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伊木山城
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真田信綱「逃げる奴らは放っておけ。急ぐぞ!」
真田昌輝「わかっています。」
敗走する織田兵には目もくれず、真田兄弟が向かった先は伊木山城。味方が真田勢に翻弄される様子を呆然と見守るしか無かった城方は、反転する恐れのある真田兄弟。対岸の犬山からの新手を恐れ脱出を決断。
これに対し真田兄弟は、城からの脱出兵並びに岐阜からの後詰めとの遭遇戦にならぬ道のりを辿りながら伊木山城に到着。敵兵が残っていない事を確認した後入城。そこには……。
真田昌輝「織田の力。侮る事は出来ません。」
真田信綱「そうだな。」
真田昌輝「前線とは言え借りの住まいに過ぎない城に、これ程の兵糧と弾薬を備える事が出来るのでありますからね……。」
真田信綱「歴戦の猛者共が、これだけの物を携えてうちに向かって来たら……。」
真田昌輝「ひとたまりもありません。」
真田信綱「高坂様が恐れている事。確かだな?」
真田昌輝「はい。本人は
『私は臆病者だから。』
と言っていましたが。」
真田信綱「これだけの物を棄てて行っても問題無いから、(織田勢は)ああやって逃げる事も出来る。」
真田昌輝「一度や二度の負けではびくともしない事がわかりました。」
真田信綱「眺めている時間は無い。」
真田昌輝「はい。」
因みに伊木山城は、標高173mの伊木山山頂に6段曲輪を持つ城。濃尾平野と岐阜市と各務原市を一望する事が可能。
その城に真田兄弟は大量の六文銭の旗印を掲げ、自らの城である事を誇示。岐阜からの攻撃に備えたのでありました。
この挑発的な振る舞いに織田方は憤激。一度岐阜城で態勢を整え、再び出陣。狙うは勿論伊木山城。雲霞の如く押し寄せた織田勢は伊木山城を包囲。先の岩倉の事もあり、周囲に武田方が居ない事。武田方が侵入する恐れのある対岸犬山からの動きも見られない事を確認した織田勢は一斉攻撃。山頂に向け一気に駆け上がった織田勢は、さしたる抵抗も無い中、6個ある曲輪を奪取。しかし……。
戻って小牧山。
山県昌景「高坂も喋れよ。」
高坂昌信「私では無く、喜兵衛が調べた事でありますので。」
山県昌景「事前に話し合いしているのだろ?」
武藤喜兵衛「はい。」
高坂昌信「美濃攻略を考えた場合、伊木山は是が非でも手に入れたい城であります。しかし今の状況では維持する事は不可能であります。それならば伊木山は岐阜の織田勢を引き付けるだけ引き付けるための捨て石にしようと。勿論、織田が迫る前に信綱と昌輝には脱出するよう。恐らく城の中には大量の兵糧と弾薬が残されている事が想定されますが、それも無視してすぐに戻って来るよう厳命しています。」
真田昌輝「わかっています。」
敗走する織田兵には目もくれず、真田兄弟が向かった先は伊木山城。味方が真田勢に翻弄される様子を呆然と見守るしか無かった城方は、反転する恐れのある真田兄弟。対岸の犬山からの新手を恐れ脱出を決断。
これに対し真田兄弟は、城からの脱出兵並びに岐阜からの後詰めとの遭遇戦にならぬ道のりを辿りながら伊木山城に到着。敵兵が残っていない事を確認した後入城。そこには……。
真田昌輝「織田の力。侮る事は出来ません。」
真田信綱「そうだな。」
真田昌輝「前線とは言え借りの住まいに過ぎない城に、これ程の兵糧と弾薬を備える事が出来るのでありますからね……。」
真田信綱「歴戦の猛者共が、これだけの物を携えてうちに向かって来たら……。」
真田昌輝「ひとたまりもありません。」
真田信綱「高坂様が恐れている事。確かだな?」
真田昌輝「はい。本人は
『私は臆病者だから。』
と言っていましたが。」
真田信綱「これだけの物を棄てて行っても問題無いから、(織田勢は)ああやって逃げる事も出来る。」
真田昌輝「一度や二度の負けではびくともしない事がわかりました。」
真田信綱「眺めている時間は無い。」
真田昌輝「はい。」
因みに伊木山城は、標高173mの伊木山山頂に6段曲輪を持つ城。濃尾平野と岐阜市と各務原市を一望する事が可能。
その城に真田兄弟は大量の六文銭の旗印を掲げ、自らの城である事を誇示。岐阜からの攻撃に備えたのでありました。
この挑発的な振る舞いに織田方は憤激。一度岐阜城で態勢を整え、再び出陣。狙うは勿論伊木山城。雲霞の如く押し寄せた織田勢は伊木山城を包囲。先の岩倉の事もあり、周囲に武田方が居ない事。武田方が侵入する恐れのある対岸犬山からの動きも見られない事を確認した織田勢は一斉攻撃。山頂に向け一気に駆け上がった織田勢は、さしたる抵抗も無い中、6個ある曲輪を奪取。しかし……。
戻って小牧山。
山県昌景「高坂も喋れよ。」
高坂昌信「私では無く、喜兵衛が調べた事でありますので。」
山県昌景「事前に話し合いしているのだろ?」
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高坂昌信「美濃攻略を考えた場合、伊木山は是が非でも手に入れたい城であります。しかし今の状況では維持する事は不可能であります。それならば伊木山は岐阜の織田勢を引き付けるだけ引き付けるための捨て石にしようと。勿論、織田が迫る前に信綱と昌輝には脱出するよう。恐らく城の中には大量の兵糧と弾薬が残されている事が想定されますが、それも無視してすぐに戻って来るよう厳命しています。」
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