聖女の加護

LUKA

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くすぶった火の側で、黒いフードを目深にかぶり、立膝を立てる魔人の男は、やや尖った耳で、小気味よく繰り返される従者のいびきを横に聴きながら、夜明け前の静寂に耽っていた。洞穴は薄暗く、消えかけた火だけが、彼とその辺りをぼんやりと照らしていた。男は翼の生えた愛馬を待っており、魔物は一匹で、森の草を食みに行っていた。滴り落ちた露が、くりぬかれた窟の中に、一本調子に響き渡る一方、深い森には付き物の白い朝もやが、妖しい生き物のように、木々の間を蠢くのが見えた。誰もまだ眠りから覚めていない、日が上る直前のひっそりとした静謐な時間が、落ち着き払ったアッシュは好きだった。まるで冷静沈着を絵に描いたような彼は、多くの男が抱く明るい情熱とかやりがいよりも、ほの暗い陰や闇を好み、しかしそれといって、黒々としたそれにのまれてしまうくらい、彼の精神は脆弱でなかった。人々(特に普通の人間たち)は、不穏なそれらを大いに忌み嫌うが、何でも吸い込んでしまうそれは、安穏なしじまを後に残した。静けさは、彼の頭の中の濃霧を晴らし、物事を明澄に考える素晴らしい機会を与えてくれる――。ある意味、それは一種の瞑想に近く、研ぎ澄まされた神経は、男の心身における鋭敏を養い、すくすくと育まれた豊かな感性と共に、実に代えがたい彼の大きな魅力となった。もうじき夜が明ける――。アッシュはすっくと立ちあがると、クロムを連れ戻しに、幻想的に漂う霧の中へ、漆黒のブーツを履いた足を踏み入れた。
 荘厳な樹海は、正に神の領域たる重々しい風格が宿り、何人たりとも安直に寄せ付けない重苦しさと、幻惑的な幽玄に満ち満ちていた。それもそのはず、種々の生命が繫栄するこの森は、偶然迷い込んだ哀れな人間を、幸か不幸か、更なる果てしない迷宮へと誘い、その結果、生殺与奪の緑の死神から、誰一人として帰ってきた者はいなかった。ゆえに、恐れをなした皆々は口をそろえて言った。「汝命が惜しくば、あの恐ろしい大森林には近づいてくれるな。なぜならば、不思議なそこには、絶世の美女の姿をした神秘が棲んでいて、大胆にも、一度彼女の懐へ足を踏み入れた者は、賢者だろうと愚者だろうと、だれ彼構わず、危険なほど美しい彼女の虜にされ、めろめろと骨抜きにされた挙句、魂を抜き取られてしまうからだ。恨みがましく、非常に嫉妬深い女は、彼女と行動を共にしない者や、彼女から目を逸らす者が、甚く気に入らない。おお勇気ある若者よ、しかるに少しでも彼女を知ったらば、お前のすべてを捧げよ。どんなに知略に長けていようとも、お前は決してかの女から逃げられない。神秘はお前が踏む落ち葉まみれの土に宿り、柔らかくむした苔に宿る。虫が鳴く茂みにも宿るだろう。幹や枝葉を伝う雫にも女は宿り、赤く、または黒く色づいた木の実を啄む鳥にも宿る。立派な大樹はもとより、お前ぐらいの高さしかない低い樹々にも宿るだろう。彼女は色鮮やかな花や、枯れ木を床に育つキノコに宿り、お前の目を惹く。吹く風や、それによって運ばれる種子にも、女は宿っている。互いに食い食われる動物にも宿り、お前ののどを潤すだろう、しみ出る水にも。岩石にも宿った彼女はすべてを知っている。彼女という霞に取り巻かれたお前の、何から何までお見通しなのだ」と。だがしかし、もやに包まれた樹海を悠々と歩くアッシュからすれば、森そのものが一つの魔物だと考えていたため、親しみしか覚えたためしがなかったし、特異な魔人の彼は、今いる場所が分からなくなる恐怖に苛まれることもなかった。だから、ごく普通の一般人にとって、うっそうの森を含め不気味な怪物は、全く唾棄すべき存在だったとしても、魔の力を自然と生まれ持った男からすれば、同じ根源や血を分かち合った、切っても切り離せない兄弟のように思えてならなかった。
 夜明けに際して、ちっちゃなヤマネは今日だけのねぐらを探すため、葉っぱの生えていない枝の裏側をすばしこく伝い、たなびく白いカーテンで身を隠しながら、群れる鹿たちは黙々と、それぞれの美脚の下で生えた、朝ごはんの青草を食んだ。ダンゴムシやミミズ、カタツムリ、トカゲは、粘菌の生えた枯れ葉の下をごそごそと蠢き、細長い蛇が、音もなく彼らの傍らを通り過ぎていった。高い梢に留まった梟は、野ネズミがせかせかと這う地面を、つぶらな瞳でじっと見下ろし、寝る前にもうひと食事するか思い悩んでいた。人知れず大きな蝶が、実った森の恵みを背にひらひら舞うと、のど袋を膨らましたカエルが、苔むした岩の下で鳴いた。土壌に棲む、目に見えない細かな微生物が、有機物(死んで腐る物体)を分解してできた、ふかふかの土を踏みしめながら、水蒸気の湿り気を浴びたアッシュは、樹海の多種多様な生命の間に、彼の天馬を見出そうとした。林立した寸胴の木々は、すべすべしたものから、ざらざらの木肌、厚い樹皮を晒すものもあれば、水気を含んだ地衣類がびっしりと貼りついたもの、病に侵され、ねじ曲がった奇形のもの、落雷や暴風で折れたもの、黒ずんだ朽ち木がそびえ立ち、寄生植物を始め、つる植物に巻き付かれていた。方々に伸びた枝の先では、様々な形の葉がたっぷりと生い茂り、降り注ぐ太陽をほんの一筋でも浴びようと、広大な天を一心に覆い尽くしていた。そんなおびただしい木立の根元で、下生えを食む黒馬の、太く滑らかな長い首を、いい加減見つけてもよさそうなものなのに、彼の灰色の眼に、ちっとも入れられなかったアッシュは口笛を吹き、クロムを呼んだ。だがしかしながら、おかしなことに、通常であれば、一分と経たず彼の耳に聴こえてきた、駆ける蹄の快活な音が全然返ってこず、よって、すぐさま異変を感じ取ったアッシュは、黒い眉根を不安げに寄せた。
 「どうした、クロム?戻ってこい」
 視界を遮る霧の中、真っ黒な頭巾を下ろしたアッシュは、森のどこかにいる愛馬へ呼びかけた。しかし、ひそやかな樹海は依然と黙秘を守り、答えのない問いかけだけが虚しく響くと、男はもう一度、口笛を吹いた。そして、変わらず応答がなかったので、呼び寄せる考えを諦めかけた時、突如として、人間の声高な悲鳴が、馬のいななきと一緒に、いきなり魔人の耳に飛び込んできた。
 「うわぁぁぁーーー!!」
 全く予期せぬ意表を突いた悲鳴が、並々ならぬ恐怖と驚きを示した次の瞬間、緊迫と吃驚に直ちに苛まれたアッシュは、声といななきのした方へ、思わず走り出していた。何か面倒なことや、危ない事件に、クロムが巻き込まれているのではないかと、焦った彼はそれが気がかりだった。立ち込める靄へ突っ込み、風を孕んだ漆黒のマントが勢いよく翻る中、動転した人の恐怖に張り詰めた声と、馬の困惑したいななきが大きくなるにつれ、アッシュの懸念がどんどん肥大していった。
 (第一、なぜ人がいる?)
 駆られる焦燥でじりじりしつつも、不安なアッシュは考えた。だがしかし、実際のところでは、彼のクロムに何かあったらただではおかない決心が、許されざる客人についての意見よりも、忙しく走る彼において、はるかに重大だったから、ついに現場に行きついたアッシュの念頭には、首を横に振って動揺を見せる、愛馬の無事だった事実しか入っていなかった。それから彼は、迷惑そうにいななくクロムの長いしっぽが、枯れ葉まみれで横たわった人間の男にしっかと捉まれ、情けない悲鳴をしきりと上げながら、青ざめた不細工な顔を、多大な恐怖に引きつらせた男の短い片脚が、サテュロスに捉まれている現実を認めた。
 「ひい!ひい!ひぃぃぃ~~~っ!!」
 向こうの木立に現れたアッシュに、とんと気が付かなかった男は、恥も外聞もなく叫び、必死の助けを腹の底から呼び求めた。「誰かーッ!助けてくれェーッ!」
 だらしない無精ひげを、顎のたるんだ輪郭に伸ばした小太りの男は、サテュロスの捕縛から逃れようと、じたばたと懸命にもがいていた。したがって、そんな彼が暴れるにつれ、めくれた男の上衣から、ぽてっと突き出た醜い太鼓腹が、ブルンブルンと上下に気味悪く揺れた。一体サテュロスは、醜い人間の小男を捕まえて、何をしようというのだろう。アッシュは思惑を探ろうと、銀色の双眸を魔物に移した。するとサテュロスは、彼が普段目にしてきたサテュロスとは一味違っていた。だからこそ、アッシュは驚愕に剥いた自分の双眼を大層疑いながらも、山羊の角・耳・脚・尾を持った人型のモンスターから、信じられない眼差しが一秒たりとも離せなかった。基本的に意地の悪いモンスターたちの中でも、比較的温厚な魔物は怒り狂った様子で、完全に我を忘れているようだった。いつもは薄くついていた肉が、不自然に盛り上がり、アッシュの肉体をしのぐことはおろか、サイクロプスのサニー並みに筋骨隆々としていた。健康的な肌色だった皮膚は、まるでうっ血したかのように、赤、青、紫、黒でまだらに染まり、はじめから焦点が合っていない点はいわんや、ぎょろりと剥いた白目が、恐ろしい真っ赤な血走りと共に、意識のはく奪をありありと物語っていた。血の気の引いた顔面は蒼白だったが、捕まえた男を滅茶苦茶にしてやらんばかりの気概と興奮が、らしくない残忍な表情から読み取れた。
 「あっ、そこのあんた!頼む後生だ、助けてくれぇ~ッ!」
 無我夢中で抗っていた人間の小男は、ようやくもう一人の男に気が付くと、藁をも掴む熱心さで縋った。だがしかし、とはいえども、おそらく血も涙もない、それこそ勇者でも英雄でもなかったアッシュは、逼迫ひっぱくした彼を救うつもりは毛頭なかったが、男はクロムを離さなければならなかったし、気違いじみたサテュロスも、正気に戻る必要が十二分にあった。一切の気後れや、よどみの皆目ない速やかな足取りで、アッシュは着々と歩み寄りながら、鈍く光る銀のチェーンベルトを回した腰に提げた、地味な革製の鞘から、黒い魔剣を静かに引き抜いた。丹念に黒曜石を磨き上げたかの如く、刀身のツヤツヤと黒光りしたロングソードは中太で、点々と紫水晶が埋め込まれていた。握りやすい銀製の柄は円く、先頭は平らな円盤状をしていた。鍔に当たる銀の剣格には、技巧を凝らした彫り物が施されていた。視線を留めたまま、アッシュは足元に転がった石を拾い上げると、乱心の魔物目がけて、勢いよく投げた。一直線に、石はサテュロスの見事な角に当たり、ゆえに、とうとうモンスターの注意は逸れ、最終的にアッシュという邪魔者を認識させた。それからサテュロスは、暗褐色の長い爪の生えた手から、無様な小男の片脚を離すと、狂ったようにけたたましく吠えた。異常に発達した牙を露わにした獰猛な咆哮は、夜明けの閑静な空気を切り裂き、森の動物たちを大変驚かすと同時に、怯え切った小男を心底震え上がらせ、油断ならないアッシュの警戒心を一層募らせた。次いで、縄張りや発情期の争いを雄同士が挑むらしく、サテュロスは先の鋭利な角を突き出して、一目散に黒ずくめの魔人へ突進してきた。寸前のほんの束の間、アッシュは剣を放り出し、狂暴化したモンスターと素手で取っ組もうかと考えたが、相手はサイクロプスのサニーほど逞しかったので、ちょうど勝ち目はなさそうだと考え直し、結局魔剣で迎え撃つことにした。しかしながら、勇んだ攻撃を受けようとして、アッシュは剣を斜に構えたものの、今はムキムキのサテュロスの全体重と速度を載せた頭突きは、踏ん張ることはおろか、そのまま魔人の男を後ろへ吹っ飛ばした。
 「ぐっ!」
 外套の羽織った背中を、とある木の幹に強かに打ちつけたアッシュは、痛みと衝撃に堪らず低く呻いた。そして、手から魔剣が不意に零れ落ちたとたん、禍々しい雄たけびを、またしても上げたサテュロスは駆け出し、葉を落とす樹木ごとアッシュを捻りつぶしてしまおうと、赤黒い二本の太い腕を突き出した。間一髪、何とか体勢を整えたアッシュは急ぎしゃがみ、おぞましいモンスターの強力な一撃をかわしつつ、落とした魔剣をサッと握りしめた。ひどい衝撃でへし折れる枝、鋭い爪によってはがされる樹皮、勢い余った指が木の内側へめり込むなど、諸々の不快音が頭上で響く一方、隙のできた腰から脇にかけて、手加減したアッシュは斜めに切りつけた。したがって、初めて傷を負ったサテュロスは、狼狽と軽い苦しみのうめき声を漏らし、憤怒に燃えた顔つきで、再びアッシュに向かい直った。鮮やかな赤い血が浅い傷口から垂れ、もう我慢ならないモンスターは、明らかな殺意をもって、憤然と敵につかみかかった。だからさすがのアッシュも、目も留まらず繰り出される拳を、一つ一つ剣身で受けては流すだけで、いっぱいいっぱいだった。
 「サテュロス!わが同士、一体どうしたんだ!俺はお前と争いたくはない!何がお前に起きた!話せ!」
 間髪入れずの連続攻撃を激しく受けながら、じりじりと後ずさりするアッシュは、魔物へ盛んに呼びかけた。だがしかし、男の懸命の呼びかけも虚しく、分別が消滅し、言葉も忘れてしまったらしいモンスターは、おどろおどろしい粗暴な叫びを何度も上げるだけで、全く別な生き物へと変わり果ててしまっていた。
 (考えろ、頭を使え!何故だ、魔族俺たちの声の届かない魔物など、いるものか!)
 苛立ちと焦りを覚えたアッシュは、黒い刀剣を右左と猛然と振りながら、頭を必死に振り絞り、不可解なサテュロスに対して、おおよその見当をつけようとした。モンスターは本当に様子がおかしい。不思議と倍増した筋肉が時折痙攣し、身体は毒々しいまだら模様だ。おまけに、盲目的に襲い掛かっては、事切れるまでの徹底的な破壊に憑りつかれている。闘志が異様にみなぎり、高度な魔法を用いる魔人の彼を、圧倒するほどの戦闘能力を示している。目まぐるしい頭の中で、アッシュは今まで読んできた魔術書や、ありとあらゆる魔物に関する古文書のページを素早く捲った。しかし、目当ての文献はまだ見つからなかった。
 「ウガァアァアーーー!!!」
 業を煮やしたサテュロスの唸りが、霧の晴れない曇り空に向かってビリビリと響き渡り、猛撃の手が更に速まった。腕、胸、首、肩、顔と、暗褐色の長い爪が、猛攻に次第と追い付かなくなるアッシュの肌を、次々と切り裂いていく。反撃の兆しもなく、真っ赤な血を流したアッシュは、ズルズルと後退するまま、密生したやぶへと追い詰められた。すると、しかしながら、例の黒っぽい紫色をした妖しい紋章が、アッシュの傷ついた額に、たちまち浮かび上がると、辺りを薄くたなびいていた白い霞が、追撃するサテュロスと彼との間に突然立ち込め、標的の黒装束をもうもうと隠してしまった。当然、相手をいきなり見失ったモンスターは拍子抜け、首を絶えず横に振って、血眼で探した。続いて、見通しの悪い靄の中、口笛がどこからともなく鳴ったかと思うと、次の瞬間、全くサテュロスの魂消たことに、大きな翼を広げ、羽ばたく漆黒の牡馬が、戸惑う彼を上空から襲い、角を生やした魔物は、踏むわ蹴るわの、蹄の躊躇なしの急襲にすこぶる慌てた。舞い散る無数の羽と、反撃のかなわない口惜しさに、しばしサテュロスが気を取られている間、何とかしなければならないアッシュは気持ちを落ち着け、策を練った。クロムの果敢ないななきと、絶え間ない羽音、それからサテュロスの、じれったい呻きを横に聴きながら、目を閉じた魔人の男は意識を集中した。奥深く、意識の深層まで沈み込むと、かつての父の教えが自動的に反芻された。
 「いいか、アッシュ。これだけは覚えておくといい。お前やお前の仲間が、もし身体の具合が悪かったら、まず血液を調べてみるといい。何よりも血はいろんなことを教えてくれる。ほら、青ざめた不健康な奴の顔には、血の気が全然ないだろう?それにだ、アッシュ。あの人間たちでさえ分かっているから、わざわざ奴らは身体を自分で切ったり、ヒルに吸わせたりするのさ。いいかい、俺の賢い男の子。血の巡りが滞ると、誰しも不調をきたすんだ。多くても少なくてもいけない。冷やしても熱してもいけない。循環する血は常に新鮮で、清浄でなくてはならない――」
 真黒い扇に縁どられた目蓋を開き、赤い切り傷だらけの男の、涼しい灰色の双眼が再び現れると、アッシュは手にしていた魔剣を目の前に掲げ、闇色の刃を見た。サテュロスの脇腹から出た血がこびりつき、生乾きの緋色の血はどす黒く変色していた挙句、鼻が曲がりそうなほど、どぎつい悪臭が漂っていた。指に取ってみると、大変な高熱を帯びた血は、刺すような激痛を瞬時にもたらし、魔人の端正な面持ちを苦しみに歪めた。集まった一滴が、藪の葉の一枚へ偶然滴り落ちると、穴の開いた緑葉は、毒の強烈な威力を暗に伝える煙をぶすぶすと上げ、どす黒く焦げながら、褪せた茶褐色に腐ってしまった。
 可哀そうなモンスターは毒に侵されていたのだ。悪い毒は巡る血液によって全身に運ばれ、脳を侵したのだ。不幸なサテュロスは自我を失ったばかりか、力強い毒は、彼の中の攻撃性や筋力を一時的に高め、残虐な破壊の限りを尽くすよう操ったのだった。そして、どういう経緯があったか知らないが、居合わせたのか、それともたまたま出くわしたのか、とにかく狂った魔物は人間の小男を襲い、とてつもない恐慌に見舞われた男は、クロムを道連れにしようと、尻尾を頑なにつかんでいたようだ。
 やるせないアッシュは一人毒を呪った。ああ、未知あるいは既知の病気ならともかく、あの忌々しい毒が同胞を蝕んでいたなんて――。そもそもの話、どうしてサテュロスは毒なぞに侵された?畜生!だがしかし、毒を制する方法など、奇跡と解毒薬を除いて、この世にたった一つしかありはしない――。
 遂に魔法の効果が切れ、暴れるサテュロスを巻いていた白煙が消えた。夜はいつの間にか明けていた。利口なクロムは攻撃を直ちにやめると、彼の偉大な主人と、闘争心に燃えたモンスターとの間に、一騎打ちの果し合いを残した。迷いはなかった。漆黒の魔剣を正面に構えたアッシュは、彼の手で正すべき魔物をしっかりと見据えていた。そして、ただならぬ破壊衝動のまにまに、狂乱のサテュロスは、猛り狂った闘牛のように猪突猛進と走り出したが、向かってくる鉄砲玉を見つめたまま、アッシュはその場を微動だにしなかった。が、着ていたマントをすぐにはぎ取ると、紅い垂れ布を提げた闘牛士らしく、直撃を上手く避けたアッシュは、片手に持った黒い外套で、突っ込むサテュロスの頭首を覆い(布はモンスターの尖った角に突き刺され、ビリッと破けた)、視界や身動きを一瞬だけ奪うと、逆の手で握った魔剣を素早く振りかざし、ほぼ垂直に刃を振り下ろした。
 生暖かな血が軽くしぶき、アッシュの凛々しい顔を汚した。刎ねた首が、シダの生えた地面へ急いで落ちるのとは裏腹に、まずサテュロスの膝がぐらりと崩れ、やがて相次いで、ゆっくりと傾いた肢体がドサッと倒れた。
 自分の手で葬った魔物を、静かに見下ろす銀色の瞳は冷ややかで、一切の私情を排していたが、胸で渦巻く複雑な思いが、同族を殺めた男の、簡単には言い表せない顔つきに、確かに現れていた。それから、魔人の硬い表情に、悼みがじわじわと滲んできたら、新手のモンスターたちが、どこからともなく続々と、かつひっそりと、この場へ出没してきた。コダマたちが集まってきたのだった。普段は、森の王者と言っても差し支えない、目を張るほど立派な巨樹に棲みついている、大勢の小さな魔物は、髪の毛のない頭、線のはっきりしない肢体を持ち、その白く濁った見た目は、ふわふわもこもこの泡のようで、まさしく神出鬼没の珍しい生き物たちだった。全くもって影の薄いコダマたちは、まるで始めから居合わせたかのように、近くの樹々や茂み、はたまたクロムの黒い頭や背中の上に、ちょこんと立つか座り、ぽっかり空いただけの空虚な目線を、息絶えたサテュロスへそれぞれに注いでいた。対するアッシュは、そんな彼らにさほど驚く様子も見せず、血に赤く染まった紫水晶と、銀細工の施された魔剣を、腰に提げたチャコールグレーの革鞘へ収めると、サテュロスの角で破れたマントを羽織り直した。
 青々とした枝葉を通り抜けつつ、清々しい風が爽やかに吹き渡り、空飛ぶ天馬へ歩む男のずたずたになった外套や、小さなコダマたちの泡の頭身が不規則に揺れた。アッシュが近づくと、細かな気泡がパッと弾けるように、クロムの上にいたコダマの姿かたちが早めに消え、次の瞬間には、泡の小人は芽が出た土の上にいた。そして、何も言わずにアッシュがクロムへ跨ると、コダマたちはコダマたちで、去る一人と一頭に対して、格別これといった関心も払わず、地に突っ伏したモンスターへ、ぞろぞろと更に近寄っていった。次いで、その場を離れるアッシュの灰色の尻目に、たくさんの小さくて白っぽい魔物たちが、死んだサテュロスの周りで輪を描く様が入った。城の前門を守る、巨大で厳めしい門扉のモンスター、ゲートから聞き及んでいた彼は、コダマを理解していた。実のところ、何を隠そう、かくいうゲート自身もコダマであり、昔話を半信半疑に聞いていた少年時代のアッシュと反対に、大真面目に彼が言ったところには、コダマは長い年月を重ねてきた長寿の大径木を好み、また棲み処にするが、まれに彼らと木は一体化するのだという。よって、コダマと一体化した木は言葉を覚え、今現在の彼のように流ちょうに話すのだそうだ。しかし、ねぐらの古木として関わってきたゲートは、コダマの使う言語は、原則として彼らの間でのみ通じることや、日常的にシャボン玉を浮かべる彼らは、大好きな気泡が弾けるだけで、とても面白がるくらい、無邪気で幼稚な魔物だけれども、コダマのみならず、別のモンスターたちをも思いやる心があることを知った。故に、すこぶる奇遇にも、若かりし日のアッシュの祖父が、直下した雷電のせいで、見るも無残な真っ二つに割けた、言語を解する大木だったゲートの前を通りがからなければ、場を後にしているアッシュは、コダマたちが彼らなりに亡き同胞を弔っているのだと、感じることさえ叶わなかっただろう。
 「――クラムボン」
 ふと、思い出したかのように、やがてコダマの一匹がぽつりと言った。すると、仲間に感化されたためか、あるいは同調するらしく、「クラムボン」「クラムボン」と、周りのコダマたちも口々に連呼を始めた。ビーズのようにぽっかりと開いた、いくつものがらんどうの眼差しは、それぞれ注ぐ魔物から決してついて離れず、ただひたすら「クラムボン」が、現れては消えるあぶくのように、次から次へと小うるさく弾けた。
 「――クラムボン・・・シンダ」
 ついに、ある一匹のコダマが、見たままの現状を告げると、クラムボンの合唱に終止符が打たれた。
 「シンダ」
 「シンダ?」
 「ナゼ」
 「ナゼ」
 「――ドク」
 「ドク?」
 「バイキン」
 「バイキン」
 「カマレタ」
 「カマレタ?」
 「・・・アイツ」
 と、今までサテュロスの亡骸を見ていた、コダマの小さな白い頭が、ゆっくりと背いたので、各々はメレンゲみたいなふわもこの頭を、くりぬかれた視線ごとそちらへ動かした。見るとその先には、すでに木立の中に姿を消した、黒ずくめの人馬をいそいそと追いかけている、中背で小太りな男の背中があり、そして次第に遠ざかるそれは、落ち葉や枯れ葉がまだついていて、短足の男が不格好に走る度、雑草が伸びた地面へハラハラと舞い落ちた。

闇夜の精力的な活動を終え、光零れる朝から休息に入るコウモリの、ぶら下がった洞窟の中、干しブドウを混ぜた乾パンに齧り付いていたリサイクルは、軽いひょうたんの水筒に満たした湧き水で、渇いたのどを時折潤し、真っ黄色に熟成したチーズの包みを開けようとしていた。がしかし、苔むした森の土をのしのしと踏みしめる、蹄のしっかりした足取りに加えて、ぽきっと小気味よく折れる小枝、がさがさと揺れる草むらの音が、この老いた小鬼の、鋭く突き出た二つの耳まで届いたために、従者は茶色のシミと皺だらけの手を止めると、チーズを肩掛けカバンへ突っ込み、よっこらしょと立ち上がった。
 「お戻りでしゅか、アッシュしゃま」
 冷たい岩石の暗い洞穴と打って変わり、東から温かに照らし出される緑が、色鮮やかな外を見上げたしもべは、馬上の主人へ言った。
 「ああ。待ったか?」
 と、あたかも何事もなかったらしく、淡々と返すアッシュだったが、おお、目ざとい藪にらみのモンスターはいち早く、マントも肌も傷だらけの魔人から、何事かを機敏に察知し、いつもの醜いしゃがれ声を荒げた。「アッシュしゃま、どうしたのでしゅか、しょずは!」
 「別に何でもない。こんな傷、どうってことないさ」
 と、いかにもアッシュはさらりと受け流したが、そんな澄ました平静の裏に隠れた事件が気になるゴブリンは、しつこく食い下がった。「『何でもない』!アッシュしゃま、よろしいでしゅか!もし――。いいえ、たとえ!お強いあなたしゃまの、全く仰る通りだったとしても、ずはず。いておられましゅか?でしゅから、侮られるはもとい、頭からめつけてはなりましぇん。――『どうってことない』!本当に、しゅちち・・管理を怠るのは、唯一アッシュしゃまの悪いくしぇでございましゅぞ!ずがあしゃいからといって、まず甘く見てはいけないのでしゅ!『油断大て』とはよく言ったもので――」
 確かに、長く親しんだ魔物の、うるさい説教ももっともだ、と思ってはいたものの、ああ、それこそ耳に胼胝ができるくらい、小言は何度も繰り返し、口酸っぱく注意されてきたことだったから、いい加減飽き飽きしていたアッシュは、良心的で献身的な指摘を心に留めるどころか、がみがみとがなる口元にこびりついた、乾パンの食べかすや、ぐるぐる回る、薄気味悪い黒目を放心で眺めていた。
 「――分かった。もういいよ、行こう。不用心な俺が悪かった」
 と、降参したアッシュが、もう勘弁してくれといわんばかりに、軽く両手を上げると、後ろで茂みがかき分けられる、まごうことなき生き物の気配が、禿げあがった額に、醜悪なコブが膨らんだ小柄な妖怪と、世にも珍しい漆黒の天馬に乗った魔人の耳を、突如として障り、直ちに意識はそちらへ注がれた。
 「・・・誰だ?」
 と、疑惑のアッシュが抜かりない声色で訊くと、草むらにしゃがみこんでいた男が、その場で立ち上がり、ニタニタとこびへつらう愛想笑いを、冴えない顔に浮かべた。
 「お前は――」アッシュは言いかけたが、小太りの男が喋り始め、遮った。「へへ・・・。旦那、先ほどは、危ないところを、どうもありがとうごぜいやした。いやはや全く、こんなおとろしい森で人に会えるとは、てんで夢にも見やしなかったことで・・・」
 いやらしい媚び笑いを貼り付けた男は、へりくだる揉み手をした。間違いなく男は、毒に侵されたサテュロスに襲われ、嫌がるクロムのしっぽを頑なに掴んでいた男で、アッシュが乱心のモンスターを斬らなければ、おそらく犠牲になっていただろう、あの無様な人間の小男だった。垢じみた不細工な男は言葉を続けた。「あの狂った山羊のバケモンったら、おっかねえのなんの!きっと旦那が通りがからなかったら、俺っちの骨の一本も、残らなかったろうや!よっ、あっぱれ!いつくしみ深き神よ、素晴らしい旦那に祝福あれだ!」
 初対面にも拘わらず、馴れ馴れしく彼を褒め称える男は、てっきりあの場から、即座に逃げ出したものと考え込んでいたアッシュは、普段の冷ややかな灰色の双眸で、胡散臭い卑屈な風采の男を、馬上から見据えた。だらけ切った面立ちのたるんだ輪郭に、ぼさぼさと乱雑な無精ひげを生やした男は、哀愁漂う中年のように老けて見えた。その上、短く毛深い四肢の真ん中に、たっぷりと肥えた腹の袋が、重たげに乗っかり、小汚いシャツの下から、否応なしに存在を主張していたから、はた目にそう映ったとしても、至極当然なことだった。垂れた目は酔っ払いのそれか、あるいは助平な好色漢らしく、とろんと眠たげだった。軽薄なおべっかのために、緩く笑んだ唇から覗く歯は黄ばみ、隙間だらけで並びも悪かった。身なりもみすぼらしく、粗野な口ぶりが、不審な男の、落ちぶれた境遇をはっきりと物語っていた。
 「世辞や礼はいらない。お前はこの樹海で何をしていたんだ」
 アッシュは率直に尋ねた。
 「おっと旦那、頼むから怪しまないでくれよ。というのも、この途方もなく深ぇ森に、偶然迷い込んじまった挙句、あの奇妙なバケモンに襲われた時は、みじめだった俺っちは、あの恐ろしい死さえ覚悟したもんだ。ああ。嘆いた俺は、世界一ツイていない男だと、ほとほと思ったね。が、だ。ところがどっこい、実は同時に俺っちは、すこぶるツイていて、あんたという救いの手が、偉大な神の住まう天国から、差し伸べられたってわけだ」
 「お前は木こりか?」アッシュは問うた。
 「へへ、まあそんなところでございやしょうか。ご立派でお強い旦那と比べると、しがない俺っちはただの農民でさあ」
 と、卑しい男は、不幸にも森に迷い込んでしまった、可哀そうな貧しい農夫だと、人畜無害な自分を謳ったが、どうも言い分はキナ臭かった。それは何故かというと、見つめるアッシュの銀色の双眼からすれば、大変な目に遭った男は、それほど悲愴の色が濃くなかったし、厳しく冷酷な人生を知っている者にしては、どこかふざけた面持ちだったからだ。
 「アッシュしゃま?あ奴は誰でしゅか?」リサイクルがしゃがれた口を挟んだ。
 「おっとすまねぇ。旦那、名乗りもしねぇなんて、そんなの、助けられた奴のすることじゃねぇな。俺っちはダリル。旦那は?何て言うんですかい?」
 へつらいの滲んだ親しみを纏ったダリルは、進んで名前を明かした。だがしかし、小太りな人間の小男と、真面目にかかわる気など、さらさらなかったアッシュは、ダリルに冷たく言い放った。「どうして俺についてきた?」
 いろんな意味で、いちいち質問が鋭いので、ややたじろぐダリルだったが、何とかアッシュに気に入られようと、努めて彼は愛想よくふるまった。「そんな、まさか旦那ほどのお方が、警戒されることでもなし。なあに、心の優しい旦那は、そのお強い腕っぷしで、寛大にも俺を、絶体絶命の崖っぷちから、引きずり上げてくれたじゃねえか!――ああ。全く、神の恩恵を受ける値打ちもねぇ俺だが、あの時のあんたは、救世主以外の何物でもなかったぜ!だから俺は感謝した。滅多に祈らねえ幸運の女神にな。あんたを授けてくれてありがとうってな!あんたは命の恩人だ。だったら俺っち、その大きな恩を返さねば、男が廃るってもんだろう、ええ?」
 言い終わりがけ、ニタリとダリルは汚い笑みを作った。
 「恩など返さなくていい。じゃあな」
 と、会話を打ち切るアッシュが正面を向くと、焦ったダリルは慌てて二の句を継いだ。「あーっ、旦那!そんなつっけんどんな!待ってくれ、ちょいと、耳を貸しておくれよ!なあに、こんなところで出会うのも、何かの縁じゃねぇか。な?旦那は俺を、救ってくれた。そして俺っちは、そんな旦那の力になりたい。――な?悪い話じゃねえ、俺っちを側においてくれよ。きっと役に立つだろうから!何なら神に誓ったっていい。信心深い俺の心は、裏表のない布地のように滑らかで、美しいことをな。それに、ありがたい恩を忘れるような、ごろつきだけにはなってくれるなと、母ちゃんは俺を、厳しく育てたんじゃなかったか?――ああそうとも、そうだともさ!」
 懸命なダリルが訴えた、力強い演説の背後に潜む真実は、冷静なアッシュの灰色の眼差しの前では、ものの見事に見透かされていた。多分、男は森を自力で抜けられないのだ。故に、道案内を是が非でも必要としている彼は、こびへつらい、取り入ることによって、用心棒兼ガイドの役を、一寸呆れているアッシュに、買わせようとしているらしかった。しかるに、恩返しに厚いと自負しているダリルだったが、この深い樹海から出たが最後、そそくさと一目散に走り去って行くような、薄情でご都合主義な感じを、胡散臭い彼の、薄っぺらい雰囲気が伝えていた。しかしもし、たとえ現実そうなったとしても、恩を返さなければならない彼の言う真偽はもちろん、ダリルの実際の行動について、アッシュはまるきり興味がなかった。
 「――森を抜けるまでだ。それがお前の恩返しだ」
 ダリルの言う縁が切れるものなら、今すぐにでも切ってしまいたかったアッシュは、言った。するとすぐ、男の締まらない顔が、僅かに明るく輝いた。「旦那――」
 「アッシュしゃま!」
 すかさず、お節介焼きのリサイクルが口を堪らず開き、ダリルの文句の上に覆い被さった。
 「箒を取ってこい、リサイクル。出発だ」
 向き直ったアッシュは、落ち着いてゴブリンに命じた。
 「正しゅか!?ニンゲンと行動を共にしゅるなど!」
 信じられない小鬼は両手を広げた。
 「いや、箒には乗るな。クロムに乗れ」
 モンスターがほうきに跨って飛んでいる、甚だ不可思議な光景を、ダリルに見られたくなかったアッシュは、こう指示した。
 「何事も、簡単に見くびってはいけないと、しゃち・・ほど忠告しゃしあげたばかりでしゅのに!」
 と、キイキイ怒鳴る、年老いた魔物の鼻息は荒かった。
 「いいから取ってこい。説教は後で聞く」
 アッシュは真黒い頭をちょいと動かし、指図した。くるりと背中を見せたリサイクルの唇からは、きちんとした言葉にならなかった不満が、ぶつぶつと漏れ出ていた。

『アッシュの旦那』――。日影の浮かび上がった森の中、一人と一匹、それから一頭の隣を歩くダリルは、何かにつけて、窮地から自分を助けてくれたものの、面識の一切ない男を、親し気にこう呼んだ。だが、上面のおべっかを働く彼は、そんなアッシュたちについて、根掘り葉掘りと訊きはしなかったけれども、風変わりな奴らだと思った。つまり、恐ろしい怪物に襲われ、必死の彼が、尻尾を熱心に掴んでいた牡馬は、何か得体のしれないものが、太い脇腹の辺りにくっついていたし、従者らしき年寄りは、へんてこなドワーフ(注:小人症患者の意)だった。そして主人の男は、高貴な騎士にしては、暑苦しい騎士道精神が希薄だった。とどのつまり、何故彼らは、こんなうっそうと深い森のただなかに、いたのだろうか?さすらいの旅芸人――にしては、何だか物々しいし、とにかく怪しい奴らだった。ま、何にせよ、おそらく彼が思い描くような、健全な堅気連中ではないだろう。まず人が敬うどころか、蔑まれる、彼と同じ類の人間たち――逃亡中の尋ね人か、用心棒や傭兵、盗み、はたまた暗殺を生業にしている、ごろつきの流れ者だろう。
 (しめしめ、上手いこといったぞ)と、ダリルはほくそ笑んだ。
 事実、アッシュたちが悪人だろうがなかろうが、彼の用が済むまで、彼らにへばりついておけばいいだけの話だ。小太りの小悪党は確信した。気まぐれな神は、自分を見捨ててはいなかった。やっぱり彼は、この世で最も強い運の持ち主なのだと。
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