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もこもこと、幾重にも重なった綿雲のような白い泡が、香の視界を覆い尽くしていた。
香は雲海の如く泡の一部を両の手のひらにすくった後、それに向かって息をフーッと吹きかけてみた。
すると、軽い泡は実体を持たない気体に乗って、浴槽のあちこちへフワフワと吹き飛んでいった。
泡の幾らかは、香の正面で浸かる美男に向かって飛んでいき、彼の手前で着地した。
運の良いものは再び泡の一部と同化し、運の悪いものは、湯へ溶けて消えていった。
夕貴は恋人の戯れへ温かい眼差しを注ぎながら、シャンパングラスに満たされた、繊細な気泡が弾けるシャンパンを啜った。
彼と香は、同じ一つの浴槽で共に泡風呂へ浸かって、気だるい午後をのんびりと過ごしていた。
何故、昼間から呑気に風呂などへ入っているかというと、彼らは今晩の祝賀会に向けて、ゆったりと準備(?)しているのだった。
今、二人は日常を過ごす地方を離れて、明日葉ホテルグループの本社が置かれ、かつ催しが開かれる会場、即ち、東京の明日葉ホテルまで出向いていた。
地方住まいの彼らは余裕を持って、早めに上京したという次第だった。
明日葉の後継者はそのまましばしの間、東京に残らなければならなかったが、翌日には帰る香のために、最上級のスイートルームが一部屋あてがわれた。
したがって、饗宴まで時間が多分に空いた故、彼らはほのぼのと、二人きりの甘いひと時を堪能していたのだった。
「飲まないんですか?ぬるくなってしまいますよ」
グラスから唇を離した御曹司は、傍らの、浴槽の外側の床へクリスタル製の容器を置き、同じく床へ置かれたまま、手つかずのシャンパンを示唆した。
「お風呂に入りながらお酒を飲むと、湯中り起こしちゃいますよ」
温泉旅館で生まれ育った香は、血行も促進が過ぎると、人間にとって毒になる現象を、今までに何度も目撃してきた。
「湯中り・・・。のぼせるという意味ですか?」
「そうです。今日は、夕貴さんはたくさんの人の前に出るんですから、体調だけは気をつけておかないと」
「そうですね。ですが、今日は主にあなたを父へ紹介するために来たので、ここだけの話、パーティーは重要な目的ではありません」
「そ、それはそうですけど・・・。思い出したら、また緊張してきた・・・」
「俺の父親は怪物か何かですか?」
夕貴はくしゃっと屈託なく笑って、不安がる恋人を茶化した。
「大丈夫。心配いりません。父はきっとあなたを気に入ると思います」
そう言いながら、夕貴は安心させるかの如く手を取って、香を優しく間近へ引き寄せた。
同時に、湯面に浮かんだもこもこの白い泡が流れに沿って、滑るように静かに動いた。
二人とも、結構な時間、浴室に籠り切っているために、髪は湿って、毛先から雫がポタポタと滴り落ち、頬はうっすら上気して、鮮やかなピンク色に染まっていた。
「・・・喉渇いた?」
濡れた髪を無造作に額や耳へかけ流し、同様に、目を色っぽく流した夕貴は、珍しく、恋人へくだけた調子で問いかけた。
そして、香が無言でコクンと頷くと、夕貴は傍らへ筋肉質の腕を伸ばし、グラスを床から持ち上げると、シャンパンを軽く口に含んでから、彼女の口へ移してやった。
「ふむ・・・♡♡」
シュワシュワと口の中で心地好く弾ける泡を感じつつ、香は絹の如く滑らかな舌触りの、上質なぶどう酒をゆっくりと飲み干した。
「ん・・・っ♡♡」
最後の一滴まで飲み下すと、口の中から重なっていた舌がちゅるっと抜け出て、香のアルコール臭漂う息継ぎを可能にした。
「・・・美味しい?もっと欲しい?」
夕貴はにんまりと、緩やかな弧を唇に描き、愉悦の色を目元に浮かべながら、訊いた。
次いで、香がまたしても首を静かに縦に振ると、夕貴はもう一度シャンパンを口へ流し込み、口伝いに彼女の唇の内側へ流し込んでやった。
「~~~・・・♡♡!」
一度目は上手く飲み込めた香だったが、二度目は口づけが深く、長いこともあって、残念ながら成功には及ばず、唇の端からポタポタと、高価で芳醇な果実酒が自然と漏れ出た。
「・・・っ♡♡」
やっとこさ、唇から唇が離れると、とろんととろけた面持ちの香は、身も心も、また頭も見事に緩んでしまって、無意識に、濡れた夕貴の鎖骨から逞しい肩へしな垂れ、親を信頼しきった幼子がするみたく、頭を無防備にコテンと預けた。
対する夕貴は、シャンパングラスを再度傍らの床へ置くと、これまた子供の親がするように、よしよしと、湿った黒い後ろ頭を愛し気に撫でてやった。
「・・・そういえば、今夜のパーティーは何のお祝いでしたか?」
泡まみれの香は夕貴へ抱きついたまま、訊ねた。
「今夜は、明日葉グループ創業七十五周年を記念した大宴会でして、親族一同の他に、競合他社やマスコミ、主要株主などが集まります」
(ひえ・・・)
香は声を出さずに驚愕した。
以前もそうだったが、どうやら今回も、ささやかな催しというわけではなさそうだった。
加えて、聞くところによると、今宵の会は前回のものよりも幾分規模が大きいようだった。
「父だけでなく、昔から知っている会社の人間や親しい友人、または仕事で世話になっている人たちに、紹介ついでにあなたを見せびらかすことができるのは、鼻が高くもあるんですが、同時に、悪い虫がつきはしないかと、内心心配です」
「悪い虫って・・・。買い被りすぎですよ」
「本気で言ってます?あなたは男を惹き惑わすご自分の魅力に、自分で気が付いていないんですか?」
夕貴は褒め言葉として言ったのだろうが、如何せん表現が誇張的であるだけに、香は喜ぶべきか否か、半信半疑だった。
「惹き惑わしてなんかいないですよ」
「いえ。現に、俺はあなたの素晴らしい魅力に惹き惑わされ、結局心奪われてしまいました」
「分かりません・・・。わたしの素晴らしい魅力ってどこです?」
未だピッタリと恋人へくっついたまま、もたれていた頭をちょこっと上げた香は、上目遣いを投げかけ、問うた。
仕草は、仮に計算の内で行われていれば、「あざとい」部類に入るのだろうが、香のそれは無意識からくるものだった。
「そうですね・・・」
夕貴は口元を喜々と綻ばせ、具体例を挙げ始めた。
「まず、唇が信じられないほど柔らかいところでしょうか」
すると意識的に、夕貴の視線は香の小さな唇を彷徨った。
「それだったら、夕貴さんの唇ももの凄く柔らかいですよ?」
「そうですか?それは知りませんでした。・・・次は、この滑らかで手触りの良い肌でしょうか。極上の絹を触れているみたいです」
自分のことではないのに、夕貴は自慢げに、もたれかかる香の背中から肩にかけて手を滑らせ、ゆるゆると彼女の火を点けた。
「んッ・・・♡♡」
瞬間、思わず唇の間から、女の悩ましい吐息と一緒に、艶かしい声が漏れた。
「それから・・・。この形の良い耳も、あなたの類まれなる魅力の一つです」
言葉を告げ終わらないうちに、夕貴は香の耳たぶや耳殻へ指をそっと、さり気なく添え、優しく撫でさすっては、微弱な刺激をもたらした。
「・・・ッ♡♡」
「どうしました?」
「~~~♡♡!」
どうしたもこうしたも、単に発情しましたとは、羞恥のために、そう容易く、正直に打ち明けられない香だった。
「な、んでも・・・♡♡ありま、せん・・・♡♡!」
「そうですか。あなたの魅力はまだ他にも、数え切れないほどありますよ?例えば・・・」
「!」
次の瞬間、大きな手のひらが、湯中の彼女の太ももをひっそりと伝い、香はピクリと機敏に反応した。
「ここだって、そうです」
白いメレンゲの如く泡が浮いた湯面下で、ツツッ・・・と、太ももを撫でていた手のひらが音もなく、香のくびれへ優雅に移動した。
「♡♡!」
好きな男からこのように触られて、恐ろしくも、何も感じない女が世界のどこにいるというのか。
香はもどかしいやら切ないやら、やきもきと、やるせない感情に責め苛まれ、白旗を上げて、投降したも同然だった。
「そうそう。感じやすい、淫らなところも、男はあなたにひどくそそられるんですよ」
「!」
恥ずかしくも、自分ではどうすることもできない自然現象を指摘された香は、真っ赤に色づいた面を素早く上げて、彼女を見つめる二つの熱情的な目と出会った。
「本当は、喉から手が出るほど欲しくて堪らないのに、恥ずかしがって、あえて口に出そうとしないところも素敵です」
「~~~・・・」
努めて隠そうとしていた、彼女の真の欲望がきちんと見抜かれていた現実が、香の顔色をますます色濃い深紅へ塗り変えた。
「顔が大分赤いですが、のぼせてしまいましたか?いったん上がりましょうか」
恋人がここまで赤面したのは、泡風呂へずっと浸かっていたせいだけではないと、夕貴は確実に認識している様子だったが、わざと気が付いていないような、しらを切った口調で提案した。
しかしながら、香は再び夕貴へだらりと寄りかかり、口を切った。
「い、や・・・です。熱くした責任を・・・取ってください・・・」
「お安い御用です」
そして、夕貴は脇の下を支え持って、泡の中から香を軽々と持ち上げると、横手の壁と浴槽の縁へ押し付け、彼女の身体を預けた。
かなりの時間が費やされていたために、泡は今では弾力に乏しく、へたっていた。
故に、赤みが鮮やかに差して、しとどに濡れた香の裸体の上で、白い泡が怠く滑り落ちる様は、非常に扇情的な情景として、対面した夕貴の眼にくっきりと映った。
よって夕貴は情動の赴くまま、肋骨の辺りへ赤い舌を素早く走らせ、すかさず香の火照った肢体へ、ビリッと甘美な電流を送った。
「ッ♡♡!」
(あ・・・♡♡いや・・・♡♡)
それから、夕貴は目で相槌を打った後、そのまま頭を動かして、唾液にまみれた肉厚の舌を、柔らかい絹のような肌の上で滑らせ、既に尖り切って硬くなった胸のしこりへ絡めた。
「ッッ♡♡!!」
たちまち、心電図の波線がひときわ大きく跳ね上がった如く、香の体躯は敏感に脈打った。
「あッ・・・♡♡あ・・・ッ♡♡!」
湯を弾くツルツルした壁へもたれかかり、浴槽の縁の上で浅く座った香は、モジモジと腰を捩って、快い煩悶をやり過ごした。
「ぅん・・・♡♡!ふぁ・・・ッ♡♡!」
身体の神経という神経が痺れ、甘ったるい責め苦に対する抵抗を持ちえなかった香は、か弱い少女のように、いじらしく震えることしかできなかった。
静まり返った浴室に、ぬるま湯が揺れて上がる、チャプチャプという小波の音と、胸の蕾を懇ろに舐めとる、ふしだらな口唇音、また、彼女自身の乱れた息遣いが反響し合って、香の羞恥と興奮を自動的に煽った。
そして、遂にようやく、舌と唇の捕縛が幼気な胸の突起を解放すると、透明な粘液にまみれた上、鋭くピンと張り詰め、かつ淫らな紅色を帯びたそれは、目も当てられないほどいやらしい物体へ変わり果てていた。
今が好機とばかりに、香は息を深くついて、崩れてしまいそうな理性や何かを必死で持ちこたえたが、一寸間を置いて、赤い舌がもう片方の肉粒を捉えてしまうと、儚くも、努力が無駄骨に終わった気がした。
「あン・・・ッ♡♡!も・・・♡♡!」
香の呼気は途切れに途切れ、瞳には快感のあまり、熱い涙がじわっと浮かんできた。
「や、ンッ・・・♡♡!それ、だめ・・・♡♡!」
何がだめかというと、今まで愛でられていた蕾が同時に摘ままれ、二重の悦楽を香へもたらしたためだった。
「ンンン・・・ッ♡♡!!」
ゾゾゾッと、過度の興奮が背筋を心地好く走り、また、じっくり濃密な愛撫に、身体の奥がキュウッと収斂しては、とろとろと恥ずかしい蜜を股の間から吐き出す事象を、香は熱に浮かされ、ぼやけた頭の片隅で感じ取った。
「全く仕方のない女ですね、あなたは。こんなに一杯漏らしてしまって・・・」
夕貴は胸の頂から唇を離して下を向くと、今も尚、香の内またをたらたらと伝って、照明の光を受けて照り光る、淫靡なぬめった体液を見た。
「ちが・・・♡♡!~~これは、泡・・・ッ♡♡!」
ばつの悪さ故に、香は咄嗟に口から出まかせを言った。
「泡?」
実際、裸体の上を垂れて、もはや形を成さなくなった泡の幾つかは、両脚の付け根部分へも流れ込み、彼女の内またを濡らしていたが、それと潤沢な愛液を見分けられないほど、香の恋人の目は節穴ではなかった。
「言い逃れしても無駄ですよ。直接味を見て、確かめてみれば済む話ですから・・・」
味!
香は愕然と取り乱した。
「んッ・・・♡♡!味なんか・・・♡♡しない・・・ッ♡♡!」
続いて、赤い舌が滑々とした和肌の上を下へ滑り、香をより一層いたぶると、未だ泡の残滓が留まった下肢の付け根へ、夕貴は顔を密接にくっつけて、割れ目より泉の如く湿潤に湧き出る愛泉を啜り、同時に、無数の接吻の音を高らかに、じっとりと湿気た浴室へ響かせた。
「はぁ・・・んッ♡♡!!~~や・・・♡♡夕貴さ・・・♡♡!いや・・・っ♡♡!」
ふしだらな淫粒へ、熱い唾液にまみれた肉がぬるりと這うと、誇りでもあり、最大の美点だった淑やかさが無理やり引き剝がされ、ただ純粋な欲求に駆られた一人の雌が顔を覗かして、彼女をふしだらで、わきまえられない淫奔な女に変えようとしていたために、香は歓喜と絶望に打ちひしがれた。
恋人の一心不乱で情熱的な求愛に、彼女の身も心も、それから頭もすっかりふやけきってしまい、その上、雌芯は溶けてなくなってしまったような感覚だったが、香は朦朧とした視界の最中、ひたすら淫らに喘ぎ、悶える他に、やりようがなかった。
「もぅ、だめぇぇ・・・ッッ♡♡!!お願い、許してぇ・・・ッ♡♡!!」
全身を責め苛む、甘美で刺激的な、強烈な快感のあまり、香の眦からはポロポロと涙が一筋二筋零れ落ち、昂ぶりが最高潮へ近づきつつある現実を伝えた。
「あン・・・♡♡!だめ、イクぅ♡♡!イク、イっ・・・――♡♡!!ッッ・・・~~~♡♡!!」
言葉の最後の方はだんだんと途切れて、最終的に、荒々しい吐息の中へかき消えていったまま、香は発する声もなく、電気ショックによる心肺蘇生を試みた瀕死の患者のように、静かにビクッ!と大きく弾んで、遂に性的興奮の絶頂を極めた。
ビクビクッと、筋肉の痙攣が皮膚を通して伝わると、夕貴はしつこく埋めていた顔を離して、喉仏まで滴る破廉恥な蜜液を顎から雑に拭うと、ゆらりと上体を起こした後、未だ性的絶頂の余韻に痺れ、恍惚と浸る香の唇目がけて、甘い口づけを施した。
「んぅ・・・♡♡!」
それから、やがて夕貴は長い口づけを解くと、穏やかに尋ねた。
「どうですか?熱は収まりましたか?」
「・・・ま、だ・・・♡♡」
香の幼気な心臓は、決まって核心をはぐらかす、夕貴の狡猾なやり方によって、いつも活発に収縮しては、ドキドキと高鳴るのだった。
「それは困りましたね。一体どうすれば、あなたの熱を冷ますことができるのでしょうか?」
これだから、彼の手練手管の上手さには、舌が巻かれる。
「最後まで、して・・・っ♡♡夕貴さんが、欲しいの・・・♡♡」
面と向かって台詞を口にすることは、恥じらう彼女にとって、実行する勇気が終ぞ出なかったので、香は自分を戸惑わせる恋人へ抱きついて、精一杯本心を告白した。
「ベッドまで我慢できませんか?」
香はフルフルと頭を横に振ると、大胆な願いを口にした。
「今すぐ、欲しいの・・・っ♡♡」
「ここまで可愛く強請られて、あなたを拒むような男がいるとすれば、きっと彼は心臓が鋼でできているんでしょう」
夕貴は意味不明な文言を呟いてから、指令を出した。
「後ろを向いて、壁に手をついて。そう。良い子ですね。姿勢が辛くなったら、すぐ言ってください」
そして、香は夕貴の言う通りに彼から背いて、真向かいの壁へ身体を預けると、疼く渇きと激しい切望のために、脳裏がひりひりと灼けついた。
「あッ・・・♡♡」
しかし、雄蕊がすかさず滑らかな挿入によって、甘蜜の滴り落ちる艶やかな花芯へ、淫猥な圧力と共に入ってきた瞬間、香の渇きは癒され、潤いを取り戻した。
立派な一振りの刀剣の如くそれは、その雄々しい姿を完全に見えなくしてしまうと、持ち主の荒い動作によって突き動かされ、淫靡で熾烈なリズムを刻み始めた。
「んッ♡♡!!」(っ嘘、こんな♡♡!~~激しい・・・ッ♡♡!!)
「あッ♡♡!やぁ♡♡!んッ♡♡!あ♡♡!は、激し・・・ッ♡♡!!」
余りの荒々しさ故に、膝が途端にガクガクと揺れ、力が抜けて崩れ落ちそうになる身体を、無我夢中で、香は壁へ寄りかかって支えた。
「香さん・・・。体勢は辛くありませんか?大丈夫ですか?」
忙しい腰の動きとは打って変わって、問いかける夕貴の口調は紳士的で優しかった。
「っだ、ひッ♡♡!大・・・んッ♡♡!じょ・・・~~~ッッ♡♡!!」
香は別の意味で全く大丈夫ではなかったが、思いの丈を全て口にしきれるほど、打擲は生易しいものではなかった。
「音がよく響いて、いやらしいですね?」
夕貴は両手を同様に壁へついてから、耳へ挑発する如く囁くと、香のいじらしい羞恥心を煽り、容易く増幅させた。
「~~~・・・ッッ♡♡!!」
連結部から生じる媚音は間近の壁へ反響し、彼の腰の動く限り、延々と木霊す卑猥な音楽は、残響までもが香の耳の中に残るようだった。
したがって、恋人の発言が完全な事実で、反論のしようもないだけに、香は恥ずかしさとやるせなさで胸が一杯だった。
「・・・愛しています・・・」
夕貴はぽつりと耳元で蠱惑的に囁いて、香の高まりを静かに誘った。
「・・・♡♡!!わ、わたし・・・もッ♡♡す、好・・・あッ♡♡!!あぁ~~~ッッ・・・♡♡!!」
香は雲海の如く泡の一部を両の手のひらにすくった後、それに向かって息をフーッと吹きかけてみた。
すると、軽い泡は実体を持たない気体に乗って、浴槽のあちこちへフワフワと吹き飛んでいった。
泡の幾らかは、香の正面で浸かる美男に向かって飛んでいき、彼の手前で着地した。
運の良いものは再び泡の一部と同化し、運の悪いものは、湯へ溶けて消えていった。
夕貴は恋人の戯れへ温かい眼差しを注ぎながら、シャンパングラスに満たされた、繊細な気泡が弾けるシャンパンを啜った。
彼と香は、同じ一つの浴槽で共に泡風呂へ浸かって、気だるい午後をのんびりと過ごしていた。
何故、昼間から呑気に風呂などへ入っているかというと、彼らは今晩の祝賀会に向けて、ゆったりと準備(?)しているのだった。
今、二人は日常を過ごす地方を離れて、明日葉ホテルグループの本社が置かれ、かつ催しが開かれる会場、即ち、東京の明日葉ホテルまで出向いていた。
地方住まいの彼らは余裕を持って、早めに上京したという次第だった。
明日葉の後継者はそのまましばしの間、東京に残らなければならなかったが、翌日には帰る香のために、最上級のスイートルームが一部屋あてがわれた。
したがって、饗宴まで時間が多分に空いた故、彼らはほのぼのと、二人きりの甘いひと時を堪能していたのだった。
「飲まないんですか?ぬるくなってしまいますよ」
グラスから唇を離した御曹司は、傍らの、浴槽の外側の床へクリスタル製の容器を置き、同じく床へ置かれたまま、手つかずのシャンパンを示唆した。
「お風呂に入りながらお酒を飲むと、湯中り起こしちゃいますよ」
温泉旅館で生まれ育った香は、血行も促進が過ぎると、人間にとって毒になる現象を、今までに何度も目撃してきた。
「湯中り・・・。のぼせるという意味ですか?」
「そうです。今日は、夕貴さんはたくさんの人の前に出るんですから、体調だけは気をつけておかないと」
「そうですね。ですが、今日は主にあなたを父へ紹介するために来たので、ここだけの話、パーティーは重要な目的ではありません」
「そ、それはそうですけど・・・。思い出したら、また緊張してきた・・・」
「俺の父親は怪物か何かですか?」
夕貴はくしゃっと屈託なく笑って、不安がる恋人を茶化した。
「大丈夫。心配いりません。父はきっとあなたを気に入ると思います」
そう言いながら、夕貴は安心させるかの如く手を取って、香を優しく間近へ引き寄せた。
同時に、湯面に浮かんだもこもこの白い泡が流れに沿って、滑るように静かに動いた。
二人とも、結構な時間、浴室に籠り切っているために、髪は湿って、毛先から雫がポタポタと滴り落ち、頬はうっすら上気して、鮮やかなピンク色に染まっていた。
「・・・喉渇いた?」
濡れた髪を無造作に額や耳へかけ流し、同様に、目を色っぽく流した夕貴は、珍しく、恋人へくだけた調子で問いかけた。
そして、香が無言でコクンと頷くと、夕貴は傍らへ筋肉質の腕を伸ばし、グラスを床から持ち上げると、シャンパンを軽く口に含んでから、彼女の口へ移してやった。
「ふむ・・・♡♡」
シュワシュワと口の中で心地好く弾ける泡を感じつつ、香は絹の如く滑らかな舌触りの、上質なぶどう酒をゆっくりと飲み干した。
「ん・・・っ♡♡」
最後の一滴まで飲み下すと、口の中から重なっていた舌がちゅるっと抜け出て、香のアルコール臭漂う息継ぎを可能にした。
「・・・美味しい?もっと欲しい?」
夕貴はにんまりと、緩やかな弧を唇に描き、愉悦の色を目元に浮かべながら、訊いた。
次いで、香がまたしても首を静かに縦に振ると、夕貴はもう一度シャンパンを口へ流し込み、口伝いに彼女の唇の内側へ流し込んでやった。
「~~~・・・♡♡!」
一度目は上手く飲み込めた香だったが、二度目は口づけが深く、長いこともあって、残念ながら成功には及ばず、唇の端からポタポタと、高価で芳醇な果実酒が自然と漏れ出た。
「・・・っ♡♡」
やっとこさ、唇から唇が離れると、とろんととろけた面持ちの香は、身も心も、また頭も見事に緩んでしまって、無意識に、濡れた夕貴の鎖骨から逞しい肩へしな垂れ、親を信頼しきった幼子がするみたく、頭を無防備にコテンと預けた。
対する夕貴は、シャンパングラスを再度傍らの床へ置くと、これまた子供の親がするように、よしよしと、湿った黒い後ろ頭を愛し気に撫でてやった。
「・・・そういえば、今夜のパーティーは何のお祝いでしたか?」
泡まみれの香は夕貴へ抱きついたまま、訊ねた。
「今夜は、明日葉グループ創業七十五周年を記念した大宴会でして、親族一同の他に、競合他社やマスコミ、主要株主などが集まります」
(ひえ・・・)
香は声を出さずに驚愕した。
以前もそうだったが、どうやら今回も、ささやかな催しというわけではなさそうだった。
加えて、聞くところによると、今宵の会は前回のものよりも幾分規模が大きいようだった。
「父だけでなく、昔から知っている会社の人間や親しい友人、または仕事で世話になっている人たちに、紹介ついでにあなたを見せびらかすことができるのは、鼻が高くもあるんですが、同時に、悪い虫がつきはしないかと、内心心配です」
「悪い虫って・・・。買い被りすぎですよ」
「本気で言ってます?あなたは男を惹き惑わすご自分の魅力に、自分で気が付いていないんですか?」
夕貴は褒め言葉として言ったのだろうが、如何せん表現が誇張的であるだけに、香は喜ぶべきか否か、半信半疑だった。
「惹き惑わしてなんかいないですよ」
「いえ。現に、俺はあなたの素晴らしい魅力に惹き惑わされ、結局心奪われてしまいました」
「分かりません・・・。わたしの素晴らしい魅力ってどこです?」
未だピッタリと恋人へくっついたまま、もたれていた頭をちょこっと上げた香は、上目遣いを投げかけ、問うた。
仕草は、仮に計算の内で行われていれば、「あざとい」部類に入るのだろうが、香のそれは無意識からくるものだった。
「そうですね・・・」
夕貴は口元を喜々と綻ばせ、具体例を挙げ始めた。
「まず、唇が信じられないほど柔らかいところでしょうか」
すると意識的に、夕貴の視線は香の小さな唇を彷徨った。
「それだったら、夕貴さんの唇ももの凄く柔らかいですよ?」
「そうですか?それは知りませんでした。・・・次は、この滑らかで手触りの良い肌でしょうか。極上の絹を触れているみたいです」
自分のことではないのに、夕貴は自慢げに、もたれかかる香の背中から肩にかけて手を滑らせ、ゆるゆると彼女の火を点けた。
「んッ・・・♡♡」
瞬間、思わず唇の間から、女の悩ましい吐息と一緒に、艶かしい声が漏れた。
「それから・・・。この形の良い耳も、あなたの類まれなる魅力の一つです」
言葉を告げ終わらないうちに、夕貴は香の耳たぶや耳殻へ指をそっと、さり気なく添え、優しく撫でさすっては、微弱な刺激をもたらした。
「・・・ッ♡♡」
「どうしました?」
「~~~♡♡!」
どうしたもこうしたも、単に発情しましたとは、羞恥のために、そう容易く、正直に打ち明けられない香だった。
「な、んでも・・・♡♡ありま、せん・・・♡♡!」
「そうですか。あなたの魅力はまだ他にも、数え切れないほどありますよ?例えば・・・」
「!」
次の瞬間、大きな手のひらが、湯中の彼女の太ももをひっそりと伝い、香はピクリと機敏に反応した。
「ここだって、そうです」
白いメレンゲの如く泡が浮いた湯面下で、ツツッ・・・と、太ももを撫でていた手のひらが音もなく、香のくびれへ優雅に移動した。
「♡♡!」
好きな男からこのように触られて、恐ろしくも、何も感じない女が世界のどこにいるというのか。
香はもどかしいやら切ないやら、やきもきと、やるせない感情に責め苛まれ、白旗を上げて、投降したも同然だった。
「そうそう。感じやすい、淫らなところも、男はあなたにひどくそそられるんですよ」
「!」
恥ずかしくも、自分ではどうすることもできない自然現象を指摘された香は、真っ赤に色づいた面を素早く上げて、彼女を見つめる二つの熱情的な目と出会った。
「本当は、喉から手が出るほど欲しくて堪らないのに、恥ずかしがって、あえて口に出そうとしないところも素敵です」
「~~~・・・」
努めて隠そうとしていた、彼女の真の欲望がきちんと見抜かれていた現実が、香の顔色をますます色濃い深紅へ塗り変えた。
「顔が大分赤いですが、のぼせてしまいましたか?いったん上がりましょうか」
恋人がここまで赤面したのは、泡風呂へずっと浸かっていたせいだけではないと、夕貴は確実に認識している様子だったが、わざと気が付いていないような、しらを切った口調で提案した。
しかしながら、香は再び夕貴へだらりと寄りかかり、口を切った。
「い、や・・・です。熱くした責任を・・・取ってください・・・」
「お安い御用です」
そして、夕貴は脇の下を支え持って、泡の中から香を軽々と持ち上げると、横手の壁と浴槽の縁へ押し付け、彼女の身体を預けた。
かなりの時間が費やされていたために、泡は今では弾力に乏しく、へたっていた。
故に、赤みが鮮やかに差して、しとどに濡れた香の裸体の上で、白い泡が怠く滑り落ちる様は、非常に扇情的な情景として、対面した夕貴の眼にくっきりと映った。
よって夕貴は情動の赴くまま、肋骨の辺りへ赤い舌を素早く走らせ、すかさず香の火照った肢体へ、ビリッと甘美な電流を送った。
「ッ♡♡!」
(あ・・・♡♡いや・・・♡♡)
それから、夕貴は目で相槌を打った後、そのまま頭を動かして、唾液にまみれた肉厚の舌を、柔らかい絹のような肌の上で滑らせ、既に尖り切って硬くなった胸のしこりへ絡めた。
「ッッ♡♡!!」
たちまち、心電図の波線がひときわ大きく跳ね上がった如く、香の体躯は敏感に脈打った。
「あッ・・・♡♡あ・・・ッ♡♡!」
湯を弾くツルツルした壁へもたれかかり、浴槽の縁の上で浅く座った香は、モジモジと腰を捩って、快い煩悶をやり過ごした。
「ぅん・・・♡♡!ふぁ・・・ッ♡♡!」
身体の神経という神経が痺れ、甘ったるい責め苦に対する抵抗を持ちえなかった香は、か弱い少女のように、いじらしく震えることしかできなかった。
静まり返った浴室に、ぬるま湯が揺れて上がる、チャプチャプという小波の音と、胸の蕾を懇ろに舐めとる、ふしだらな口唇音、また、彼女自身の乱れた息遣いが反響し合って、香の羞恥と興奮を自動的に煽った。
そして、遂にようやく、舌と唇の捕縛が幼気な胸の突起を解放すると、透明な粘液にまみれた上、鋭くピンと張り詰め、かつ淫らな紅色を帯びたそれは、目も当てられないほどいやらしい物体へ変わり果てていた。
今が好機とばかりに、香は息を深くついて、崩れてしまいそうな理性や何かを必死で持ちこたえたが、一寸間を置いて、赤い舌がもう片方の肉粒を捉えてしまうと、儚くも、努力が無駄骨に終わった気がした。
「あン・・・ッ♡♡!も・・・♡♡!」
香の呼気は途切れに途切れ、瞳には快感のあまり、熱い涙がじわっと浮かんできた。
「や、ンッ・・・♡♡!それ、だめ・・・♡♡!」
何がだめかというと、今まで愛でられていた蕾が同時に摘ままれ、二重の悦楽を香へもたらしたためだった。
「ンンン・・・ッ♡♡!!」
ゾゾゾッと、過度の興奮が背筋を心地好く走り、また、じっくり濃密な愛撫に、身体の奥がキュウッと収斂しては、とろとろと恥ずかしい蜜を股の間から吐き出す事象を、香は熱に浮かされ、ぼやけた頭の片隅で感じ取った。
「全く仕方のない女ですね、あなたは。こんなに一杯漏らしてしまって・・・」
夕貴は胸の頂から唇を離して下を向くと、今も尚、香の内またをたらたらと伝って、照明の光を受けて照り光る、淫靡なぬめった体液を見た。
「ちが・・・♡♡!~~これは、泡・・・ッ♡♡!」
ばつの悪さ故に、香は咄嗟に口から出まかせを言った。
「泡?」
実際、裸体の上を垂れて、もはや形を成さなくなった泡の幾つかは、両脚の付け根部分へも流れ込み、彼女の内またを濡らしていたが、それと潤沢な愛液を見分けられないほど、香の恋人の目は節穴ではなかった。
「言い逃れしても無駄ですよ。直接味を見て、確かめてみれば済む話ですから・・・」
味!
香は愕然と取り乱した。
「んッ・・・♡♡!味なんか・・・♡♡しない・・・ッ♡♡!」
続いて、赤い舌が滑々とした和肌の上を下へ滑り、香をより一層いたぶると、未だ泡の残滓が留まった下肢の付け根へ、夕貴は顔を密接にくっつけて、割れ目より泉の如く湿潤に湧き出る愛泉を啜り、同時に、無数の接吻の音を高らかに、じっとりと湿気た浴室へ響かせた。
「はぁ・・・んッ♡♡!!~~や・・・♡♡夕貴さ・・・♡♡!いや・・・っ♡♡!」
ふしだらな淫粒へ、熱い唾液にまみれた肉がぬるりと這うと、誇りでもあり、最大の美点だった淑やかさが無理やり引き剝がされ、ただ純粋な欲求に駆られた一人の雌が顔を覗かして、彼女をふしだらで、わきまえられない淫奔な女に変えようとしていたために、香は歓喜と絶望に打ちひしがれた。
恋人の一心不乱で情熱的な求愛に、彼女の身も心も、それから頭もすっかりふやけきってしまい、その上、雌芯は溶けてなくなってしまったような感覚だったが、香は朦朧とした視界の最中、ひたすら淫らに喘ぎ、悶える他に、やりようがなかった。
「もぅ、だめぇぇ・・・ッッ♡♡!!お願い、許してぇ・・・ッ♡♡!!」
全身を責め苛む、甘美で刺激的な、強烈な快感のあまり、香の眦からはポロポロと涙が一筋二筋零れ落ち、昂ぶりが最高潮へ近づきつつある現実を伝えた。
「あン・・・♡♡!だめ、イクぅ♡♡!イク、イっ・・・――♡♡!!ッッ・・・~~~♡♡!!」
言葉の最後の方はだんだんと途切れて、最終的に、荒々しい吐息の中へかき消えていったまま、香は発する声もなく、電気ショックによる心肺蘇生を試みた瀕死の患者のように、静かにビクッ!と大きく弾んで、遂に性的興奮の絶頂を極めた。
ビクビクッと、筋肉の痙攣が皮膚を通して伝わると、夕貴はしつこく埋めていた顔を離して、喉仏まで滴る破廉恥な蜜液を顎から雑に拭うと、ゆらりと上体を起こした後、未だ性的絶頂の余韻に痺れ、恍惚と浸る香の唇目がけて、甘い口づけを施した。
「んぅ・・・♡♡!」
それから、やがて夕貴は長い口づけを解くと、穏やかに尋ねた。
「どうですか?熱は収まりましたか?」
「・・・ま、だ・・・♡♡」
香の幼気な心臓は、決まって核心をはぐらかす、夕貴の狡猾なやり方によって、いつも活発に収縮しては、ドキドキと高鳴るのだった。
「それは困りましたね。一体どうすれば、あなたの熱を冷ますことができるのでしょうか?」
これだから、彼の手練手管の上手さには、舌が巻かれる。
「最後まで、して・・・っ♡♡夕貴さんが、欲しいの・・・♡♡」
面と向かって台詞を口にすることは、恥じらう彼女にとって、実行する勇気が終ぞ出なかったので、香は自分を戸惑わせる恋人へ抱きついて、精一杯本心を告白した。
「ベッドまで我慢できませんか?」
香はフルフルと頭を横に振ると、大胆な願いを口にした。
「今すぐ、欲しいの・・・っ♡♡」
「ここまで可愛く強請られて、あなたを拒むような男がいるとすれば、きっと彼は心臓が鋼でできているんでしょう」
夕貴は意味不明な文言を呟いてから、指令を出した。
「後ろを向いて、壁に手をついて。そう。良い子ですね。姿勢が辛くなったら、すぐ言ってください」
そして、香は夕貴の言う通りに彼から背いて、真向かいの壁へ身体を預けると、疼く渇きと激しい切望のために、脳裏がひりひりと灼けついた。
「あッ・・・♡♡」
しかし、雄蕊がすかさず滑らかな挿入によって、甘蜜の滴り落ちる艶やかな花芯へ、淫猥な圧力と共に入ってきた瞬間、香の渇きは癒され、潤いを取り戻した。
立派な一振りの刀剣の如くそれは、その雄々しい姿を完全に見えなくしてしまうと、持ち主の荒い動作によって突き動かされ、淫靡で熾烈なリズムを刻み始めた。
「んッ♡♡!!」(っ嘘、こんな♡♡!~~激しい・・・ッ♡♡!!)
「あッ♡♡!やぁ♡♡!んッ♡♡!あ♡♡!は、激し・・・ッ♡♡!!」
余りの荒々しさ故に、膝が途端にガクガクと揺れ、力が抜けて崩れ落ちそうになる身体を、無我夢中で、香は壁へ寄りかかって支えた。
「香さん・・・。体勢は辛くありませんか?大丈夫ですか?」
忙しい腰の動きとは打って変わって、問いかける夕貴の口調は紳士的で優しかった。
「っだ、ひッ♡♡!大・・・んッ♡♡!じょ・・・~~~ッッ♡♡!!」
香は別の意味で全く大丈夫ではなかったが、思いの丈を全て口にしきれるほど、打擲は生易しいものではなかった。
「音がよく響いて、いやらしいですね?」
夕貴は両手を同様に壁へついてから、耳へ挑発する如く囁くと、香のいじらしい羞恥心を煽り、容易く増幅させた。
「~~~・・・ッッ♡♡!!」
連結部から生じる媚音は間近の壁へ反響し、彼の腰の動く限り、延々と木霊す卑猥な音楽は、残響までもが香の耳の中に残るようだった。
したがって、恋人の発言が完全な事実で、反論のしようもないだけに、香は恥ずかしさとやるせなさで胸が一杯だった。
「・・・愛しています・・・」
夕貴はぽつりと耳元で蠱惑的に囁いて、香の高まりを静かに誘った。
「・・・♡♡!!わ、わたし・・・もッ♡♡す、好・・・あッ♡♡!!あぁ~~~ッッ・・・♡♡!!」
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