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真田信綱「村上義清が上杉謙信に助けを求め越後に去ったからでありますね。」

山県昌景「そう。村上の要請に応じ、その後謙信は幾度となく信濃に進出して来た。村上義清が我らに対し用いた戦術を引っ提げて。ここにある鉄砲と弾薬を見てもわかるように越後は鉄砲と弾薬を手に入れる術を持っている。加えて越後は、お前らの所の名物。麻織物に欠かす事の出来ない青苧の産地であり、かつ京や出雲。更には大陸へと繋がる道。海路を有している。港からの上がりも莫大。故に10回を超える関東遠征が可能となり、うちにこれだけの鉄砲と弾薬を売っても問題無いだけの備蓄があると見て間違いない。」

真田昌輝「つい今しがたまで敵対していた相手でありますからね。うちは。」

山県昌景「商才に長けた者が多いのかもしれないな。」

真田信綱「駿河に塩を止められた時もそうでしたね。」

山県昌景「即商人を送り込んで来たからな。越後は……。」

真田昌輝「しかし村上の戦術は人の損耗も激しいものでありました。幾ら鉄砲と弾薬があったとしましても、それを使いこなす事が出来る人材は一朝一夕で育てる事は出来ません。」

山県昌景「謙信はそこに手を加えて来よった。」

真田昌輝「と言われますと?」

山県昌景「経済力の違いもあり、越後は村上と比べ抱える事の出来る人の数も多い。故に隊の編成も大きくなる。そのため村上の時は自らも抜刀しなければいくさを継続する事が出来なかった鉄砲隊と弓隊を後方に退避させる事が出来るようになった。長槍を持った部隊と最後方に控えている馬を用いた本隊が前に押し出す事によって。

 鉄砲と弓矢。長槍。そして本隊。その間に次の発射準備が整った鉄砲と弓矢が再び前線に躍り出て、その後を長槍に本隊。これを繰り返して来た。目的は同じ。亡き御館様を討ち果たすためである。しかし村上との違いは人を使い捨てにする事無く、鉄砲に弾薬。そして弓矢がある限り、際限なく繰り返す事が出来るようにした事である。

 その後幾度となく上杉と戦う事になり、その都度被害を被る事に相成ってしまった。」

真田昌輝「身体が幾つあっても足りませんね。」

山県昌景「そう。特に(武田信玄の弟)信繁様が討ち死にされたいくさの後から抜本的な対策を練る事になった。上杉の戦術を再現して様々な方策を探る事になった。そこで得た結論が……。」



 鉄砲には鉄砲。弓矢には弓矢。長槍には長槍。騎馬隊には騎馬隊で対応するのが望ましい。



 戻って設楽原。



山県昌景「ようし!敵の鉄砲は封じた!次なる発射の前に白兵戦に持ち込む!!柵の中に逃げ込ませるな!!!」
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