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閑話

王女のおねだり

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ある日のおねだり。




「ねえ…おとうさま…」

「ん?」


「ありーは、おとうさまにお願いがあります」

上目遣いに可愛くお願いする愛娘に。

この日のアリーシャは可愛くおめかしをされている。

「何だい?アリーシャ」

「おとうさま。ありーは、ダグ様と一緒にいたいです」

「ダグ?ダグとはダグラスの事かい?」

「はい」

「いっしょにいたいとは?」


「ありーは、ダグ様とずっと一緒にいたいです」




「!ほお…それは…」

娘の言葉に驚きながらも、真意を測るようにみつめて聞く。

「アリーシャは、ダグラスとなぜ一緒にいたいの?」


「ダグ様にずっと抱っこしてほしいです」


「抱っこ…アリーシャは、ダグラスが、怖くないのかい?」

「?いいえ、怖くありません」

「大きくて、ごついのに?」

「はい!」



「…そうか。では、もう少し大きくなったらまた気持ちを聞かせてくれるかい?」

「はい」








3年後。


「お父様。お願いがあります」


「何だい、アリーシャ」

「アリーシャは、ダグ様が好きです」


「ほお…ダグラスが好き?」

「はい」

「アリーシャ。ダグラスのどこが好きなんだい?」


「ダグ様は、とても優しくてかっこいいからです」

「優しくかっこいい?」

「はい、とても」

「…アリーシャには、ダグラスがかっこよく映るんだね…」

「はい。ダグ様は、とてもかっこいいです!」


「そうか…。では、アリーシャ。もう少し大きくなってから、気持ちを聞かせてくれるかい?」


「はい」








3年後

「お父様、お願いがあります」

「何だい?アリーシャ」



「アリーシャは、ダグ様が好きです。結婚したいです」


「ほお…ダグラスと結婚かい?それは、なんとも…豪快なお願いだね」

「はい」

「うーん、そうだね。アリーシャ。何故、結婚したいと思うんだい?」





「ダグ様が、誰よりも好きだからです!」

「誰よりも好き?」

「それは、私よりもかい?」

「お父様より?」

「私よりダグラスが好きかい?」


「お父様と同じくらい大好きです」


「同じくらい好き…うーん、そうか」


「はい」

「…アリーシャ。もう少し大きくなってから、また気持ちを聞かせてくれるかい?」


「はい」








3年後



「お父様、お願いがあります」

「何だい?アリーシャ」

「アリーシャは、ダグ様と婚約したいです」

「ダグラスと婚約かい?」

「それは…えらく具体的なお願いだね。何故、婚約したいんだい?」

「ダグ様が好きだからです!」

「ダグラスが好き?どこが好きなんだい?」

「ダグ様は、力強く程よい筋肉質の持ち主だからです」


「ん?なんだって?」

「ダグ様は、力強く程よい筋肉質の持ち主で…」

うっとりとした表情の王女を見つめながら。

「…。アリーシャ」

「はい」


「もう少し…落ち着いてから気持ちを聞かせてくれるかい?」


「?…はい」


「…ふぅ」







成人前。





「お父様、お願いがあります」

「何だい?アリーシャ」

「お父様。ダグ様と結婚をお許しください」

「ダグラスと結婚?」

「はい!」

「ダグラスと結婚?」

「はい、予てからお願いしておりましたダグ様との婚姻許可の事です」

「アリーシャ。何を意味する事か解っているのかい」

「もちろんです!」

「君の気持を、ダグラスは、知っているのかい?」


「いいえ!」

「…」


「お父様はおっしゃられましたわ。アリーシャ。もう少し大きくなってから気持ちを聞かせてくれるかい?って」

父の瞳をしっかり見つめると


「だから、私は、可能ならば、ダグ様の元へ嫁ぎたいのです!」


「…」


「お父様、お許しください」

「…許可だけでいいのかい?」

「はい。今はそれだけで十分です」


「そうか…いいだろう。許可しよう」


「!ありがとうございます」









「お父様、アリーシャは、ダグ様のお嫁さんになりたいです」








変わらず持ち続けた想いは、やっと形になろうと…
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