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伝えたかった想い
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「…ああ。貴方は昔から…」
首を振りながら、肩を落とし項垂れた。
「兄たちは俺の事をよくわかっているからな」
国のトップは解っていた。オリビアとの婚姻を反対すればトウゴは、あっさり国を捨てて出奔するだろうと。トウゴを手放さない。引き留めるにはどうすればいいか。それはトウゴの願い通りしてやればいい。それが今まで苦労を掛けた弟への労いでもあり、またかわいい弟の幸せを願ったからでもあった。
何かを吹っ切るように目を固く瞑っていたロードはため息をつくと諦めたと。
「…仕方ありません…。国の要を失う訳にはいきませんから」
国の要である将軍の不在は、復興途中の国にとってダメージどころか再び戦火を生み他国からの侵略を誘いかねないのだから。
未だトウゴの背に庇われたままのオリビアに向って頭を下げて謝った。
「オリビア様、先程より、失礼の数々お許しください。」
「…いえ」
「臣下を代表してオリビア様のお輿入れを心より歓迎いたします」
手のひらを反すようにうって変わって祝辞をおくるロードに戸惑いながらトウゴの背から出て礼を返す。
「あ、ありがとう…」
「では、これにて国元へ伝令を飛ばしてまいりましょう」
許しをもらったと。先程までのしかめっ面が嘘のように晴れやかな表情で部屋を出て行った。
対して後悔を滲ませた声でトウゴも謝った。
「ふう…オリビア悪かったな。嫌な想いをさせた…」
「いえ…」
抱き上げて椅子に座ると。
「オリビア」
「なに?」
「すまない。きっとあっち(トウゴの国)に行ったらもっと嫌な想いをする。させるとおもう。
これは俺の我が儘で、オリビアに苦労を掛けたくないと思うのに…。それでも俺はオリビアといたい。俺の傍にあって欲しいとおもう。」
「今更…何を。我が儘は…トウゴの専売特許でしょ?」
「ああ、そうだな…。オリビアの成長は楽しみであり喜びではあったが、短いようで待つ身としては永い。会えない時間は、更に永く、俺には耐えがたく感じてな。これ以上耐えるのは…待つのはきつい…。」
俯いたまま、本当につらそうに語るトウゴ。
出会った当初。まだ10歳だったオリビアが大人になるまで。たった6年とは言え、確かに当時すでに大人だったトウゴにとって長い時間だっただろう。況してや半分以上、戦争で会うことすらできなかった。
後半に至っては昨日まで生死不明の状態だった。待つのはつらい。でも生きていてくれさえすればいつか会えるかもしれないと願っていたオリビアにとってもこの一年は心を凍らせるほど長かった…。
「なあ、オリビア…これから何があっても俺の傍で俺と共にいてくれるか?」
締まりのないプロポーズとも言える言葉を自信なさげに聞いてくるトウゴ。
もう少し、トウゴの登場が遅ければ。攫って連れて来てくれなければ。オリビアは他国へ嫁いでいたかもしれない。いや、トウゴの暗躍がなければすでに嫁いでいてもおかしくない状況だった。(オリビアなは知らないが…)
この3年半、生死不明の一年。いま、トウゴが目の前にいてくれる事の奇跡を。大切さを。オリビアは知っている。
だからこそ、トウゴが不安に思うことはない。
あの時。伝えたいと願った。伝えていないと後悔した。ただ一つの想いがあった。
あの時の私に教えてあげたい。
告げる事のできるこの幸せを。
「もちろん。トウゴが傍にあってくれるならこれからの人生を共にありたいわ。だって」
わたしは、貴方がすきだから。
首を振りながら、肩を落とし項垂れた。
「兄たちは俺の事をよくわかっているからな」
国のトップは解っていた。オリビアとの婚姻を反対すればトウゴは、あっさり国を捨てて出奔するだろうと。トウゴを手放さない。引き留めるにはどうすればいいか。それはトウゴの願い通りしてやればいい。それが今まで苦労を掛けた弟への労いでもあり、またかわいい弟の幸せを願ったからでもあった。
何かを吹っ切るように目を固く瞑っていたロードはため息をつくと諦めたと。
「…仕方ありません…。国の要を失う訳にはいきませんから」
国の要である将軍の不在は、復興途中の国にとってダメージどころか再び戦火を生み他国からの侵略を誘いかねないのだから。
未だトウゴの背に庇われたままのオリビアに向って頭を下げて謝った。
「オリビア様、先程より、失礼の数々お許しください。」
「…いえ」
「臣下を代表してオリビア様のお輿入れを心より歓迎いたします」
手のひらを反すようにうって変わって祝辞をおくるロードに戸惑いながらトウゴの背から出て礼を返す。
「あ、ありがとう…」
「では、これにて国元へ伝令を飛ばしてまいりましょう」
許しをもらったと。先程までのしかめっ面が嘘のように晴れやかな表情で部屋を出て行った。
対して後悔を滲ませた声でトウゴも謝った。
「ふう…オリビア悪かったな。嫌な想いをさせた…」
「いえ…」
抱き上げて椅子に座ると。
「オリビア」
「なに?」
「すまない。きっとあっち(トウゴの国)に行ったらもっと嫌な想いをする。させるとおもう。
これは俺の我が儘で、オリビアに苦労を掛けたくないと思うのに…。それでも俺はオリビアといたい。俺の傍にあって欲しいとおもう。」
「今更…何を。我が儘は…トウゴの専売特許でしょ?」
「ああ、そうだな…。オリビアの成長は楽しみであり喜びではあったが、短いようで待つ身としては永い。会えない時間は、更に永く、俺には耐えがたく感じてな。これ以上耐えるのは…待つのはきつい…。」
俯いたまま、本当につらそうに語るトウゴ。
出会った当初。まだ10歳だったオリビアが大人になるまで。たった6年とは言え、確かに当時すでに大人だったトウゴにとって長い時間だっただろう。況してや半分以上、戦争で会うことすらできなかった。
後半に至っては昨日まで生死不明の状態だった。待つのはつらい。でも生きていてくれさえすればいつか会えるかもしれないと願っていたオリビアにとってもこの一年は心を凍らせるほど長かった…。
「なあ、オリビア…これから何があっても俺の傍で俺と共にいてくれるか?」
締まりのないプロポーズとも言える言葉を自信なさげに聞いてくるトウゴ。
もう少し、トウゴの登場が遅ければ。攫って連れて来てくれなければ。オリビアは他国へ嫁いでいたかもしれない。いや、トウゴの暗躍がなければすでに嫁いでいてもおかしくない状況だった。(オリビアなは知らないが…)
この3年半、生死不明の一年。いま、トウゴが目の前にいてくれる事の奇跡を。大切さを。オリビアは知っている。
だからこそ、トウゴが不安に思うことはない。
あの時。伝えたいと願った。伝えていないと後悔した。ただ一つの想いがあった。
あの時の私に教えてあげたい。
告げる事のできるこの幸せを。
「もちろん。トウゴが傍にあってくれるならこれからの人生を共にありたいわ。だって」
わたしは、貴方がすきだから。
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