249 / 318
三瀬の変
しおりを挟む
小浜景隆より急使が到着。
武藤喜兵衛「此度は?」
私(武田勝頼)「北畠具教が……織田信雄に討たれた……。」
織田信雄は北畠一族の誅殺を指示。意を受けた3名が兵を潜ませ北畠の当主具教の御所に赴き面会。その席で抜刀。内通者により刀に細工が施されていた具教は敢え無く討ち死に。具教の四男五男も討たれる等殉死も含め50名近い者がその場で命を絶たれたのでありました。
時を同じくして織田信雄は拠点の田丸城に北畠の一門を呼び寄せた挙句殺害。粛清から逃れた者は多岐の要害に籠るも信雄は即座に兵を展開。10日持たずで陥落の憂き目を見たのでありました。
武藤喜兵衛「小浜様は無念でありましょう。」
私(武田勝頼)「うちとしても痛いな……。」
北畠具教は武田信玄の西上作戦の際、船を出すなどの協力を買って出てくれた人物。
私(武田勝頼)「小浜の話だと、その事は信雄も把握していたそうな。熊野を攻めたのもその一環。具教に近い人物を排除するためだった。しかし失敗に終わってしまった事が此度の北畠家一掃に結び付いてしまったそうな。」
武藤喜兵衛「そうでありましたか……。そうなりますと信雄の目的は権力基盤の強化にありますね。」
私(武田勝頼)「間違いない。」
このいくさの結果、北畠の権益であった南伊勢5郡はそのまま織田信雄の家臣に分け与えられたのでありました。
武藤喜兵衛「問題はこの後、信雄が兵を向ける先であります。」
私(武田勝頼)「そうだな。」
武藤喜兵衛「織田家中の者共が望んでいるのは石山でありましょう。」
私(武田勝頼)「間違いない。」
武藤喜兵衛「南伊勢の者を石山に投入する事により、佐久間の負担を減らす事が出来ます。その分を……。」
私(武田勝頼)「苦境に立たされている信康の救援。つまりうちとのいくさに回す危険性があるな。」
武藤喜兵衛「はい。しかしどうでしょう。果たして信雄は石山攻略に本腰を入れる事になるのでしょうか?」
私(武田勝頼)「どうしてそう思う?」
武藤喜兵衛「対石山を考えた場合、織田にとって脅威となっていますのは陸では無く海。毛利の水軍であります。現状、織田は毛利の動きを止める術を持っていません。これを打破するためには、志摩の水軍。九鬼を石山に回さなければなりません。そのためには通り道となります熊野は押さえて置きたい場所であります。」
私(武田勝頼)「そうだな。」
武藤喜兵衛「その事に信雄が気付いていたのであれば、先の熊野であのような中途半端ないくさはしません。対北畠規模の徹底した作戦を決行していたはずであります。それをしなかったと言う事は……。」
私(武田勝頼)「信雄は別の所を見ている?」
武藤喜兵衛「可能性はあります。」
武藤喜兵衛「此度は?」
私(武田勝頼)「北畠具教が……織田信雄に討たれた……。」
織田信雄は北畠一族の誅殺を指示。意を受けた3名が兵を潜ませ北畠の当主具教の御所に赴き面会。その席で抜刀。内通者により刀に細工が施されていた具教は敢え無く討ち死に。具教の四男五男も討たれる等殉死も含め50名近い者がその場で命を絶たれたのでありました。
時を同じくして織田信雄は拠点の田丸城に北畠の一門を呼び寄せた挙句殺害。粛清から逃れた者は多岐の要害に籠るも信雄は即座に兵を展開。10日持たずで陥落の憂き目を見たのでありました。
武藤喜兵衛「小浜様は無念でありましょう。」
私(武田勝頼)「うちとしても痛いな……。」
北畠具教は武田信玄の西上作戦の際、船を出すなどの協力を買って出てくれた人物。
私(武田勝頼)「小浜の話だと、その事は信雄も把握していたそうな。熊野を攻めたのもその一環。具教に近い人物を排除するためだった。しかし失敗に終わってしまった事が此度の北畠家一掃に結び付いてしまったそうな。」
武藤喜兵衛「そうでありましたか……。そうなりますと信雄の目的は権力基盤の強化にありますね。」
私(武田勝頼)「間違いない。」
このいくさの結果、北畠の権益であった南伊勢5郡はそのまま織田信雄の家臣に分け与えられたのでありました。
武藤喜兵衛「問題はこの後、信雄が兵を向ける先であります。」
私(武田勝頼)「そうだな。」
武藤喜兵衛「織田家中の者共が望んでいるのは石山でありましょう。」
私(武田勝頼)「間違いない。」
武藤喜兵衛「南伊勢の者を石山に投入する事により、佐久間の負担を減らす事が出来ます。その分を……。」
私(武田勝頼)「苦境に立たされている信康の救援。つまりうちとのいくさに回す危険性があるな。」
武藤喜兵衛「はい。しかしどうでしょう。果たして信雄は石山攻略に本腰を入れる事になるのでしょうか?」
私(武田勝頼)「どうしてそう思う?」
武藤喜兵衛「対石山を考えた場合、織田にとって脅威となっていますのは陸では無く海。毛利の水軍であります。現状、織田は毛利の動きを止める術を持っていません。これを打破するためには、志摩の水軍。九鬼を石山に回さなければなりません。そのためには通り道となります熊野は押さえて置きたい場所であります。」
私(武田勝頼)「そうだな。」
武藤喜兵衛「その事に信雄が気付いていたのであれば、先の熊野であのような中途半端ないくさはしません。対北畠規模の徹底した作戦を決行していたはずであります。それをしなかったと言う事は……。」
私(武田勝頼)「信雄は別の所を見ている?」
武藤喜兵衛「可能性はあります。」
0
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
天冥聖戦 伝説への軌跡
くらまゆうき
ファンタジー
あらすじ
狐の神族にはどんな過去があって人に封印されたのか?
もはや世界の誰からも忘れられた男となった狐神はどうにかして人の体から出ようとするが、思いもよらぬ展開へと発展していく…
消えている過去の記憶を追い求めながら彼が感じた事は戦争のない世界を作りたい。
シーズンを重ねるごとに解き明かされていく狐の神族の謎は衝撃の連発!
書籍化、アニメ化したいと大絶賛の物語をお見逃しなく
不死の少女は王女様
未羊
ファンタジー
※カクヨム、エブリスタでの完結作品の自己転載です
大陸ひとつを統一していたエルミタージュ王国。その栄華は永遠に続くかと思われた。
ある時、小さな内乱をきっかけに王国は一気に傾き、ついに滅亡の時を迎えてしまう。
国王と王妃は一人娘を逃すために魔法をかけ、自らはその戦火に姿を消した。
一人残された王女は何度となく絶望をしたものの生きながらえてしまう。
絶望の果てにやがて落ち着いた王女は、両親の最後の言葉を胸に、気の遠くなるあてのない旅へと出たのだった。
この争いの絶えない世界で ~魔王になって平和の為に戦いますR
ばたっちゅ
ファンタジー
相和義輝(あいわよしき)は新たな魔王として現代から召喚される。
だがその世界は、世界の殆どを支配した人類が、僅かに残る魔族を滅ぼす戦いを始めていた。
無為に死に逝く人間達、荒廃する自然……こんな無駄な争いは止めなければいけない。だが人類にもまた、戦うべき理由と、戦いを止められない事情があった。
人類を会話のテーブルまで引っ張り出すには、結局戦争に勝利するしかない。
だが魔王として用意された力は、死を予感する力と全ての文字と言葉を理解する力のみ。
自分一人の力で戦う事は出来ないが、強力な魔人や個性豊かな魔族たちの力を借りて戦う事を決意する。
殺戮の果てに、互いが共存する未来があると信じて。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!
まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。
そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。
その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する!
底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる!
第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。
俺の召喚獣だけレベルアップする
摂政
ファンタジー
【第10章、始動!!】ダンジョンが現れた、現代社会のお話
主人公の冴島渉は、友人の誘いに乗って、冒険者登録を行った
しかし、彼が神から与えられたのは、一生レベルアップしない召喚獣を用いて戦う【召喚士】という力だった
それでも、渉は召喚獣を使って、見事、ダンジョンのボスを撃破する
そして、彼が得たのは----召喚獣をレベルアップさせる能力だった
この世界で唯一、召喚獣をレベルアップさせられる渉
神から与えられた制約で、人間とパーティーを組めない彼は、誰にも知られることがないまま、どんどん強くなっていく……
※召喚獣や魔物などについて、『おーぷん2ちゃんねる:にゅー速VIP』にて『おーぷん民でまじめにファンタジー世界を作ろう』で作られた世界観……というか、モンスターを一部使用して書きました!!
内容を纏めたwikiもありますので、お暇な時に一読していただければ更に楽しめるかもしれません?
https://www65.atwiki.jp/opfan/pages/1.html
転生一九三六〜戦いたくない八人の若者たち〜
紫 和春
SF
二〇二〇年の現代から、一九三六年の世界に転生した八人の若者たち。彼らはスマートフォンでつながっている。
第二次世界大戦直前の緊張感が高まった世界で、彼ら彼女らはどのように歴史を改変していくのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる