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焙烙玉

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小浜景隆「鎌槍!!」

の号令を聞いた武田軍の船団は鎌槍を取り出し、九鬼軍の舟を安定させる錨綱と錨網を断ち切る事に成功。これを受け、

小浜景隆「火矢を放て!!」



 混乱する九鬼の船団目掛け一斉射撃。そして……。

 戻って菅田和。



本多正信「毛利水軍にあって、九鬼水軍が知らない物はこちら。焙烙玉であります。」

高坂昌信「外は土鍋と同じものでありますね?」

本多正信「はい。陶器を用いる事もあります。」

高坂昌信「そうなりますと中身は火薬?」

本多正信「はい。外に線を伸ばし、火を点けた後。敵の舟目掛け投げ込み手筈となっています。」

高坂昌信「爆発力で以て相手を倒す仕掛けでありますか?」

本多正信「それが理想であります。しかし現状、爆発力だけで敵を凌駕するには至っていません。」

高坂昌信「火薬の量が不足している?」

本多正信「量よりも調合に問題があると言われています。こればかりは実際使ってみなければわかりません。」

高坂昌信「使い物にならない物もある?」

本多正信「いえ。燃えるまでの時間や爆発の度合いに差はありますが、効果は十分に期待する事が出来ます。」

高坂昌信「爆発力が弱いのだろ?」

本多正信「確かに。」

高坂昌信「では駄目であろう?」

本多正信「だからこそ良い事もあります。」

高坂昌信「本当か?」

本多正信「焙烙玉の恐ろしさは爆発力よりも……。」



 九鬼の軍船に投げ込まれた焙烙玉の多くは不完全燃焼を起こすも。



本多正信「その分、多くの火の粉を撒き散らす事が出来ます。これを活かすために必要なのが……。」



 あらかじめ舟に火を点けて置く事。



高坂昌信「それで先に火矢を撃ち込む必要があるのか?」

本多正信「その通りであります。舟は火に弱い木製であります。衝突力以上に火の回りを速くする事が大事であります。因みに高坂様は南蛮船を見た事は御座いますか?」

高坂昌信「我らの舟と違いあるのか?」

本多正信「はい。舟の高さが違います。小浜様はもとより九鬼。更には毛利に至るまで軍船の上には高い防御壁を設けられています。」

高坂昌信「南蛮の舟は防御壁が存在しないのか?」

本多正信「無いわけではありませんが、長い距離。それも波が荒い海を行き来しなければなりませんので。」

高坂昌信「移動に特化している?それに対し我が国の舟は近距離で内海。加えて自分以外の舟と接点を持つが多い。その備えが必要となる。」

本多正信「その通りであります。」

高坂昌信「舟の内側に焙烙玉を投げ込む事によって、舟の中を火の海にする事が出来る。その際、外からの攻撃に備えた防御壁が消化の妨げとなる可能性がある?」

本多正信「毛利の狙いはそこであります。」
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