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高坂昌信「喜兵衛の気持ちはわかる。岩倉が廃城になって20年近い月日が流れているが故、表立って抵抗出来ない事もわかっている。手に入れる事は可能である。しかし今、岩倉を確保するのは得策では無い。理由は喜兵衛もわかっているであろう。」

武藤喜兵衛「拠点を尾張に持って行く事が出来ていないのが現状でありますからね。」



 ここは美濃国岩村城。



高坂昌信「殿が金山城を抜いていただければ状況が変わるのでありましたが。」

私(武田勝頼)「ん!?」

高坂昌信「いえ、私の指示通りに動いていただきました事。感謝しています。」

武藤喜兵衛「『岐阜と清州を牽制するため。』

でありますね?」

高坂昌信「あと岩倉に関しては、犬山から小牧山。今、信康が作戦を展開している佐久間領を線で確保する。東側の安全を確実なものにしてから動く事になる。目的は勿論……。」



 清須城を攻撃するため。



高坂昌信「この辺りについては信康とも話はついている。」

武藤喜兵衛「そうなりますと山県様や小浜様は鳴海城の攻撃に参加する事に?」

高坂昌信「う~~~ん。鳴海城については、攻め落として実利を得るのは信康だからな……。海からの補給を断っているだけでも十分貢献していると、見ていただくしかない。」

武藤喜兵衛「もし我らが鳴海城を攻めるとするならば如何為されますか?」

高坂昌信「(佐久間)信盛が不在とは言え、鳴海は佐久間の本拠地。内応で崩す事は出来ない。今、信康が行っている事と同様。他の佐久間領を削りながら城の様子を伺う事になる。鳴海が主である事を考えれば、そこから救援の兵を出さなければならない。いづれ外でのいくさが行われる事になる。その時、きちんと叩く事が出来るよう情報収集にあたる。浜松を思い出していただければ宜しいかと。」

武藤喜兵衛「もし出て来なかった場合は?」

高坂昌信「鳴海以外の佐久間領の制圧に邁進するのみ。

『主(鳴海城)が見殺しにした。』

事実を喧伝する事が出来ればそれで良い。佐久間領内並びに織田家中における佐久間信盛の勢威を失墜させる事が目的。」

武藤喜兵衛「残された鳴海城は?」

高坂昌信「うちは放っておく事がほとんどかな?どうせ留まる事が出来なくなるのはわかっているので。尤もそれがために始まった諍いも多いがな。」



 村上義清による上杉謙信、今川氏真による北条氏康との抗争。



高坂昌信「禍根を残さないためには、きちんとした勝利。二度と復活出来ないようにするに越した事は無いが、徹底すればする程……。」



 敵味方双方の犠牲を増やしてしまう事になる。



高坂昌信「その後の統治を考えた場合、避けた方が良い。」
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