赤毛の不人気令嬢は俺様王様に寵愛される!?

LUKA

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 この物語の主人公であるマージョリー・マーロウは、先祖代々続く名門貴族出身の娘だ。

しかしまっとうな家柄に生まれつきながら、まっとうな令嬢が経験する華々しい社交はしたことがない。

なぜならば彼女は血のように赤々と燃える、豊かで美しい赤毛をしていたからだ。

紛争やいさかいの絶えない荒々しいこの時代、まれにみる彼女の赤い頭髪は生臭い血を連想させ、人々からは悪魔の象徴とまであれた。

よって彼女は年頃にもかかわらず異性からは避けられ、求婚どころか口説かれることさえ皆無に等しかった。

また運の悪いことに、マーロウ家を継ぐはずだった二人の嫡男、マージョリーからすれば兄にあたるのだが、一人は戦争で命を落とし、一人は行方不明と、悲惨な末路をたどったマーロウ家の兄弟のこともあって、不吉な赤毛を持つマージョリーはますます隅へと追いやられてしまった。

このままでは家名までもが汚されてしまうことを恐れたマージョリーは、王族のために城に仕える決心をした。

実は彼女は貴族の娘として高い教育を受けていたおかげで、字の読み書きははじめ、外国語も扱えたことで様々な書物を読み漁り、特に薬草や傷の手当といった医術の知識が豊富にあった。

よって彼女は城かかりつけ典医の助手という形で、城の奥まったところにある、人目のつかないひっそりとした半地下の部屋で宮仕えの生活を始めた。

この年老いた侍医のほかにかかわる人間は格別おらず、マージョリーは自身の赤毛をからかったり、あざけわらったりされる以前の生活から離れて、心穏やかに暮らしていた。


 マージョリーは同じ城に住んではいるが、この城の主を遠目でしか見たことがない。

しかし彼はたいそう侍女たちの人気が高いらしく、彼女は最近世代交代したばかりの若い王の噂をよく耳にしていた。

そんなあるとき、彼女の住まう半地下の空間に一人の珍客が来訪した。

偶然にもその時目付の典医は席を外しており、薬草や小瓶、分厚い本や茶けた紙などが乱雑する埃っぽい医務室にマージョリー一人がいた。

彼女はいつもこの部屋を出て人目に触れるときは、なるべく自分の髪色をとかく言われないがために、ターバンをくるりと巻いて隠しているのだが、めったに客の来ないこの部屋医務室では、気を抜いて髪を隠していなかった。

石造りの階段を降りる靴音が響き、次の瞬間には彼女の目前に一人の精悍な男が立っていた。

ハッと気が付いた時にはすべてが遅かった。

「――・・・!」

髪は隠さずにむき出しで、しかも男は土埃で薄汚れてはいたが、相当身分が高いようだった。

男は帯剣している上に、上等な絹のシャツを着て、よくよく見ると王家の紋章が彫られた装飾品を身につけていた。

「――あっ・・・!」

瞬間マージョリーはこの男がこの国の主、ネス王であることを直感的に見抜き、委縮した。

そんな彼女をよそに、ネスは典医のありかを訊ねた。

「マクレーンはどこだ?」

マクレーンとは王族かかりつけの老医者である。

「あ、あの――・・・」

マージョリーは行先を告げられていなかったので、自分が手当てを承ると申し出た。

「ふん」

するとネスはどっかとベッドに腰を下ろすと、シャツを無造作に脱ぎ捨て裸になった。

薄い筋肉で引き締まった体の上には、できたばかりの切り傷やかすり傷がにじんだ血とともに浮き上がっており、マージョリーは髪を隠すのも忘れて、慌てて手当を施した。

「――・・・」

するとネスはさりげないしぐさで治療にあたる彼女の赤い髪に指を通したので、マージョリーは激しく狼狽した。

「・・・名はなんという?」

そしてネスが指を髪に通したまま、マージョリーの名前を訊ねたので、マージョリーは顔を赤らめて、恭しく自分の名前を明かした。

「マ、マージョリーと申します」

するとネスはまだ治療中の彼女の腕を強引に取る(「きゃ!?」)と、彼女を後ろからしっかと抱きしめた。

思いもがけない状況に、マージョリーの胸は激しく脈打った。

「へ、陛下――・・・」

そしてネスは何を思ったか、マージョリーに突飛な命令を下した。

「お前が気に入った。マージョリー、俺のものになれ」

「!?」

そしてネスは改めて彼女を力強く抱くと、うっとりとした声色で口を切った。

「・・・この柔らかな抱き心地の良い身体――・・・」

「!」

マージョリーの驚いたことに、ネスはひっそりと手を彼女のスカートの中に入れ、彼女の敏感な聖域を何ともいやらしい指使いで撫でていた。

「・・・少し触れただけでみだらな蜜がしみ出してくる淫乱な身体――・・・」

「~~お、おやめくださ・・・♡♡!」

「どちらも俺好みだ」

「~~~ッッ♡♡!!」

「マージョリー・・・お前は俺のものだ」
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