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実より

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 それから1ヶ月。



跡部勝資「殿。上杉謙信。北条氏政との和睦に同意致しました。」



 一月前。

 跡部勝資に何やら耳打ちする長坂釣閑斎。



長坂釣閑斎「跡部を再び春日山の上杉謙信と小田原の北条氏政の下へ派遣させます。」

私(武田勝頼)「どのような助言を?」

長坂釣閑斎「そうですね……。ここに集まった方々には知らせておかなければなりませんね……。」



 跡部勝資に伝えた事を皆に告げる長坂釣閑斎。これを聞いて……。



高坂昌信「……確かに。これで駄目でしたら、あと出来る手立ては謙信が主張していた、今我らが持つ権益を明け渡すしか残されていません。」

長坂釣閑斎「ここに居ます皆同様。私もそのつもりは毛頭ありません。既にうちと上杉。うちと北条は和睦済み。我らが対織田対徳川に集中する事は可能な状態にあります。これでも首を縦に振らないのであれば、越中と上野からの要請に(越後の)揚北の紛争の後始末に忙殺されれば良いんです。

 ただそれではうちが織田信長の全てを面倒見なければなりませんので、跡部に今回の提案を授けたのであります。」



 その提案とは?



馬場信春「『上杉景虎を関東管領に就任させた上、本拠地を厩橋に定め常駐させる。これをうちと上杉。そして北条が支える。』

……考えましたね。」

長坂釣閑斎「謙信が気にする点があるとすれば、謙信が不在の時。特に越中に入っている時に関東を狙われる事であります。実際、謙信は幾度となく越中と関東の往復。更には越後国内の叛乱の鎮圧に振り回されて来ました。」

馬場信春「その原因を作った大半はうちだけどな。」

長坂釣閑斎「その事は伝えるなよ。」

跡部勝資「御心配無く。」

長坂釣閑斎「今後、謙信は上洛を目指す事になります。その第一段階として越中の直轄化に本格的に取り組んでいる最中にあります。この大事な時に関東からの要請が。それも養子である景虎から齎される事態は避けたいものであります。出来る事であれば安全な越後の。それも春日山に残したいのが本音では無いかと。

 と同時に謙信は関東を諦める事も出来ません。何故なら彼は関東管領を将軍様から任命された立場にあるからであります。しかし現状関東情勢は厳しく、北条の圧迫により悲鳴を上げる勢力からの要望がひっきりなしに飛び込んで来る事態にあります。

 これら全て解決する事が出来、更には2人の養子を棲み分けする事も可能となる方策を跡部に授けた次第であります。これで駄目なら諦めましょう。」

私(武田勝頼)「跡部。頼んだぞ。」

跡部勝資「了解しました。」
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