上 下
306 / 318

睨み合い

しおりを挟む
 山県昌景が浮野に到着して少しした後、対岸に清州勢が到着。早速柵を拵える織田勢と、それを見守る山県昌景。

 戻って小牧山。



山県昌景「喜兵衛。」

武藤喜兵衛「如何為されましたか?」

山県昌景「岩倉がある故、向こうが動かざるを得ない事は理解出来た。」

武藤喜兵衛「はい。」

山県昌景「とは言え岩倉が今日明日の兵糧すら無いとは到底思えぬ。」

武藤喜兵衛「はい。」

山県昌景「伊木山に岐阜の者共を誘き寄せる事が出来たとしても、釘付けにする事は出来ない。急ぎ清州の者が居る浮野に向かう事になる。」

武藤喜兵衛「はい。」

山県昌景「睨み合いを続けて得するのは敵方であると考えるが如何かな?」

武藤喜兵衛「そこまで待つ危険性を否定する事は出来ません。」

山県昌景「喜兵衛としても避けたい事態であろう?」

武藤喜兵衛「はい。」

山県昌景「『はい。』

ってお前……。」

武藤喜兵衛「山県様が仰る事、御尤もであります。ただ此度のいくさ。浮野に居る織田勢が動くのは……。」



 武田方が撤退を試みた時。



武藤喜兵衛「と見ています。これは岐阜勢が加わっても同様であります。」

山県昌景「高坂も同じ意見か?」



 静かに頷く高坂昌信。



武藤喜兵衛「織田勢の背後や側面に回り込む事が出来れば局面を打開する事が出来るのでありますが、通じる道は織田が押さえているため利用する事は出来ません。」

山県昌景「ならば俺が川向こうに陣を張り、移動による敵の疲れが取れる前に……。」

高坂昌信「いや。それはお止め下さい。織田は絶対に動きます。」

山県昌景「さっき動かないと言ったであろう?」

高坂昌信「はい。浮野の織田勢が動く事はありません。」

山県昌景「だろ?」

高坂昌信「我らが動かそうとしているのは……。」



 浮野に織田勢が到着したのを聞きつけた馬場信春は、岩倉周りに最低限の兵を残し山県昌景が居る浮野に合流。翌朝……。



「放て!」

を合図に銃声が轟くや、一塊となって躍り出る集団が。彼らはいったい……。



 戻って小牧山。



武藤喜兵衛「動くのは岩倉の織田勢であります。我らが浮野の大兵に気を取られ、兵を分けた隙を狙って来ます。」

山県昌景「馬場は承知か?」

高坂昌信「はい。彼は浮野に移動しますが、岩倉周りに残った兵の運用についても彼に伝えてあります。

『負けるように。』

と。」

山県昌景「岩倉の織田勢に突破されたふりをし、敵が勢いに乗って来た所を俺と馬場が……。」

武藤喜兵衛「いえ。違います。岩倉周りに残った方々に指示したのは……。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

天冥聖戦 伝説への軌跡

くらまゆうき
ファンタジー
あらすじ 狐の神族にはどんな過去があって人に封印されたのか? もはや世界の誰からも忘れられた男となった狐神はどうにかして人の体から出ようとするが、思いもよらぬ展開へと発展していく… 消えている過去の記憶を追い求めながら彼が感じた事は戦争のない世界を作りたい。 シーズンを重ねるごとに解き明かされていく狐の神族の謎は衝撃の連発! 書籍化、アニメ化したいと大絶賛の物語をお見逃しなく

不死の少女は王女様

未羊
ファンタジー
※カクヨム、エブリスタでの完結作品の自己転載です 大陸ひとつを統一していたエルミタージュ王国。その栄華は永遠に続くかと思われた。 ある時、小さな内乱をきっかけに王国は一気に傾き、ついに滅亡の時を迎えてしまう。 国王と王妃は一人娘を逃すために魔法をかけ、自らはその戦火に姿を消した。 一人残された王女は何度となく絶望をしたものの生きながらえてしまう。 絶望の果てにやがて落ち着いた王女は、両親の最後の言葉を胸に、気の遠くなるあてのない旅へと出たのだった。

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

この争いの絶えない世界で ~魔王になって平和の為に戦いますR

ばたっちゅ
ファンタジー
相和義輝(あいわよしき)は新たな魔王として現代から召喚される。 だがその世界は、世界の殆どを支配した人類が、僅かに残る魔族を滅ぼす戦いを始めていた。 無為に死に逝く人間達、荒廃する自然……こんな無駄な争いは止めなければいけない。だが人類にもまた、戦うべき理由と、戦いを止められない事情があった。 人類を会話のテーブルまで引っ張り出すには、結局戦争に勝利するしかない。 だが魔王として用意された力は、死を予感する力と全ての文字と言葉を理解する力のみ。 自分一人の力で戦う事は出来ないが、強力な魔人や個性豊かな魔族たちの力を借りて戦う事を決意する。 殺戮の果てに、互いが共存する未来があると信じて。

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政
ファンタジー
【第10章、始動!!】ダンジョンが現れた、現代社会のお話 主人公の冴島渉は、友人の誘いに乗って、冒険者登録を行った しかし、彼が神から与えられたのは、一生レベルアップしない召喚獣を用いて戦う【召喚士】という力だった それでも、渉は召喚獣を使って、見事、ダンジョンのボスを撃破する そして、彼が得たのは----召喚獣をレベルアップさせる能力だった この世界で唯一、召喚獣をレベルアップさせられる渉 神から与えられた制約で、人間とパーティーを組めない彼は、誰にも知られることがないまま、どんどん強くなっていく…… ※召喚獣や魔物などについて、『おーぷん2ちゃんねる:にゅー速VIP』にて『おーぷん民でまじめにファンタジー世界を作ろう』で作られた世界観……というか、モンスターを一部使用して書きました!! 内容を纏めたwikiもありますので、お暇な時に一読していただければ更に楽しめるかもしれません? https://www65.atwiki.jp/opfan/pages/1.html

転生一九三六〜戦いたくない八人の若者たち〜

紫 和春
SF
二〇二〇年の現代から、一九三六年の世界に転生した八人の若者たち。彼らはスマートフォンでつながっている。 第二次世界大戦直前の緊張感が高まった世界で、彼ら彼女らはどのように歴史を改変していくのか。

処理中です...