうのは言ってもいいのだろうか。
でも転生者ってあんまりいないって言ってたし、それを言うことで距離を取られるんだったら黙っていた方がいいのかな。
「ジローは転生者なのだ。」
言った!
アシナさん軽く言っちゃった!
「なんと転生者か!」
こっちは喜んでる!
すごい笑ってるよアリスさん!
「なるほどのう。この世界に来たところをアシナに拾われた訳か。」
拾われたって捨て犬じゃないんだから!
「同じ場所にいた者は皆盗賊らしき者に殺されていた。だから転生する前のジローの身元などはわからなかった。」
「何か手がかりになるものはなかったのかの?」
「それらしきものはほとんど残っていなかったな。そういえば家紋のようなものが入った剣が椅子の下に隠してあったな?」
「家紋が入った剣?知っておるものかもしれぬ。どれ。見せてみよ。」
するとアシナは返事もせずに剣を取ってきた。
「この鳥の入った紋章…どこかでみた気が…。むぅ。どこかでみたような気もするが思い出せぬ。すまんな。力になれそうにない。」
「大丈夫だよ。この世界での記憶は今のおれにはないし、それに今はアシナがそばにいてくれるしね。」
「なんと良い子なのじゃ。このこの。」
アリスに頭をわしゃわしゃされた。
「そうじゃ!代わりと言ってはなんじゃが、先ほど魔法の練習をしていたであろう。わしも魔法の世界に身を置く者。少しばかりじゃが助言をしてやろう。」
魔法!?
「ぜひ!」
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