旅行先で目を覚ましたら武田勝頼になっていた私。どうやら自分が当主らしい。そこまでわかって不安に覚える事が１つ。それは今私が居るのは天正何年？

別動隊

高坂昌信「私の役目はあくまで徳川信康を牧野領や今、徳川と戦っている伊奈吉田への侵入を阻止する事である。故に専守防衛に徹すれば済む話なのではあるが、

『ただ防いでいるだけ。』

と言うわけにはいかない。何故ならここ長沢は信康の本拠地である岡崎のすぐ隣。時間切れでいくさを終わらせる事は出来ない。

　かと言って私は攻めいくさを得意とはしていない。守りながら敵を殲滅させる術も無いわけでは無いが、その際。最終的には白兵戦に持ち込まなければならなくなる。そうなれば味方の損耗を避ける事は出来ない。出来る事とすれば敵の先鋒に打撃を与え、一時的に戦意を喪失させる事ぐらい。また態勢を立て直し挑みかかって来る事になる。それではこちらの体力は続かない。信康が岡崎から出る事が出来ない状況に追い込む必要がある。そのためには……。」



　その頃、今の蒲郡市大塚付近に見知らぬ船団が……。その船の持ち主は小浜景隆。



高坂昌信「今頃、小浜の別部隊が大塚に向かっている事であろう。狙いは五井松平。我らが長沢に進出して以来、奴らは萩への侵入を繰り返している。信綱、昌輝の尽力により撃退に成功している。しかし侵攻を許すのは必ずしも好ましい状況では無い。ましてや途中の伊奈は係争中にあり、御油八幡は牧野の権益。我らと牧野が敵対関係にあるわけではないが、彼の領域に兵を展開させる事は出来ない。

　幸い伊奈は船を持ってはいるが、水軍を編成出来る規模には無い。必要が無かったのがその理由。故に小浜の船を分けても問題は無い。」

武藤喜兵衛「（地図を眺めながら）入口は１つ。大塚しかありませんね。」

高坂昌信「しかも大塚は山と海に挟まれているため、通り道は海岸線に限られる。これに対し海は広い。」

武藤喜兵衛「敵が攻めて来る事が出来ない海を使って、東進する五井を船から狙い撃ちする？」

高坂昌信「可能であれば占領したい所ではあるが、出来なくても構わない。目的は五井を通さない事であるのだから。そうすれば奴らの動きもここ長沢への侵入に限定する事が出来るようになる。」

武藤喜兵衛「信康と五井が直接長沢目掛け攻めて来る危険性が残されてはいますが？」

高坂昌信「山越えか？確かに松平も元々は山の民ではあるが、奴らが本拠地を米作地帯に移してから長い月日が経っている。山いくさに精通している者は居ない。山いくさに関しては我らに一日の長がある。それに既に対策は講じてある。」

武藤喜兵衛「信康と同時に攻められた場合、如何為されますか？」