大義

俣彦

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光秀―人生最大の成功であったハズが……―

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利三「越前で不遇をかこつ足利義昭に目を付けたのが……。」

光秀「私なのであったが……。」

利三「ところで殿は何故越前なんぞに……。」

光秀「それはお前の一族の喧嘩に巻き込まれたからだよ。」

利三「そうでありましたな。」



美濃の国東濃地方に地盤を持つ明智家。戦国時代に入ってからも長くこの地を治めていたのでありましたが……。



利三「道三と義龍の親子喧嘩に……。でも珍しいですよね。一族全てが一方の肩を持つのは。」

(焼け落ちる本能寺を眺めながら)

光秀「……一族のDNAがそうさせるのかもしれないな……。」



道三側についたが故、東濃地方における全ての地盤を失い、その中で辛うじて脱出することが出来たのが光秀。



光秀「その点。お前は上手に振舞っているよな。」



利三は親子喧嘩のあと、義龍の家臣。義龍が信長に敗れる過程で稲葉家。更には光秀の家臣へと転身するのでありました。

一方、越前に落ち延びた光秀は、かの地で10年もの間。髀肉之嘆の日々を過ごすのでありました。

そこにやって来たのが足利義昭。

『将軍になりたい!!』

『将軍になりたい!!』

と騒ぎ立てるも一向に腰をあげようとしない朝倉義景。

利三「まぁそうでしょうね……。朝倉にとって上洛は、なんのメリットもありませんからね……。」



ちょうどその時、美濃の攻略に成功したのが



利三「……織田信長……。その美濃の攻略に殿は……。」

光秀「……それだったら格好良いんだけどな……。」



越前にやって来た足利義昭と美濃を攻略した織田信長。この両者には以前から接点があったようでありまして……。



利三「義昭が近江滞在時。一度信長に上洛を依頼した。と……。」



当時対立関係にあった織田と斎藤の中を取り持ち和睦に持ち込むことに成功した足利義昭。



光秀「侵攻される側の斎藤家にとってはメリットがある和睦であったが、攻め込む側の信長にしてみたら迷惑この上ない提案。」



この和睦はわずか4ヶ月で破綻。義昭は信長に頼ることを諦め、近江から若狭。そして越前に入るのでありました。その越前の朝倉が頼りにはならないことに不満を抱く義昭に、当面の敵が居なくなり、京のある西へ勢力の拡大を目論む織田信長。



利三「この情勢下。たまたま越前に居たのが……。」

光秀「私であった。と……。」



両者の間を取り持つことにより、



利三「……と言うことは、つまり殿は両者との接点が無かったわけでは無かった……。」

光秀「もともと美濃の守護・土岐の一族であるので将軍家との縁が全く無かったわけでは無い。それなりの立場であったから10年間。越前で生活することが出来たとも言える。朝倉が美濃に用事があった時に。ぐらいの気持ちであったとは思われるが。その土岐一族と道三が縁戚関係にある。と言うことは信長とも縁がある。この伝手をフルに活かせば、今の惨めな立場から脱出することが出来る。」



と一発逆転を期し、足利義昭に近づく明智光秀でありました。
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