42 / 318
模索
しおりを挟む
私(武田勝頼)「謙信の面子を保つためには関東における彼の地位が盤石で無ければならない。しかし現状はそれとは程遠い位置。越後からの入口を確保するのに手一杯。」
内藤昌豊「因みにでありますが、上野における上杉自らの勢力圏は養父憲政が越後に逃亡した時とほぼ同じであります。
謙信はこれまで。大々的に関東管領の就任を宣言したにも関わらず、北条の本拠地である相模に入る事が出来たのはその一度のみ。関東公方に推した関白を関東の諸将に拒絶され。その関白も去ってしまいました。その後、謙信は関東の反北条勢力の要望に応えるだけの不毛ないくさを余儀なくされる事になりました。15年の月日を経た現在、最初の位置に戻される羽目に遭っています。」
私(武田勝頼)「上杉謙信が北条と妥協出来るだけの勢力となると……。」
内藤昌豊「答えたくはありませんが、上野一国になります。」
私(武田勝頼)「上杉と北条のために、うちが領土を手放すのは忌々しい。」
内藤昌豊「特に自力で切り開いた真田が許さないでしょう。」
静かに頷く真田信綱と武藤喜兵衛。
私(武田勝頼)「一向宗と謙信が和睦した場合、西で謙信を遮るものはあるか?」
馬場信春「能登の畠山であります。あそこは重臣衆の力が強く、当主の交代も激しい家であります。」
私(武田勝頼)「そこにこれまで同盟を結んでいた織田と上杉の関係が壊れると……。」
馬場信春「混迷の度合いを更に深める事になります。」
私(武田勝頼)「そこを無視して上洛する事は?」
馬場信春「謙信と一向宗が和睦する以上、一向宗の拠点を使う事は出来ません。越中富山から織田の越前最前線である敦賀までは相当の距離があり、途中。腰を落ち着ける場所が必要となります。その打ってつけとなる場所が畠山の本拠地である七尾城であります。」
私(武田勝頼)「となると謙信がすぐ信長と相対す事は難しい?」
馬場信春「七尾城攻略に傾注する事が出来るよう体制を整える必要があります。」
私(武田勝頼)「関東との両立など。」
馬場信春「これまで同様、虻蜂取らずになってしまいます。」
私(武田勝頼)「氏政は同意しているんだよな?」
跡部勝資「はい。『関東で邪魔する者が居なくなるのでしたら。』と。」
長坂釣閑斎「少し良いか?」
私(武田勝頼)「勿論であります。」
長坂釣閑斎「謙信は領土を求めているわけでは必ずしも無い?」
跡部勝資「うちの権益に触れる事はありませんでした。」
長坂釣閑斎「氏政は気に入らないが、北条を滅亡させようとは思っていない?」
跡部勝資「謙信が引っ掛かっているのは、氏政のこれまでの対応であります。」
長坂釣閑斎「つまり謙信は自身の関東における地位が傷付かなければ問題無い?」
跡部勝資「話を聞いている限りでありますが。」
長坂釣閑斎「ならば糸口があります。」
その糸口とは?
内藤昌豊「因みにでありますが、上野における上杉自らの勢力圏は養父憲政が越後に逃亡した時とほぼ同じであります。
謙信はこれまで。大々的に関東管領の就任を宣言したにも関わらず、北条の本拠地である相模に入る事が出来たのはその一度のみ。関東公方に推した関白を関東の諸将に拒絶され。その関白も去ってしまいました。その後、謙信は関東の反北条勢力の要望に応えるだけの不毛ないくさを余儀なくされる事になりました。15年の月日を経た現在、最初の位置に戻される羽目に遭っています。」
私(武田勝頼)「上杉謙信が北条と妥協出来るだけの勢力となると……。」
内藤昌豊「答えたくはありませんが、上野一国になります。」
私(武田勝頼)「上杉と北条のために、うちが領土を手放すのは忌々しい。」
内藤昌豊「特に自力で切り開いた真田が許さないでしょう。」
静かに頷く真田信綱と武藤喜兵衛。
私(武田勝頼)「一向宗と謙信が和睦した場合、西で謙信を遮るものはあるか?」
馬場信春「能登の畠山であります。あそこは重臣衆の力が強く、当主の交代も激しい家であります。」
私(武田勝頼)「そこにこれまで同盟を結んでいた織田と上杉の関係が壊れると……。」
馬場信春「混迷の度合いを更に深める事になります。」
私(武田勝頼)「そこを無視して上洛する事は?」
馬場信春「謙信と一向宗が和睦する以上、一向宗の拠点を使う事は出来ません。越中富山から織田の越前最前線である敦賀までは相当の距離があり、途中。腰を落ち着ける場所が必要となります。その打ってつけとなる場所が畠山の本拠地である七尾城であります。」
私(武田勝頼)「となると謙信がすぐ信長と相対す事は難しい?」
馬場信春「七尾城攻略に傾注する事が出来るよう体制を整える必要があります。」
私(武田勝頼)「関東との両立など。」
馬場信春「これまで同様、虻蜂取らずになってしまいます。」
私(武田勝頼)「氏政は同意しているんだよな?」
跡部勝資「はい。『関東で邪魔する者が居なくなるのでしたら。』と。」
長坂釣閑斎「少し良いか?」
私(武田勝頼)「勿論であります。」
長坂釣閑斎「謙信は領土を求めているわけでは必ずしも無い?」
跡部勝資「うちの権益に触れる事はありませんでした。」
長坂釣閑斎「氏政は気に入らないが、北条を滅亡させようとは思っていない?」
跡部勝資「謙信が引っ掛かっているのは、氏政のこれまでの対応であります。」
長坂釣閑斎「つまり謙信は自身の関東における地位が傷付かなければ問題無い?」
跡部勝資「話を聞いている限りでありますが。」
長坂釣閑斎「ならば糸口があります。」
その糸口とは?
10
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
天冥聖戦 伝説への軌跡
くらまゆうき
ファンタジー
あらすじ
狐の神族にはどんな過去があって人に封印されたのか?
もはや世界の誰からも忘れられた男となった狐神はどうにかして人の体から出ようとするが、思いもよらぬ展開へと発展していく…
消えている過去の記憶を追い求めながら彼が感じた事は戦争のない世界を作りたい。
シーズンを重ねるごとに解き明かされていく狐の神族の謎は衝撃の連発!
書籍化、アニメ化したいと大絶賛の物語をお見逃しなく
不死の少女は王女様
未羊
ファンタジー
※カクヨム、エブリスタでの完結作品の自己転載です
大陸ひとつを統一していたエルミタージュ王国。その栄華は永遠に続くかと思われた。
ある時、小さな内乱をきっかけに王国は一気に傾き、ついに滅亡の時を迎えてしまう。
国王と王妃は一人娘を逃すために魔法をかけ、自らはその戦火に姿を消した。
一人残された王女は何度となく絶望をしたものの生きながらえてしまう。
絶望の果てにやがて落ち着いた王女は、両親の最後の言葉を胸に、気の遠くなるあてのない旅へと出たのだった。
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
この争いの絶えない世界で ~魔王になって平和の為に戦いますR
ばたっちゅ
ファンタジー
相和義輝(あいわよしき)は新たな魔王として現代から召喚される。
だがその世界は、世界の殆どを支配した人類が、僅かに残る魔族を滅ぼす戦いを始めていた。
無為に死に逝く人間達、荒廃する自然……こんな無駄な争いは止めなければいけない。だが人類にもまた、戦うべき理由と、戦いを止められない事情があった。
人類を会話のテーブルまで引っ張り出すには、結局戦争に勝利するしかない。
だが魔王として用意された力は、死を予感する力と全ての文字と言葉を理解する力のみ。
自分一人の力で戦う事は出来ないが、強力な魔人や個性豊かな魔族たちの力を借りて戦う事を決意する。
殺戮の果てに、互いが共存する未来があると信じて。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
世界一の怪力男 彼は最強を名乗る種族に果たし状を出しました
EAD
ファンタジー
世界一の怪力モンスターと言われた格闘家ラングストン、彼は無敗のまま格闘人生を終え老衰で亡くなった。
気がつき目を覚ますとそこは異世界、ラングストンは1人の成人したばかりの少年となり転生した。
ラングストンの前の世界での怪力スキルは何故か最初から使えるので、ラングストンはとある学園に希望して入学する。
そこは色々な種族がいて、戦いに自信のある戦士達がいる学園であり、ラングストンは自らの力がこの世界にも通用するのかを確かめたくなり、果たし状を出したのであった。
ラングストンが果たし状を出したのは、生徒会長、副会長、書記などといった実力のある美女達である、果たしてラングストンの運命はいかに…
【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!
まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。
そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。
その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する!
底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる!
第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる