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陥落
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しばらくして……。
武藤喜兵衛「伊賀陥落でありますか?」
私(武田勝頼)「山県からの便りが詳しかった。」
武藤喜兵衛「どのような伝手からでありますか?」
私(武田勝頼)「徳川の中に伊賀の出の者が居るんだとか。尤も最初に徳川に仕えたのは親の時らしく、本人は生まれも育ちも三河。」
武藤喜兵衛「陥落の経緯を教えていただけますでしょうか?」
伊賀攻めに失敗した織田信雄は自身の汚名をそそぐべく直ちに兵を編成。北から蒲生と脇坂。北東方向からは丹羽に滝川。北西部からは堀に多羅尾。南西からは浅野に筒井。そして南東部から織田信雄自らが。伊賀に通じる全ての口から乱入。その数実に5万。
多勢無勢。わずか1週間で伊賀のほぼ全ての地域が織田信雄の手に落ち、最後まで抵抗を試みた南西部の柏原城も1ヶ月後には陥落。伊賀国内は焦土と化し、3分の1の人が織田の手に掛かり……。
武藤喜兵衛「斯様な状況で治める事は……。」
私(武田勝頼)「越前で経験しているからな……。ただ越前と違うのは、伊賀国内に織田を支持する者はいない。逆に反対の立場の者しかいないから出来た所業と言えるかもしれない。」
武藤喜兵衛「殿でしたら?」
私(武田勝頼)「うちは出来ない。敵方に協力者が出ない事には攻略は覚束ないし、仮に出来たとしても国の全てを管轄出来るだけの人員を持って行くだけの余裕は無い。」
武藤喜兵衛「織田はそれが可能?」
私(武田勝頼)「信長の直臣衆で手持無沙汰な奴。特に将軍との折衝にあたっていた者共が居るんだろう。」
武藤喜兵衛「となりますと伊賀を管轄する事になりましたのは?」
私(武田勝頼)「『伊賀は織田信雄の直轄領となった。』
と記されている。」
武藤喜兵衛「越前に始まり、刈谷に知多。そして此度の伊賀と、統治の仕方が少々荒っぽいように感じるのでありますが。」
私(武田勝頼)「跡部に見せた時に言われたのが……。呼んでこようか?」
武藤喜兵衛「お願いします。」
跡部勝資「その件でありますか。織田の特徴として『国替』があります。土地はあくまで織田の持ち物であって、褒美として与えられたとしても各々が各々の方法で任された場所を運営する事は許されていません。先程、喜兵衛が言いました場所は織田の直轄領ではありませんでした。刈谷は水野。知多は久松。越前は朝倉の中で織田に協力した者共がそれぞれの方法で治め、伊賀については敵対していました。
『今後、織田に従うのであればこちらの考えに従っていただく。さもなくば……。』」
殲滅するのみ。
武藤喜兵衛「伊賀陥落でありますか?」
私(武田勝頼)「山県からの便りが詳しかった。」
武藤喜兵衛「どのような伝手からでありますか?」
私(武田勝頼)「徳川の中に伊賀の出の者が居るんだとか。尤も最初に徳川に仕えたのは親の時らしく、本人は生まれも育ちも三河。」
武藤喜兵衛「陥落の経緯を教えていただけますでしょうか?」
伊賀攻めに失敗した織田信雄は自身の汚名をそそぐべく直ちに兵を編成。北から蒲生と脇坂。北東方向からは丹羽に滝川。北西部からは堀に多羅尾。南西からは浅野に筒井。そして南東部から織田信雄自らが。伊賀に通じる全ての口から乱入。その数実に5万。
多勢無勢。わずか1週間で伊賀のほぼ全ての地域が織田信雄の手に落ち、最後まで抵抗を試みた南西部の柏原城も1ヶ月後には陥落。伊賀国内は焦土と化し、3分の1の人が織田の手に掛かり……。
武藤喜兵衛「斯様な状況で治める事は……。」
私(武田勝頼)「越前で経験しているからな……。ただ越前と違うのは、伊賀国内に織田を支持する者はいない。逆に反対の立場の者しかいないから出来た所業と言えるかもしれない。」
武藤喜兵衛「殿でしたら?」
私(武田勝頼)「うちは出来ない。敵方に協力者が出ない事には攻略は覚束ないし、仮に出来たとしても国の全てを管轄出来るだけの人員を持って行くだけの余裕は無い。」
武藤喜兵衛「織田はそれが可能?」
私(武田勝頼)「信長の直臣衆で手持無沙汰な奴。特に将軍との折衝にあたっていた者共が居るんだろう。」
武藤喜兵衛「となりますと伊賀を管轄する事になりましたのは?」
私(武田勝頼)「『伊賀は織田信雄の直轄領となった。』
と記されている。」
武藤喜兵衛「越前に始まり、刈谷に知多。そして此度の伊賀と、統治の仕方が少々荒っぽいように感じるのでありますが。」
私(武田勝頼)「跡部に見せた時に言われたのが……。呼んでこようか?」
武藤喜兵衛「お願いします。」
跡部勝資「その件でありますか。織田の特徴として『国替』があります。土地はあくまで織田の持ち物であって、褒美として与えられたとしても各々が各々の方法で任された場所を運営する事は許されていません。先程、喜兵衛が言いました場所は織田の直轄領ではありませんでした。刈谷は水野。知多は久松。越前は朝倉の中で織田に協力した者共がそれぞれの方法で治め、伊賀については敵対していました。
『今後、織田に従うのであればこちらの考えに従っていただく。さもなくば……。』」
殲滅するのみ。
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