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鳥居強右衛門「高坂様も故郷を追われ……。」
高坂昌信「私の昔話に興味がおありですか?」
鳥居強右衛門「長くなりそうですね……。」
高坂昌信「殿に煙たがれている。」
鳥居強右衛門「でしょうね。」
高坂昌信「止めておこうか?」
鳥居強右衛門「少しでありましたら。」
高坂昌信「聞いてくれる人が居ると嬉しいよ。手短にする。」
鳥居強右衛門「お願いします。」
高坂昌信「私は甲斐の出身で実家は百姓をしていました。過去形になっているのには理由があります。その原因となったのは父の死。当時私は16歳。一家を背負うにはまだ早いと判断されたのでありましょう。姉夫婦が父の土地の全てを相続したため、私は無一文で放り出される事になりました。」
鳥居強右衛門「手短過ぎませんか!?」
高坂昌信「ただ私は恵まれていました。武田信玄公に拾われたのでありますから。」
鳥居強右衛門「どのような経緯で?」
高坂昌信「これは直接信玄公から聞いたわけではありませんが、恐らく興味本位では無かったかと。奥近習で採用された事から察して下さい。ただ私は恵まれていました。信玄公は私に様々な機会を与えてくれました。そればかりでなく、見えない所で私を支えてくれました。少しずつ少しずつ実績を。そのほとんどは信玄公のおかげなのでありましたが……。積み重ねる事により、色眼鏡で見ていた周りからも認めていただけるようになりました。今、この地位にあるのは武田信玄公並びに武田の者全てのおかげであります。
これからは恩返しをする番である。と考えています。ただうるさ過ぎましたね。当主勝頼から遠ざけられ、老害となってしまいました。」
鳥居強右衛門「しかし今、武田様からの言付けを預かって来られた所を見ますと……。」
高坂昌信「此度のいくさの前、御館様に頭を下げられてな……。不思議な気分であった。」
鳥居強右衛門「と言われますと?」
高坂昌信「美濃で信長を。高天神で家康を破り誰であっても有頂天となる状況にあった御館様が、何故これまでの非を詫びたのか?別に失態を犯したわけでも無い殿が。」
鳥居強右衛門「そんな武田様に諫言された理由は?」
高坂昌信「荒唐無稽とまでは言わないけれども、うまい話に乗ってしまうのだろうな。相手を舐めてしまうのだろうな。某かの成果を上げるため、無理ないくさに突入してしまうのだろうな。そう言う者をこれまで何人も見て来たので。ただ聞いてはくれないだろうな……。諦めの境地になっていた時、急に助言を請うて来たのには驚きました。」
高坂昌信「私の昔話に興味がおありですか?」
鳥居強右衛門「長くなりそうですね……。」
高坂昌信「殿に煙たがれている。」
鳥居強右衛門「でしょうね。」
高坂昌信「止めておこうか?」
鳥居強右衛門「少しでありましたら。」
高坂昌信「聞いてくれる人が居ると嬉しいよ。手短にする。」
鳥居強右衛門「お願いします。」
高坂昌信「私は甲斐の出身で実家は百姓をしていました。過去形になっているのには理由があります。その原因となったのは父の死。当時私は16歳。一家を背負うにはまだ早いと判断されたのでありましょう。姉夫婦が父の土地の全てを相続したため、私は無一文で放り出される事になりました。」
鳥居強右衛門「手短過ぎませんか!?」
高坂昌信「ただ私は恵まれていました。武田信玄公に拾われたのでありますから。」
鳥居強右衛門「どのような経緯で?」
高坂昌信「これは直接信玄公から聞いたわけではありませんが、恐らく興味本位では無かったかと。奥近習で採用された事から察して下さい。ただ私は恵まれていました。信玄公は私に様々な機会を与えてくれました。そればかりでなく、見えない所で私を支えてくれました。少しずつ少しずつ実績を。そのほとんどは信玄公のおかげなのでありましたが……。積み重ねる事により、色眼鏡で見ていた周りからも認めていただけるようになりました。今、この地位にあるのは武田信玄公並びに武田の者全てのおかげであります。
これからは恩返しをする番である。と考えています。ただうるさ過ぎましたね。当主勝頼から遠ざけられ、老害となってしまいました。」
鳥居強右衛門「しかし今、武田様からの言付けを預かって来られた所を見ますと……。」
高坂昌信「此度のいくさの前、御館様に頭を下げられてな……。不思議な気分であった。」
鳥居強右衛門「と言われますと?」
高坂昌信「美濃で信長を。高天神で家康を破り誰であっても有頂天となる状況にあった御館様が、何故これまでの非を詫びたのか?別に失態を犯したわけでも無い殿が。」
鳥居強右衛門「そんな武田様に諫言された理由は?」
高坂昌信「荒唐無稽とまでは言わないけれども、うまい話に乗ってしまうのだろうな。相手を舐めてしまうのだろうな。某かの成果を上げるため、無理ないくさに突入してしまうのだろうな。そう言う者をこれまで何人も見て来たので。ただ聞いてはくれないだろうな……。諦めの境地になっていた時、急に助言を請うて来たのには驚きました。」
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