紳士は若女将がお好き

LUKA

文字の大きさ
上 下
3 / 31

しおりを挟む
ぐっちゅぐっちゅと激しい後ろと前の同時攻撃にもう頭の中はぐっちゃぐちゃ。

今日のクライスはやけに色々聞いてくるから頑張って答えるのだけど、イきすぎてもぅ眠い。自分が何を言ってるのか、ちょっとわかんなくなってきた。

「俺も一番キルナが好きなんだ。お前だけを愛している」
「ふあっ……ぼ…くも…くらいしゅ…らけ。くらいしゅらけあいしてう…んぅ」

顎をつかんで振り向かされ、唇ににまたキスが落とされる。

与えられた唾液をごくんと飲み込んだら、彼の魔力がまた体に広がって染み渡っていく。身体にいっぱいの彼の魔力とキスマークによって、僕は物理的なかんじで彼のものになっていく気がした。

「なのに、お前は俺をユジンにくれてやるつもりなのか?」
「ふぁああん。ちょ、…ああ…っ」
「どうなんだ?」

室内が冷蔵庫みたいにひえっひえになっている。ゴリゴリと内壁を擦られ「ひぁああ」とまた中だけで盛大にイった。

「だってだって」

ああ、言っちゃダメ。これはナイショの話でしょ。とちょこっとだけ残った理性が止めようとするのに、口が勝手に気持ちを言葉にしていく。

「ぼく…だとクライスを…しあわせに…できないから」


「そんなはずがない!!」

クライスが怒っている。
ああ違う、泣いている?
彼の表情は見えないけど、辛そうな声に僕まで悲しくなってくる。

「くらいしゅ、なかないれ……んぁあ!?」

彼は(入れたまま)くるんと僕の向きを変え、向かい合わせになると僕の体を抱きしめた。

「俺は、お前以外の他の誰と結婚しても幸せになんてなれない。俺はお前を愛している。お前と一緒に生きていきたい。それがお前の信じる運命じゃなくても」

「……うんめいじゃ…なくても?」

彼の言葉の意味を考える。

(僕の信じる運命って、クライスとそんな話したことあったかな?)

「ひああちょっと、とまって…。いま、かんがえてぅとこだからあ!」

揺さぶる彼の動きが止まると、思い浮かんだ言葉があった。

ああ、もしかしてあれかな。ファーストキスにびっくりして、うっかりゲームの未来を喋っちゃったやつ。

、えぐえぐっ、のにぃ』

ーークライスとユジンが結婚する。

それが二人のハッピーエンドで、絶対正しい未来なのだと僕は信じていた。優斗から彼らの愛の素晴らしさを聞いていたし、ゲームの二人は結ばれて、真実幸せそうだったから。

悪役令息ぼくはそれを実現するための駒にすぎない。二人の邪魔をして恋をいいかんじに燃え上がらせ、卒業パーティーで断罪され、婚約破棄されて役目を終える。

それでいいのだと思っていた。
それが僕の運命なのだから。
クライスとユジンが幸せになれるなら構わない。むしろ、そうなるべきだと思っていたのに。

「俺はユジンではなく、お前と結婚する」

僕の信じる未来をひっくり返す彼の言葉。
抱きしめる腕の力は強い。アイスブルーの瞳は真っ直ぐに僕の瞳を見つめている。



「ぼくと、くらいすが、けっこん……」

そうすることができたらどんなにいいだろ。
だけど、

「ぼくは…くらいすに、しあわせになってほしぃの……」
「ああ。俺はキルナと結婚したら間違いなく幸せになれる」
「でも…ぼく、やみぞくせいだし」
「知ってる、黒い髪が綺麗だものな。見せてくれ」

え?  

左手のフィンガーブレスレットはお父様の指示でずっとつけっぱなしにしている。それを外すと、魔法で藍色に染まっていた髪が黒色へと変わる。自分でもこの色になった髪をみるのは久しぶりだ。

僕はこの髪色が全然好きじゃない。闇属性って一発でバレるし、バケモノとか悪魔だと言われてきた。なのにクライスはこの髪を一房掬い、キスをした。

「綺麗な漆黒の髪だな」
「きもちわるくない?」
「綺麗だ。お前の金の瞳によく合う」
「めのいろも、やっぱへんじゃない?」

最初は青かったのに途中で金に変わった変な瞳。使用人たちにキモチワルイと言われ続けたそれ。

「変じゃない。好きだと言ったろう? 月の光を集めたような、美しい瞳だ」

ちゅっと瞳にもキスをされる。こんな見た目を好きと言ってくれるなんて。でも中身は? 外見だけでなく、中身もしっかり悪役令息な僕。こんなに性格が悪いと嫌なんじゃ。

「えと、ぼく…わがままでたかびしゃで、てのつけられないわるいこらしいのだけど、いい?」

「その噂は間違っていると思うが、お前の我儘ならいくらでも聞いてやる。もっと我儘になってほしいくらいだ」

クライスったら。優しすぎるよ。ああ、胸がぽかぽかする。自分が否定してきた何もかもを、彼は受け入れてくれる。



でも本当にいいの?

「僕は、」

『あなたはいらないのーー』
『七海なんていなければーー』

「いらないこだけど……」

言いかけた口が彼の唇に塞がれた。


「いらない子なんかじゃない。俺にはお前が必要だ、キルナ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

契約結婚のはずが、幼馴染の御曹司は溺愛婚をお望みです

紬 祥子(まつやちかこ)
恋愛
旧題:幼なじみと契約結婚しましたが、いつの間にか溺愛婚になっています。 夢破れて帰ってきた故郷で、再会した彼との契約婚の日々。 ★第17回恋愛小説大賞(2024年)にて、奨励賞を受賞いたしました!★ ☆改題&加筆修正ののち、単行本として刊行されることになりました!☆ ※作品のレンタル開始に伴い、旧題で掲載していた本文は2025年2月13日に非公開となりました。  お楽しみくださっていた方々には申し訳ありませんが、何卒ご了承くださいませ。

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

処理中です...