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番外編 Naberius
1 序章
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神に謀反を起こしたサタン。またの名をルシファー。元熾天使長である彼を皇帝に頂き、冥界ではその座を巡った戦争、反乱などが彼ら悪魔の堕落の日より今日まで続いていた。しかし、そのほとんどは小規模で長引くことはなく現皇帝の命による首謀者たちの殺害や内輪もめなどが元で終わり、また現れを繰り返していた。
時は冥界歴千五百二十八年。人の暦で約、千百年頃のこと、セフィリールという元熾天使で冥界の革新派議員の発言が物議を呼んだ。この事がきっかけで、後に多くの犠牲を出すことになろうとはこの時は誰も予想していなかった。
この騒動の発端となった発言がどんなもので、またどのように起こったかを話す前に、この時代の人間界と冥界との関係について少しばかり触れようと思う。
人類の祖がエデンから追放された時から、人間界、地球を含め太陽系全体は神の手を離れ悪魔の領域となっていた。だからと言って彼ら悪魔は好き放題人間界への門を潜ることは地球管轄の天使たちとの間で取り決めた法により許されてはいなかった。今のように人自らが黒魔術、悪魔召喚といったような魔界との交信により世界のあちこちに地獄へ通じる穴を開けてしまうまでは……。それまで人間界には、上位悪魔、またはそれら上位の者の命令を受けた悪魔しか自由に行き来できないのが現状であった。
冥界には人間に対して友好的な悪魔や、冥界で生まれ神に何の敵意も感じていないものも少数存在した。また、天界戦争には加担したものの天への帰還を切望するものも口には出さずとも堕天使たちの中には存在した。
冥界を統治する三王の一柱、アンテノーラを統治する大公爵のアスタロトもその一人ではあるものの、彼は皇帝ルシファーに絶大なる信頼を寄せており、冥界での度重なる戦争と天界で起きた天軍との戦闘の際にも彼と同盟を結び、自らの軍隊を指揮したりしていたので、天への帰還は天界全域の攻略と唯一神の抹殺以外に今さら選択肢はなかった。
さて、冥界の歴史を揺るがしたセフィリールの提唱とは、一体何だったのだろう? 彼は人間界の神への返還と、人間の心への介入の放棄。それによる神の許しと、冥界の独裁体制の否定と身分制度の廃止を唱えたのだ。
しかし、冥界はその全土が統一された君主制国家だ。全てが皇帝ルシファーの判断により決められている。身分に関して言えば、王の下に王の奴隷としての領主がいて、領主である主人はその下に多くの戦士、民、という奴隷を抱えている構図になる。つまり、この世界の統治者である皇帝以外、彼らは常に誰かの奴隷なのだ。奴隷である彼らは自らの主人に対して絶対服従を守らなければならない。自分の意思を通すことも認められてはいない。もし、それを犯し主人の怒りに触れようものなら法が彼らを裁く。そんな世界なのだ。
だから彼らはある日突然、主人に娯楽のために玩ばれようが、虐げられようが何の抵抗もしない。殺されるよりはましと、苦痛の中それが自分の運命だと諦めるだけだった。
そんな彼らを見ている者ですら、虐げられる彼らを助けようとはしなかった。それは当たり前のことで、彼らにとっての日常だったからだ。虐げられた者がその下を虐げ、この恐ろしく正確な主従の構図はもはやこの世界の全体に浸透していたのだ。
そのことを、中枢にいる上位の者が指摘したのだ。神の許しを乞い、この世界の秩序まで否定するという彼の暴挙は皇帝への不敬であり、議会に対する冒涜だった。帝国議会始まって以来の元熾天使による訴えを議会は否決。彼の議会からの追放が既決され、さらには、彼の統治する大国の帝国への返還と称号の剥奪、法廷への出廷が命じられた。しかし、現法では決して勝ち目のないことが分かっていた彼はそれを拒否。ついには帝国との開戦の火蓋が切られた。
彼の議会での発言は瞬く間に冥界全土に広がった。民衆たちの間でも彼を支持するものが続発。各地で結社ができ、集会などが秘密裏に行われた。その集会は次第に勢いを増し、軍が結成された。各地で大規模な戦闘が繰り広げられる中、ついには冥界の三分の一が彼を支持するようになった。
その事で危機を感じた皇帝は、セフィーリルと彼を慕う指導者たちの暗殺を自身の右腕でもあるベルゼブブに命じた。しかし、以外にもセフィーリルに与した力ある悪魔ベリアルがこれを阻止。皇帝の野望は叶わぬまま敵側の勢力は拡大し続けていった。
多くの国や森や家屋が焼かれ、多くの仲間が死に、多くの罪なき者がその犠牲になった。
セフィーリル自身、この状況をよくは思っていなかった。武力をもってしたところでこの冥界の状況は変わらない。これでは、これまでに起きてきた反乱となんら大差ないではないか? しかし、この暗黒の世において彼の考えは現実とはかけ離れた夢物語に過ぎなかったのだ。
戦争は終結することなく四百年という歳月が流れた。
時は冥界歴千五百二十八年。人の暦で約、千百年頃のこと、セフィリールという元熾天使で冥界の革新派議員の発言が物議を呼んだ。この事がきっかけで、後に多くの犠牲を出すことになろうとはこの時は誰も予想していなかった。
この騒動の発端となった発言がどんなもので、またどのように起こったかを話す前に、この時代の人間界と冥界との関係について少しばかり触れようと思う。
人類の祖がエデンから追放された時から、人間界、地球を含め太陽系全体は神の手を離れ悪魔の領域となっていた。だからと言って彼ら悪魔は好き放題人間界への門を潜ることは地球管轄の天使たちとの間で取り決めた法により許されてはいなかった。今のように人自らが黒魔術、悪魔召喚といったような魔界との交信により世界のあちこちに地獄へ通じる穴を開けてしまうまでは……。それまで人間界には、上位悪魔、またはそれら上位の者の命令を受けた悪魔しか自由に行き来できないのが現状であった。
冥界には人間に対して友好的な悪魔や、冥界で生まれ神に何の敵意も感じていないものも少数存在した。また、天界戦争には加担したものの天への帰還を切望するものも口には出さずとも堕天使たちの中には存在した。
冥界を統治する三王の一柱、アンテノーラを統治する大公爵のアスタロトもその一人ではあるものの、彼は皇帝ルシファーに絶大なる信頼を寄せており、冥界での度重なる戦争と天界で起きた天軍との戦闘の際にも彼と同盟を結び、自らの軍隊を指揮したりしていたので、天への帰還は天界全域の攻略と唯一神の抹殺以外に今さら選択肢はなかった。
さて、冥界の歴史を揺るがしたセフィリールの提唱とは、一体何だったのだろう? 彼は人間界の神への返還と、人間の心への介入の放棄。それによる神の許しと、冥界の独裁体制の否定と身分制度の廃止を唱えたのだ。
しかし、冥界はその全土が統一された君主制国家だ。全てが皇帝ルシファーの判断により決められている。身分に関して言えば、王の下に王の奴隷としての領主がいて、領主である主人はその下に多くの戦士、民、という奴隷を抱えている構図になる。つまり、この世界の統治者である皇帝以外、彼らは常に誰かの奴隷なのだ。奴隷である彼らは自らの主人に対して絶対服従を守らなければならない。自分の意思を通すことも認められてはいない。もし、それを犯し主人の怒りに触れようものなら法が彼らを裁く。そんな世界なのだ。
だから彼らはある日突然、主人に娯楽のために玩ばれようが、虐げられようが何の抵抗もしない。殺されるよりはましと、苦痛の中それが自分の運命だと諦めるだけだった。
そんな彼らを見ている者ですら、虐げられる彼らを助けようとはしなかった。それは当たり前のことで、彼らにとっての日常だったからだ。虐げられた者がその下を虐げ、この恐ろしく正確な主従の構図はもはやこの世界の全体に浸透していたのだ。
そのことを、中枢にいる上位の者が指摘したのだ。神の許しを乞い、この世界の秩序まで否定するという彼の暴挙は皇帝への不敬であり、議会に対する冒涜だった。帝国議会始まって以来の元熾天使による訴えを議会は否決。彼の議会からの追放が既決され、さらには、彼の統治する大国の帝国への返還と称号の剥奪、法廷への出廷が命じられた。しかし、現法では決して勝ち目のないことが分かっていた彼はそれを拒否。ついには帝国との開戦の火蓋が切られた。
彼の議会での発言は瞬く間に冥界全土に広がった。民衆たちの間でも彼を支持するものが続発。各地で結社ができ、集会などが秘密裏に行われた。その集会は次第に勢いを増し、軍が結成された。各地で大規模な戦闘が繰り広げられる中、ついには冥界の三分の一が彼を支持するようになった。
その事で危機を感じた皇帝は、セフィーリルと彼を慕う指導者たちの暗殺を自身の右腕でもあるベルゼブブに命じた。しかし、以外にもセフィーリルに与した力ある悪魔ベリアルがこれを阻止。皇帝の野望は叶わぬまま敵側の勢力は拡大し続けていった。
多くの国や森や家屋が焼かれ、多くの仲間が死に、多くの罪なき者がその犠牲になった。
セフィーリル自身、この状況をよくは思っていなかった。武力をもってしたところでこの冥界の状況は変わらない。これでは、これまでに起きてきた反乱となんら大差ないではないか? しかし、この暗黒の世において彼の考えは現実とはかけ離れた夢物語に過ぎなかったのだ。
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