128 / 318
ノルマ
しおりを挟む
山県昌景「菅沼正貞を小諸送りにした張本人である私が言うのも何だが、其方と言う理解者が居る。殿も同意している。恐らくであるが長篠城の復帰と更なる加増を約束した上でここに来る事を誘ったのであろう。」
高坂昌信「間違いありません。」
山県昌景「それでいて菅沼正貞は何故ここに来る事を拒絶したのである?」
高坂昌信「その疑問は私も抱きました。そして同じ問いを菅沼正貞にぶつけました。」
山県昌景「そこで彼は何と答えたのだ?」
高坂昌信「それは……。」
「もし私(菅沼正貞)が当地に入ったら、どのような役目を担う事になるでしょう?」
高坂昌信「これが彼の回答である。其方ならどうする?
『長篠城を攻め落とせ!その先兵となれ!お前の身内を使って、城内部から崩壊へと導け!』
と言うであろう。それを菅沼正貞は望んではいなかった。」
山県昌景「何故?」
高坂昌信「彼が徳川家康に長篠の城を明け渡した時、条件は何であったか覚えているか?」
山県昌景「自らの命と引き換えに城内の者共の助命を嘆願。それが家康に認められたから。」
高坂昌信「その通りである。彼が大事に思っている事。それは長篠の民であり長篠の地そのものである。勿論そこに戻りたい。城主として。と考えているのは間違いない。決して口にする事は無かったがな。しかしその方法として長篠の民を苦しめたくは無い。ましてや自らの手で城を攻め落とすと言う形では。」
山県昌景「うむ。」
高坂昌信「しかし情報は提供していただいた。それを活用し、勝利に結びつけたのは事実である。ただ気になる事は無いか?」
山県昌景「と言うと?」
高坂昌信「今回いくさをした場所を見て見ろ。兵糧庫を焼く以外、長篠城で戦ってはいないであろう。」
山県昌景「確かに。」
高坂昌信「ただ断っておく。長篠城の弱点を聞いていないわけでは無いし、それを菅沼正貞が拒否して来たわけでも無い。城の弱点は聞いておる。こちらも勝たなければならないので。そこは間違えないでくれ。今回、菅沼正貞はうちの勝利のために情報を提供してくれた事を。」
山県昌景「わかった。それでお前も長篠城から敵が離れるように移動した?」
高坂昌信「いや。それは違う。とにかく敵が疲れさせるため、ひたすら厄介な場所を選んで動いただけの事。内藤の機転と馬場の援軍が無かったらどうなっていたか……。」
山県昌景「徳川の主力を引き付ける事により、我ら別動隊を助けた。と言う事にしておく。」
高坂昌信「いや。それでは……。」
山県昌景「長篠城に彼を復帰させたいのだろう?そのためにはお前の活躍があった事にしなければならない。それに結果的とは言え、そうなったのは事実なんだから。」
高坂昌信「わかった。任せる。」
高坂昌信「間違いありません。」
山県昌景「それでいて菅沼正貞は何故ここに来る事を拒絶したのである?」
高坂昌信「その疑問は私も抱きました。そして同じ問いを菅沼正貞にぶつけました。」
山県昌景「そこで彼は何と答えたのだ?」
高坂昌信「それは……。」
「もし私(菅沼正貞)が当地に入ったら、どのような役目を担う事になるでしょう?」
高坂昌信「これが彼の回答である。其方ならどうする?
『長篠城を攻め落とせ!その先兵となれ!お前の身内を使って、城内部から崩壊へと導け!』
と言うであろう。それを菅沼正貞は望んではいなかった。」
山県昌景「何故?」
高坂昌信「彼が徳川家康に長篠の城を明け渡した時、条件は何であったか覚えているか?」
山県昌景「自らの命と引き換えに城内の者共の助命を嘆願。それが家康に認められたから。」
高坂昌信「その通りである。彼が大事に思っている事。それは長篠の民であり長篠の地そのものである。勿論そこに戻りたい。城主として。と考えているのは間違いない。決して口にする事は無かったがな。しかしその方法として長篠の民を苦しめたくは無い。ましてや自らの手で城を攻め落とすと言う形では。」
山県昌景「うむ。」
高坂昌信「しかし情報は提供していただいた。それを活用し、勝利に結びつけたのは事実である。ただ気になる事は無いか?」
山県昌景「と言うと?」
高坂昌信「今回いくさをした場所を見て見ろ。兵糧庫を焼く以外、長篠城で戦ってはいないであろう。」
山県昌景「確かに。」
高坂昌信「ただ断っておく。長篠城の弱点を聞いていないわけでは無いし、それを菅沼正貞が拒否して来たわけでも無い。城の弱点は聞いておる。こちらも勝たなければならないので。そこは間違えないでくれ。今回、菅沼正貞はうちの勝利のために情報を提供してくれた事を。」
山県昌景「わかった。それでお前も長篠城から敵が離れるように移動した?」
高坂昌信「いや。それは違う。とにかく敵が疲れさせるため、ひたすら厄介な場所を選んで動いただけの事。内藤の機転と馬場の援軍が無かったらどうなっていたか……。」
山県昌景「徳川の主力を引き付ける事により、我ら別動隊を助けた。と言う事にしておく。」
高坂昌信「いや。それでは……。」
山県昌景「長篠城に彼を復帰させたいのだろう?そのためにはお前の活躍があった事にしなければならない。それに結果的とは言え、そうなったのは事実なんだから。」
高坂昌信「わかった。任せる。」
0
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
天冥聖戦 伝説への軌跡
くらまゆうき
ファンタジー
あらすじ
狐の神族にはどんな過去があって人に封印されたのか?
もはや世界の誰からも忘れられた男となった狐神はどうにかして人の体から出ようとするが、思いもよらぬ展開へと発展していく…
消えている過去の記憶を追い求めながら彼が感じた事は戦争のない世界を作りたい。
シーズンを重ねるごとに解き明かされていく狐の神族の謎は衝撃の連発!
書籍化、アニメ化したいと大絶賛の物語をお見逃しなく
不死の少女は王女様
未羊
ファンタジー
※カクヨム、エブリスタでの完結作品の自己転載です
大陸ひとつを統一していたエルミタージュ王国。その栄華は永遠に続くかと思われた。
ある時、小さな内乱をきっかけに王国は一気に傾き、ついに滅亡の時を迎えてしまう。
国王と王妃は一人娘を逃すために魔法をかけ、自らはその戦火に姿を消した。
一人残された王女は何度となく絶望をしたものの生きながらえてしまう。
絶望の果てにやがて落ち着いた王女は、両親の最後の言葉を胸に、気の遠くなるあてのない旅へと出たのだった。
おっさん、勇者召喚されるがつま弾き...だから、のんびりと冒険する事にした
あおアンドあお
ファンタジー
ギガン城と呼ばれる城の第一王女であるリコット王女が、他の世界に住む四人の男女を
自分の世界へと召喚した。
召喚された四人の事をリコット王女は勇者と呼び、この世界を魔王の手から救ってくれと
願いを託す。
しかしよく見ると、皆の希望の目線は、この俺...城川練矢(しろかわれんや)には、
全く向けられていなかった。
何故ならば、他の三人は若くてハリもある、十代半ばの少年と少女達であり、
将来性も期待性もバッチリであったが...
この城川練矢はどう見ても、しがないただの『おっさん』だったからである。
でもさ、いくらおっさんだからっていって、これはひどくないか?
だって、俺を召喚したリコット王女様、全く俺に目線を合わせてこないし...
周りの兵士や神官達も蔑視の目線は勿論のこと、隠しもしない罵詈雑言な言葉を
俺に投げてくる始末。
そして挙げ句の果てには、ニヤニヤと下卑た顔をして俺の事を『ニセ勇者』と
罵って蔑ろにしてきやがる...。
元の世界に帰りたくても、ある一定の魔力が必要らしく、その魔力が貯まるまで
最低、一年はかかるとの事だ。
こんな城に一年間も居たくない俺は、町の方でのんびり待とうと決め、この城から
出ようとした瞬間...
「ぐふふふ...残念だが、そういう訳にはいかないんだよ、おっさんっ!」
...と、蔑視し嘲笑ってくる兵士達から止められてしまうのだった。
※小説家になろう様でも掲載しています。
異世界の親が過保護過ぎて最強
みやび
ファンタジー
ある日、突然転生の為に呼び出された男。
しかし、異世界転生前に神様と喧嘩した結果、死地に送られる。
魔物に襲われそうな所を白銀の狼に助けられたが、意思の伝達があまり上手く出来なかった。
狼に拾われた先では、里ならではの子育てをする過保護な里親に振り回される日々。
男はこの状況で生き延びることができるのか───?
大人になった先に待ち受ける彼の未来は────。
☆
第1話~第7話 赤ん坊時代
第8話~第25話 少年時代
第26話~第?話 成人時代
☆
webで投稿している小説を読んでくださった方が登場人物を描いて下さいました!
本当にありがとうございます!!!
そして、ご本人から小説への掲載許可を頂きました(≧▽≦)
♡Thanks♡
イラスト→@ゆお様
あらすじが分かりにくくてごめんなさいっ!
ネタバレにならない程度のあらすじってどーしたらいいの……
読んで貰えると嬉しいです!
異世界で『魔法使い』になった私は一人自由気ままに生きていきたい
哀村圭一
ファンタジー
人や社会のしがらみが嫌になって命を絶ったOL、天音美亜(25歳)。薄れゆく意識の中で、謎の声の問いかけに答える。
「魔法使いになりたい」と。
そして目を覚ますと、そこは異世界。美亜は、13歳くらいの少女になっていた。
魔法があれば、なんでもできる! だから、今度の人生は誰にもかかわらず一人で生きていく!!
異世界で一人自由気ままに生きていくことを決意する美亜。だけど、そんな美亜をこの世界はなかなか一人にしてくれない。そして、美亜の魔法はこの世界にあるまじき、とんでもなく無茶苦茶なものであった。
追放シーフの成り上がり
白銀六花
ファンタジー
王都のギルドでSS級まで上り詰めた冒険者パーティー【オリオン】の一員として日々活躍するディーノ。
前衛のシーフとしてモンスターを翻弄し、回避しながらダメージを蓄積させていき、最後はパーティー全員でトドメを刺す。
これがディーノの所属するオリオンの戦い方だ。
ところが、SS級モンスター相手に命がけで戦うディーノに対し、ほぼ無傷で戦闘を終えるパーティーメンバー。
ディーノのスキル【ギフト】によってパーティーメンバーのステータスを上昇させ、パーティー内でも誰よりも戦闘に貢献していたはずなのに……
「お前、俺達の実力についてこれなくなってるんじゃねぇの?」とパーティーを追放される。
ディーノを追放し、新たな仲間とパーティーを再結成した元仲間達。
新生パーティー【ブレイブ】でクエストに出るも、以前とは違い命がけの戦闘を繰り広げ、クエストには失敗を繰り返す。
理由もわからず怒りに震え、新入りを役立たずと怒鳴りちらす元仲間達。
そしてソロの冒険者として活動し始めるとディーノは、自分のスキルを見直す事となり、S級冒険者として活躍していく事となる。
ディーノもまさか、パーティーに所属していた事で弱くなっていたなどと気付く事もなかったのだ。
それと同じく、自分がパーティーに所属していた事で仲間を弱いままにしてしまった事にも気付いてしまう。
自由気ままなソロ冒険者生活を楽しむディーノ。
そこに元仲間が会いに来て「戻って来い」?
戻る気などさらさら無いディーノはあっさりと断り、一人自由な生活を……と、思えば何故かブレイブの新人が頼って来た。
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる